Chapter9 春風よ、どこへ行く
「主人公ちゃんと王子くんでデートに行く話はどうだろうか……」
ガリガリとネタを紙に書き連ねる。皮肉屋王子はきっと嫌がるんだけど、ライバルの偽王子とかバイブルにしている少女漫画のキャラとかを張り合いに出されて、勢いでデートすると言ってしまう。主人公ちゃんは主人公ちゃんで、別に皮肉屋王子の事は好きじゃないしデートなんかするつもりはない。けど、こっちもこっちで、夢見すぎ! とか言われてデートすることを了承してしまう。そのまま文句を垂れつつもデートの日を迎えて……。
おお、なかなかいいんじゃないか? これ猩々さんに提出決定だな。話を考えるのは好きだけど、絵を描くことはできない。だからこの萌えの塊は誰かに描いてもらうしかない。文章なら書けないこともないけど、生憎自分で書いた文章に自分で萌えることは難しい。だから猩々さんを利用して、萌えさせてもらおうと目論見中である。
「いいんじゃないソレ。ちょっと見せて」
「真紀もそう思う!? おっし、じゃあやっぱり猩々さんに提出だな」
「……ねえるき。私思ったんだけど。アンタもいい加減二次元以外見たらどうなの?」
何を言われているのかちょっと良くわからない。首を傾げてパックのオレンジジュースをズズズッとすする。うん、よい酸っぱさ。甘くないオレンジジュースって好きだ。ブラッドオレンジジュースとかね。ブラッドってかっこいいよね。だって血だよ? 血の滴るオレンジだよ? かっこよくない? ねえ。
「聞けよ。アンタは漫画にばっかり夢見すぎなのよ。現実にこんな男いません。わかってるでしょそんなこと。白馬の王子様は存在しないの。白馬は交通規則に引っかかるわよ」
「別に白馬の王子様を求めてるわけじゃないもん。現実にだっていないのもわかってるし。だから私が二次元に行くしかないでしょって痛い! 痛いです真紀さん!」
「アンタはアホか! いい加減もう少し周りに目を向けたらどうなの。ほらあの人は? アンタがよく連絡取ってる、アンタがよく連絡取ってる、男子高校生だか何だかの」
「あの子はネット友達。たとえリアルで会ったとしても恋愛はできません。大体年下だよ? 私付き合うなら年上が良いなー。年上で、気だるげで、でも面倒見は良いの。あと背が高くて、私がまとわりついてもきっと怒らない。けど溜息はつくんだろうな。そのあと『しゃーねーな……』っつって頭ポンポンしてくれる鳴海さんどこですか!?」
「一生寝てろ!」
「ぎゃっ!」
頭に拳骨を落とされて、そのまま机に伏せる。真紀は恋愛恋愛って言うけど、私は別に彼氏なんか欲しいわけじゃない。だって彼氏とかってめんどくさそうだし。あっ鳴海さんは別で。
……私だって、付き合ったことがないわけじゃない。一週間で振られたけどさ。でもあれはあっちが悪い。あっちから告白してきたくせに、俺のこと好きだろって突然セクハラしてきたりして。あの男は確実に、とりあえず女と付き合ったって事実が欲しいって目をしてた。あの時は笑ってごまかしたけど、あれは別れて正解だったわ。許せないのが振られたってトコだけど。どうせなら私から振ってやりたかった。
「……るき、アンタの嫌いな雪乃だってデートするときは自分からアクション起こしてたんだよ」
「っ、そ、それは……」
「そっか、アンタは雪乃以下かー。それじゃあやっぱり鳴海さんとは釣り合わないんじゃない? 最終的に鳴海さんと付き合ったのは雪乃だしぃ~。雪乃以下のアンタなんて……ねぇ?」
「くっそテメェ! 鳴海さんと雪乃が付き合ったってのは私の中でNGワードだと何回言えばわかる! 大体私はあの女よりは性格悪くないと思う!」
「じゃあ猩々さんとデートすっか!?」
「おおしてやるよデートでも何でもバッチ来いっつーの!」
「よし。じゃあ今週の土曜の夏祭りで、猩々さんとデートね!」
……あれ?




