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魔王の生成

 居残りを命じられた俺だが、なぜだか城主の執務室のあるフロア、十九階に連れていかれた。

 そこの窓からはリュウセン公国の姿がはっきりと見えた。

 常夜の世界からは、まず山のふもとが見え、そこから先は森が広がっている。

 森を囲むように運河があり、橋が架けられ、そこから城下町へとつながっている。

 城下町は城壁に取り囲まれており、その外は広大な砂漠が広がっていて、果ては見えない。

「ナツキ、今日の説教は俺からじゃなく、城主様からだ」

 ユイに告げられ、俺はうつむく。

 悪いことをしてしまったらしい。

 ユイは城主の執務室のドアをノックすると中に入った。

「失礼します。ナツキを連れてきました」

「うむ。使い魔から話は聞いている。君は担当教官としてそこのソファで話を聞いていたまえ」

「はい」

 ユイは、背筋を伸ばして、緊張した気配でソファに腰掛ける。

「ナツキ。君はテキストの生成基礎の項目を読んだかね?」

「はい。授業で習いましたから」

「基礎ができていない」

「……すみません」

 そこで、エルフのメイドが氷漬けになったワーウルフを運んでくる。

「これは生成師の魔物生成ではない。魔王の魔物生成だ」

「……?」

「君のレベルでは、まだ実戦向きの魔物は作れないはずなのだよ。だがこの魔物は実戦に向いていた。しかも意思を持っている。これはナチュラルモンスターと呼ばれるもので、非常にレベルの高い生成だ。しかしな、これは売り物にはできんのだよ」

 売り物にはできない。

 将来、商売人になるのもいいかなと思っていた俺の商魂は抜け落ちそうになる。

「なぜだか分かるかね、ユイ」

「ナチュラルモンスターはコントロールが効かない。それに、魔界王家の者は希少で、魔王に擁立する者を探している魔界貴族たちが魔界王都にいる。ナチュラルモンスターが作られたと知れば、彼らが押し寄せてくるに違いない」

 深紅、どうして俺をそんなややこしい出自に設定したんだ!?

 戦争ゲームに変わったらやだからな!!

「戦争、行ってみたいかね、ナツキ君?」

「いえ……」

「わざわざ紅い月の世界に転生させた甲斐があったな。あそこからは連れて帰ってくるのはなかなか難しいのだが。いいかい。もっと生成時に指輪に魔力を込めて作るのだ。全身から魔力を放出してはいけない。他の生成師らは指輪からしか生成系魔力を放出できないのだ。今の方法で作っていると、そのうちとんでもない事になる」

 ゲームみたいに、俺がばーっと血をまき散らしたら、その辺の草木が魔物に変化し、次々にうじゃうじゃと魔物が出てきて俺をガードし、勇者らしき一行を苦しめるとか?

「我々魔界は敗戦国なのだよ。魔王が再び擁立されたらややこしい事態になる。分かってくれるかな、ナツキ君」

「はい」

 別に勇者と戦いたいとは思わないし、魔王とか、王子とか、なるの嫌だし。

 「では、ユイ。今度、手の空いている時に彼の生成を見るように」

「……はい」

 何だかユイ、嫌そうだなー。

「君がたくさん発注を受けているのは分かるが、もう少しやる気を出してくれんかね?」

「努力します」

 うわー、やる気のなさそうな返事……。

 やっぱり、この悪魔、不真面目なんだな……。

 プレイヤーの地位、剥奪されたぐらいだし。

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