二十五話
朝教室に来ると、マーサがいなかった。マーサは金の巻き毛の女の子で、エマの友達だ。少しばかり騒がしいが明るい性格で、同年代の中では凹凸のある体型を自慢に思っているようすだった。
マーサは教室には遅めに来ることが多い。だからエマは何も心配していなかった。
担任が教室に入ってきて、マーサの転校を知らせるまでは。
あまりにも急すぎる。転校するなら数日前に知らせるはずだ。本当に急に決まったとしても、マーサの性格から友人に何も言わず何も残さず、というのは考えづらかった。
担任に聞いたのだ。マーサから何か伝言はありませんかー…。答えはNOだった。何もない。伝言も。手紙も。
それを聞いた時は落ち込んだ。本当は友達だと思われていなかったのか、結構長く付き合って来て、お互いの事が分かっているつもりだった。でも、ただのつもりなだけだったのかもしれない。
友人たちと連れだってトイレに行った時、隣のクラスの友人と出会った。テリーザというその子とは去年同じクラスで、クラスが違っても仲良くしていた。
「エマ大丈夫?落ち込んだ顔をしてるよ。マーサもいないし、マーサと何かあったの?」
「実は、何も言わずに転校してしまったの。もしかして友人と思われてなかったのかなって」
「ふーん、なんかうちのクラスと似てるね~。うちのクラスも前に急に転校しちゃった子がいてさ~」
「前話してたね」
「そうそう、クララっていう、金髪の綺麗な子よ」
(そういえば、キャロルもマーサも綺麗な金髪だったな…)
キャロルの変わり果てた姿を思い出す。もしかして、その事と何か関係が…?
ふとそんな考えが浮かんだ。
「どうしたの?エマ」
「ううん、なんでもないの」
笑顔を作って会話を打ちきる。
なんだか、嫌な予感がした。




