闇の棺おけ
「ナツキ。今日、生成の自主練を見てやるから、残るように」
俺はユイに言われ、はっとした。
俺達あじさいが自主練をストップして四日が過ぎた。
例の棺おけは、もう消費されたのだろうか……。
「その、今日は予定が……」
「俺は忙し-んだ。俺の予定に合わせろ!!」
ユイ、俺様キャラだなー。
「でも、今日は……」
「なんだ? 教官の言う事が聞けねーのか?」
かなり怒ってる。
あ、そっか。
ヒロインだから、約束を断ったらラブゲージが下がるんだっけ。
嫌われちゃうかなー。
でも、あの棺おけに当たるのは絶対に嫌だ!!
後で、ラブゲージを回復するように考えれば……。
「ユイ。今日、ナツキはコウヨウと先約が入っている」
カエデから助け舟。
「断れ、そんなもの!!」
嫉妬にしても、教師としての怒りにしても、これはおさまりそうにないなー。
俺からユイに断るしかないか……。
などと考えていると、カシャカシャと鎧の騎士の歩く音が聞こえてきた。
がらりとドアの開く音。
鎧の騎士と共に凶暴そうな顔つきの男ーールネがやってきた。
「さっき、候補生用のプールで事故があったらしい。ヒスイが見つけて処理に当たってるが、手が付けられない感じで困っている。城主に報告したところ、教官もプールに向かうよう、出動命令が下った。それと他のガキどもはプール内に入れるな。教室で待機させろ」
「分かった」
そこへ、隣の教室からレイがやってくる。
「レンが……レンが来ないと思ったら、生成用の棺おけが開いて、錯乱状態に陥ってしまったようです!!」
「分かった。俺がここでガキどもを見張っとく。レンを担当してるおまえはプールに行け。必要なら、医務室で薬物投与も……」
「できれば、自然療養したいんですけどね……」
「ぬるい事を考えてると失敗するぞ。さ、来い。ガキども!!」
俺とカエデ、それにセツナはA教室に連れていかれる。
そこにはコウヨウ、アヤメ、ユズハの姿があった。
ユイはぴしゃりとドアを閉ざし、住人証で部屋をロックしてしまう。
ユイの方が上のランクの住人証なので、俺達の権限では開かないだろう。
「レイが呼びに来るまで、今日は俺が授業を行う。カエデにはコウヨウが、ナツキにはアヤメが、セツナにはユズハがテキストを見せろ」
ふと俺は、カエデとコウヨウが視線を合わせたのに気づく。
次いで、二人は俺の方をちらりと見た。
俺の視線に気づいた二人はその後、何事もなかったかのようにユイの指導通り、動く。
アヤメやセツナは軽く混乱し、落ち着きがなく、混乱した様子で私語を続けた。
「静かにしろ」
「……なんなんだよ!? 棺おけが開いたってなんなんだよ!!」
ユズハが怒りの声をあげる。
「出荷元のミスか、あるいは嫌がらせ……今日から城の使用人に検品させる」
「それで、レンが元に戻るのかよ?」
「さあな。レイに治療は任せたから俺には分からん」
「……んだよ!!」
ユズハは壁を叩きつけた。
レンはどうなったんだ?
単純に、生成材料におびえたのか。
それとも……。
開いた棺おけの中にいたのが、レンの顔見知りだったのか……?




