十七話
その後は特に何もなかった。
アンジェラは普通だったし、エマも表面上穏やかに接していた。
表面上は。
エマはやっぱり納得いかなかった、だけどあまり深入りするのはよくないと勘が働いていた。
「アンジェラ、知ってる?オースティンの新作小説面白いんですって」
「私持ってるから貸そうか」
「えっいいの?」
普通の会話、普通の日々。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
三叉路のところで別れる。
それがだんだん日常になっていって、キャロルの事がなかったことみたいに感じてくる。この間あんなことがあったことなんて忘れそうになる。
いつも通り家に帰ろうとした。
エマの横に馬車が停まった。
「え…?」
一瞬だった。
馬車から男の手が延びてきて、エマはそのまま中に連れ込まれた。
「!?」
そして、そのまま馬車は走り去った。
「おとなしくしろよ」
連れ込まれた所でナイフを突きつけられる。
「お前、あのピンク髪と仲がいいんだろう」
「あいつの正体を言え」
「な、なに…」
突然の事態に混乱して答えられない。
「言わないと殺すぞ」
ナイフで髪を切られる。それで本物だと分かった。
「おい、傷つけるなよ、この後お楽しみなんだから、楽しみを減らすようなこと」
「黙ってろ」
「はいはい」
エマは混乱していた。だが、自分がこれから録な事にならないのは分かった。
そして、多分殺されてしまうことも。
「いや…」
「だよねえ」
その時だった、馬車の外から声がした。
アンジェラの声が。
「人の友達に手出さないでくれる?」
馬車の扉が壊れて、強い風が馬車内に入ってくる。
エマにナイフを突きつけていた男が白い手に引きずられ、馬車の外に放り出された。
「エマ!」
アンジェラだった。アンジェラは馬車と並走していた。




