Chapter13 現実は未だ見えず
「お腹減ったなー……あっそうだ、私わたあめが食べたいから買ってくるね!」
「それなら僕もついていこう」
真紀と相模くんが何か言う前に、二人でその場を離れる。別行動して後ろから見守る作戦、なのだが。
「おい夜月。あの二人、付いてきている」
「えっそれじゃあ別行動の意味ないじゃないですか」
「……とりあえずわたあめを買いに向かうぞ。撒けそうなら撒く」
「ラジャー」
その後は特に会話もなしに、序盤で通りかかったわたあめの屋台へと向かう。花火が始まるからか、私たちと逆の方向へ向かう人が増えた気がする。気を抜くと押し流されそうで少し怖い。ちらりと他の屋台も確認しながら、後ろにいるはずの真紀と相模くんを盗み見る。
しかし次の瞬間。前を歩いていた、黒ずくめが消え失せていたのだ。……しまった、猩々さんとはぐれてしまったかもしれない。慌てて周りを見回すが、猩々さんらしい影はおろか、真紀と相模くんすら見つけられなくなってしまった。
ど、どうしよう。スマホを見てみるが、電池がほぼない。何で充電してこなかったんだ私の馬鹿。とりあえずチャットだけでも真紀に送れれば! と意気込んでアプリを開いたが、すぐに画面はブラックアウト。……電池、切れた。
「しょ、しょうじょうさーん……」
小声で名前を呼びながら、とりあえず進む。猩々さんはきっと私を置いて先に行ったはずだ。だからわたあめのところで待っていれば、もしかしたら会えるかもしれない。
人波に抗って前へと進む。誰とも連絡が付かないという不安が、ムクムクと大きくなっていった。さっきはぐれた場所の近くにいた方がよかったかな。迷ったらその場を離れるなって、よく言うよね。どうしよう。
もう使い物にならないスマホを握りしめる。このまま、見つけてもらえなかったらどうしよう。私、入り口からじゃないと帰り道分からないのに。誰かにスマホを貸してもらうべきだろうか。どうしよう。
恐怖と不安に、思わず唇を噛んだ、その時だ。グッとフードが引かれてよろめく。そのまま、誰かに衝突した。
「ごっ、ごめんなさ、」
「おい! 勝手にいなくなってるんじゃない!」
「猩々さん……!」
「君は迷子になったらその場を離れるなと言うありがたい教訓も知らないのか? おかげで往復することになったんだもっと全力で謝れ!」
「すみません! ありがとうございました!」
ずいっと眼前に何かを突き出され、思わずうわっと声を上げた。……わたあめ?
「食べたかったんだろ」
「あ、ありがとう、ございます……」
なんだこれ、なんだこれ! なんだか少女漫画みたいじゃないか。迷子の私を見つけてくれて、その上食べたがってたわたあめも買ってくれるなんて。
「丁度五百円だ、今払え。忘れる前にな。ああ、それから次はぐれたら無視して置いていく」
前言撤回。急激に冷めた。キュンとした私死ね。




