二十一話
「アンジェラ、あなたを信じようと思う」
エマはアンジェラの目を見てそう言った。
アンジェラは何も言わなかった。ただ戸惑ったように見えた。唇が一瞬笑みの形を作ろうとして、でも崩れて、感情を顔貌に乗せるのに失敗していた。眉毛を下げたり、上げたり、悲しもうとしたようだし、怒ろうともしたみたいだった。
どんな感情を浮かべればいいのか分からない。そんな様子だった。
エマは、アンジェラの表情が変化する様子をじっと見ていた。
アンジェラは、結局どんな感情を浮かべるのか諦めたように、感情のない表情で、「なぜ?」とだけ聞いた。
「アンジェラの友達だから」
エマを友達だと呼んで、助けに来てくれたから。たったそれだけの関係なのに。ただ教室で話しただけ、一緒に帰ったりしただけ。
アンジェラにとっては簡単な事だったのかもしれない。あれだけ強いのだから、本当に、何かのついでで助けてくれたのかもしれない。
でも、それでも、エマは嬉しかったのだ。
「…友達なら信じれるの?なんでも?」
「そういうわけじゃないよ。アンジェラだから信じようと思ったの」
「…変な人」
アンジェラは困ったように笑った。
と、「あ」と声を溢した。
「どうしたの?」
「忘れてた、貸すって言ってた本。昨日、それ貸しに家に行こうと思ったらあいつらとあなたを見つけたの。」
アンジェラはごそごそと鞄から本を取り出す。オースティンの小説だ。
「…ありがとう」
エマはその本をぎゅっと抱き締めた。




