王子様設定
その後、俺がレストランに行くと、そこには同級生らの姿はなく、ヒスイが鎧の騎士らやメイドを相手にお茶会をしていた。
ミルフィーユをみんなでわけて、談笑している。
が、俺に気づくとヒスイが近寄ってきた。
「ナツキー。僕、生成師のルネさんに教えてもらったよー。紅い目の秘密。知りたくない?」
正直、気になったけれど、この悪魔から聞かないほうがいいような気がする。
「いえ」
スルーした。
「僕、紅い目のひと、見たことあるよー。教えてあげようかー」
ヒスイは、意地の悪い笑みを浮かべて、近づいてくる。
不思議の国のアリスのチャシャ猫みたいなキャラだなー。
黒目がちな瞳をよーく覗き込んだら、三日月が浮かんでるんじゃないのか……?
怖くて、顔を背けてしまうけど。
帽子を愛用してるから、帽子屋の要素も入ってるのかな?
帽子をくれるとか言うし。
きっとこの悪魔、不思議の国のアリスからの引用キャラなんだな。
奴、とにかく何かフラグを立てて!!って必死な感じがする……。
帽子をもらったら、フラグが立つんだな。絶対にもらうもんか!!
アヤメもこれぐらい、フラグを立てるの簡単そうだったらいいのになー。
「僕の先生」
……?
「ホストみたいにチャラい悪魔だったけど、メチャクチャ可愛かったよー。特に紅い目がキュートだったなー!!」
だから異様にラブゲージ高いんだ……。
かなり、怖い……。
もう少し、離れてくれませんか……?
「でねでね、せんせーはね、魔界のおーぞくだったんだよ!!」
「え?」
不意に耳元で囁かれ、俺は引きつったような声を漏らす。
「魔界の王族は紅い目の悪魔が多いんだってー。ルネさんも血が薄まってるけどそうだってー。元々、魔物生成なんて魔王様のお仕事だからねー。リュウセン城でも魔界の王族が何学年かに一人いるよ。どう? 君が生成師候補生になった理由が分かった、王子様? いや、お姫様かな? でないと、行方不明の魔王様の変わりに、新しい魔王様に擁立されちゃうかもしれないもんねー。戦争させられるかもしれないもんねー。あはははは」
何がそんなに面白いんだろう。
戦争だなんて、不謹慎な!!
にしても、俺っておーじ設定なんだ。
やめてくれ……。
一応、こう見えたって、俺にだって羞恥心はあるんだ!!
コスプレオタクでもないのに、ゴシック系のコスチューム着せられて、赤いリボンをちょうちょ結びにされて、かなり参ってるのに、王子設定とか勘弁してくれ!!
「ユイは?」
「ああ、ユイさんは精霊族の血が混じってる。精霊族系の生成師は結構レアだよ」
俺もユイみたいに、精霊族の血が混じってるとかで良かったのになー。
なんで俺だけ、こんなキラキラ設定なんだー!!
恥ずかしい!!
同じプレイヤーとして、不公平すぎる!!
一般の男子中学生に王子キャラやれとか、きつい。
王子の服とか着せられたりしたら、城出するぞ!!
この設定、変更できないのか!?
「そうそう、帽子をあげるって約束だったのに、持ってくるの忘れてた。今度持ってくるからー」
「いりません。それに約束してません!!」
「絶対に持ってくるからねー!! 楽しみにしててねー!! きれいな箱に入れて、可愛くラッピングして持ってくるからー!!」
俺の言葉を全く聞いてない!?
この先輩悪魔を、どう扱えばいいんだろう……。




