二十話
あの後。
アンジェラに屋根から下ろされ、そのまま家まで送られた。その間ずっとアンジェラは周囲を警戒していた。
母は私が少し帰るのが遅くなったせいかとても心配していた。
このあたりでは昔から人攫いの噂があるから。
◇◇◇◇◇◇
「おはようエマ」
「おはようアンジェラ…」
級友達に混ざってアンジェラが会話していた。
まだぎこちないが、そこには数日前までの無視などの様子はなかった。
そもそもアンジェラは美しくて、学業も優秀で、身体能力も高い。嫉妬などはされるだろうが、それでもクラスに馴染めばクラスの中心人物になるだろう。
「アンジェラ…ちょっといい?」
「…帰りでもいいかしら?」
その日の帰り。アンジェラと一緒に帰る。
しばらく無言で連れだって歩くと、エマが重い口を開いた。
「…アンジェラって男なの?」
「えっ?」
そう聞くとアンジェラはぎょっとした顔をする。
「違うけど…なんでそう思ったの」
「思い出したの、前にうちの前にいたよね?髪が短かったから男の子だと思ったけど…あれってアンジェラじゃないの?髪はかつらとかで隠せるし…」
「…なんの話?」
「あれ、違うの」
「違うよ」
アンジェラはふう、とため息をついた。
「アンジェラはなんで昨日私を助けてくれたの?」
「なんでって…」
アンジェラは困ったような顔をした。
「…分からない、勝手に身体が動いてた」
「そうなの」
それを聞いて、ようやくアンジェラがどういう子なのか分かった気がした。
きっと、アンジェラは自分の気持ちに疎いのだ。クラスから仲間外れにされたのが平気そうだったのも、本当はつらいのに気付かなかったんじゃないだろうか。
もちろんこれはエマの勝手な想像だ。だけど…。
「私、あなたに協力するわ、アンジェラ」
自分が話しかけた時の、あの嬉しそうな顔を信じようと思った。震えていた姿を信じようと思った。
「あなたの正体は聞かないわ。だから何をすればいいかだけ教えて」
助けに来てくれた。その気持ちを信じたいのだ。




