十六話
その日の帰り。教室から出ようとすると、アンジェラがこっちに来て、一緒に帰ろう、と声を掛けてきた。
「アンジェラさん…」
「駄目ならいいの、それじゃ」
「待って」
思わず手を掴んだ。
「帰りましょう…一緒に」
何も話さず二人で歩く。いつも通りの下校風景だが、二人の間にはなんとも言えない緊張感があった。
「じゃあ、うちに来て」
「それは嫌」
あのアンジェラの身体能力を見て、二人きりになろうとは思わなかった。
「…じゃあそこの公園で話しましょう。」
アンジェラは諦めたようにそう言った。
◇◇◇◇◇◇
公園では子どもたちがボール遊びをしていた。その近くでは親が見守っている。
「あの子達、結構大きいのに親が監視してるのね」
「このあたりは人攫いが出るって噂があるから、それで子供は一人で行動するのは推奨されてないの」
「へえ…」
空いていたベンチに座る。
「何から話そうかな…」
アンジェラは迷うように手を組む。
「私、誰かに似てると思わない?」
「え…」
ぎくりとした。
「ミシェル…この国では売女の象徴だよね。」
アンジェラはにこりと笑う。
「私はね、ミシェルと血が繋がってるの。売女の血筋ってこと。でもそれって、他の人達からひどい扱いを受けるかもしれないでしょ?だから、ずっとせまいところに閉じ込められて育ったの」
「せまいところ…?」
「私はここには目的を持って来た。だけど、その訳は話せないの。あなたにはただ私と学校で仲良くさてくれればいい。それだけで。」
「話せないのに?協力だけしろって?」
「…だめ?」
アンジェラは不思議な微笑みを浮かべたまま聞いてきた。なんだかそれを見ると、エマの胸はざわざわした。
「…別にいいよ」
「本当!?よかった!」
「話聞いたら巻き込まれそうだもの」
「よろしくね、エマ」
そして、なぜかアンジェラに協力する事になった。
◇◇◇◇◇◇
ああ、本当にあせったな。まさかあの子が襲われるなんて。
自分は目立って敵の目を引くためにここに来た。だけど、まさかすぐに犠牲者が出るなんて思わなかったし、自分がいじめに会うとは思ってなかった。やはり人付き合いも学ぶべきだったかもしれない。
でもよかった。彼女が了承してくれて。しなかったら、処分するつもりだったから。




