表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染に捨てられた俺は、素材と恨みを喰って最強に至る  作者: 雷覇
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/69

第68話:支配の闇に灯る絆

石畳を踏みしめながら、ティアナとレイナは互いに無言で歩いていた。胸中にはロイドの命令と、自分たちの決意がせめぎ合っていたが、その瞳には迷いを超えた強い光が宿っている。やがてティアナが小さく呟いた。


「……ここね」


目の前には温かな灯りがともる小さな店があった。香ばしい匂いが風に運ばれ、二人の記憶を無理やり呼び覚ます。かつて共に食べた料理の数々、そして、あの男の姿。扉を押すとカランと澄んだ鐘の音が響き、客のざわめきの奥から白衣姿の青年が現れた。


「……いらっしゃい」


その声を聞いた瞬間、二人の胸が強く震えた。(……レオン!)心の奥でその名を叫びながらも、二人は必死に平静を装った。人目を避けるようにレオンは二人を奥の個室へ案内し、扉を閉めると張り詰めた空気が流れ込む。


ティアナが口を開いた。「……レオン。ロイド様から命じられたの。あなたの前でフローラ様が虐げられていると話せって」


レイナもすぐに言葉を重ねる。「でも、それは罠よ。あなたが反応するかどうか試すための……」


レオンの瞳が鋭く光り、「そうか。ついに疑い出したか」と低く呟いた。二人は顔を見合わせ、小さくうなずき合う。ティアナがさらに声を潜めた。


「レオン、フローラは……あなたの似顔絵を見て、「レオン」と呟いたそうよ」


その言葉にレオンの表情が一瞬で揺らぐ。

「フローラが……」


レイナは身を乗り出し、必死に訴える。

「ええ。まだ完全ではない。でも、あなたのことを思い出しかけているの。私たちも、あの料理で支配が揺らいでいる。だから……信じてほしい」


しばしの沈黙ののち、レオンは深く息を吐き、二人をまっすぐ見据えた。

「フローラがまだ、ロイドに完全には染まっていないとわかったのは素直に嬉しい……ありがとう」


その声音は震えていたが、そこには確かな温もりがあった。


「フローラを取り戻す。必ずだ。そのために、お前たちの力を貸してほしい」


ティアナとレイナの瞳に涙がにじむ。

「……もちろん」

「命令には従ったふりをするわ。でも、私たちはもうロイドの人形じゃない」


三人の間に確かな絆の炎が灯った。その炎は、支配の闇を切り裂く小さな希望の光となっていた。


レオンは深く息を吐き、二人を見据えた。

レオンは深く息を吐き、二人を真っ直ぐに見据える。

「ロイドは俺の正体を疑っている。だからこそ、試しを仕掛けてくるのは想定済みだ」


ティアナが眉を寄せる。

「試し……?」


レオンは静かに頷き、低く続けた。

「お前たちに命令を出したのもその一環だ。俺がレオンなら必ず動揺するはずだと考えている。逆に言えば、平然と受け流せば疑いは薄れる」


レイナが不安そうに口を開く。

「でも……本当に受け流せるの? ロイドは一瞬の仕草や視線の揺れさえ見逃さない」


「だからこそ、芝居をするんだ」

レオンはきっぱりと言い切った。


「俺はアッシュとして冷徹に振る舞う。お前たちは命令どおり俺に問いを投げかける。それでロイドの目を欺く」


ティアナは唇をかみしめながら、そっとレオンの手に触れた。

「でも、あなた一人に背負わせるわけにはいかないわ。今度こそ、私たちも共に戦う」


レイナも静かにうなずく。

「ロイドに気づかれないように振る舞うのは簡単じゃない。でも、だからこそ――私たちの意志を示す時よ」


二人の声は弱々しくも確かな強さを帯びていた。

その響きにレオンの胸は熱くなる。


「……ありがとう。お前たちがそう言ってくれるなら、俺は最後まで立ち向かえる」


やがてティアナとレイナはロイドのもとへ戻り、落ち着いた口調で報告を始めた。


「……アッシュに関しては、特に不審な点は見当たりませんでした」

ティアナが感情を抑えた声で告げる。


レイナも続ける。

「フローラの名を出してみましたが……彼はまったく反応しませんでした。取り乱す様子もなく、ただ料理に集中していました」


玉座の間に響くその言葉に、ロイドの瞳が細く光った。

しばし沈黙が落ち、彼の口元にわずかな歪みが浮かぶ。


「……そうか。ご苦労だった。もう下がっていいぞ」


二人は恭しく頭を下げ、背を向けてその場を去る。


広間に残されたロイドは、しばし沈黙したまま目を閉じた。

やがて小さく息を吐き、肩を揺らして苦笑する。


「……どうやら考えすぎていたようだな。あの男はただの料理人にすぎん」


椅子の肘掛けを軽く叩き、立ち上がる。

「アッシュのことは――ひとまず忘れよう。疑念に囚われては、真に見るべきものを見失う」


その声は自らを納得させるように静かで、部屋に再び冷たい静寂が戻った。


ティアナとレイナが去り、店に残されたレオンは静かに包丁を置いた。

厨房に漂う香ばしい匂いとは裏腹に、胸の奥では煮え立つような怒りが渦巻いている。


(……やはりロイドは卑劣だ。疑いを晴らすために二人を利用し、平然と人の心を縛ろうとする。あの支配を当然のように振るう姿が、何より許せない)


握り締めた拳に血がにじむほど力がこもる。

それでも彼は深呼吸し、怒りを押し殺すように吐き出した。


(だが、今は感情に流されるわけにはいかない。必ず機を見て――あいつの偽りの力を打ち砕く)


(……料理人の祭はもうすぐだ。あの場には王都中の人々が集い、ロイドの目も必ず注がれる)


拳をゆっくりと握りしめ、レオンは自らに誓った。

(そこで、すべてを終わらせる。フローラを、そしてこの街をロイドの支配から解き放つ……)


静かな決意は、炎のように胸の奥で燃え続ける。

包丁の刃に映る自分の瞳は、もう迷いを残してはいなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ