三十六話
しばらく、穏やかな日々が続いた。
事件などもなく、いたって平穏だった。
エマもアンジェラも、普通に学園生活を送っていた。
担任には暗にアンジェラと仲良くするなと言われたが、エマはアンジェラの友達をやめるつもりはなかった。アンジェラから離れたら危ないのでは、という予感があったし、あんな言い方をされて、従うのは気に入らないという十代らしい大人への反抗心があった。
担任には、普段教師には従順なエマがアンジェラと仲良くし続けているのが信じられないようだった。授業中などにいまいましそうにこちらを見る時がある。
だけど知ったことか、とエマは思った。
そもそも、妙に威張り散らしていて担任の事は気に入らなかったし、尊敬できないと思っていた。
アンジェラのこともよく知らないのに、あんな風に言って。
教師になるために努力したのだろうが、それは彼女を無条件に尊敬する理由にはならない。彼女が努力したのは彼女自身のためで、エマのためではないし、それを根拠に見下される謂れもないのだ。
それに、ミシェルがしたことだって、ボアストーン家が仕向けた事かもしれない、とエマは考え始めていた。
そんな根拠のない話でアンジェラを侮辱したのが、エマには気に入らなかった。
だが、担任は表立ってはエマを批判してこない。
エマはそれなりにクラスで立場を確立しているし、そんな生徒を下手に冷遇したら他の生徒から反感を買う。
だけど、妙に授業中エマばかり当ててきたりしてきていて、それを他の生徒達が不審に思っているのには気付いてないみたいだった。
エマがあまり堪えてないのにいらいらしているのも感じた。
「おはよう、エマ」
「おはようアンジェラ」
いつも通り、アンジェラと学校に行く。
「実は、エマに渡したい物があるの」
「なあに、それ」
「教室に着いたら渡すわ」
朝の教室。もう何人か教室にいて、その間を通って自分の机に向かう。
いつもの習慣で机の中に手を入れると、何か紙があった。
「あれ?何か入ってる。」
取り出すと、それは封筒だった。
上質な紙で作られた、宛名のない白い封筒。
エマはそれを見た覚えがあった。
(そうだ、キャロルのー…。)
キャロルがいたずらだと言った封筒。それによく似ている。
操られるように、エマは封筒を開き、中を見る。
中には紙が一枚。便箋だろうか?
「待ってエマ、見ては駄目…!」
そしてエマはそれを見た。
中には文字がびっしり書かれている。魔法文字だろうか?淡く光って…。
それを見ていると、エマの頭が一瞬ぼーっとして、目覚めた。
「大丈夫エマ?」
アンジェラが声をかけてくる。
「大丈夫、それよりアンジェラ、何かくれるって言ってなかった?」
「ああ、そうだった…」
アンジェラに教室から連れ出され、廊下の隅にくる。
そこでアンジェラに小さな紙袋を渡された。
中にはペンダントが入っていた。
「それを肌身離さずつけていて」
「ありがとう、嬉しい…」
教師に見つからないように制服の中につける。
「大事にするね」
その後連れだって教室に戻った。アンジェラとひとつ秘密が増えたのが嬉しかった。




