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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第3章 偽勇者となんちゃって勇者

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第70話 召喚された魔王それは

【これまでのあらすじ】

 魔王が近々復活すると言う予言にしたがい、異世界召喚された女子高生勇者、早瀬 麻美と、その巻き添えとなった担任教師の眞壁 真一。

 2人は異世界で知り合った勇者神殿の神官ミント、マッチョエルフのエリチン、シーフのシラクサ、王国女騎士ヴァレリアンと共に、異世界で冒険者として旅を続けている。

 フラーノの郊外で暮らす魔導書研究家のビーデ・シヨから魔導書探索の依頼を受けた勇者パーティーは、依頼主を連れて魔導書が封印されている遺跡を探索し、ついに目的の魔導書を発見した。

 しかしそれは魔道エロ本で、おまけにそれを奪うべく待ち伏せしていた偽勇者パーティーと戦闘になり

勇者パーティーは偽勇者パーティーに圧勝する。

 一方、魔界では、魔王召喚の儀式が行われていた。

12月5日


「成功です」


 最初に聞こえたのは、その声だった。


【オオッ!!】


 耳と頭に、大音量の歓声が響き渡る。


「な、何だこれは?!」


 真壁 真一が驚きつつそう呟く。


 それは、二度目の体験だった。


 ちなみに一度目は、勇者神殿に召喚をされた時だ。


 硬い床の上にうつ伏せで倒れていたため、とりあえず体を起こすと、そこはやはり広い空間だった。


 城か神殿の広間のような場所で、薄暗い上に妙に暑い。


「どこだ、ここは?」


 目を凝らすと、自分を中心に巨大な魔法陣が描かれており、その周囲を化物たちが取り囲んでいる。


 特に正面には、巨大な金色のドラゴンがおり、真一の方を縦長の瞳で睨みつけていた。


「おや、あなたは?」


 怪獣大集合のような空間で、どこかで聞いたことがある声がした。


 顔を向けると、身長が4m近くある半透明の巨人、ゲインズ ラモンがいた。


「あんたは、この間の」


「お久しぶりです。その節はお世話になりました」


 上級魔族にしては礼儀正しい。


「それにしても驚きました。あなたが転生された魔王様だったとは」


「えっ? 誰が?」


「あなたが」


「何だって?」


「転生された魔王様です」


「…………」


 改めて広間を見回すと、それっぽい連中が皆、畏まっている。


【お帰りなさいませ、魔王様】


 自分など鼻息一つで吹き飛ばせそうな巨大なドラゴンが、頭を下げた。


「千年ぶりでございます」


 そう言ったのは、肌の黒いエルフだ。


 見た目は若そうだが、エリチン同様、とんでもない年月を生きているのだろう。


「どうやら、記憶を失っておいでのようですね。私は召喚魔術師のデォマヌスと申します。あなた様を召喚するための儀式を行わせていただきました。しかし、最後の一発ギャグをやったのは、そちらのシャドードラゴンです」


【こ、こら、余計なことを言うでない!!】


「金色なのに、シャドードラゴン?」


【この名前は、あなた様につけていただいたものです】


「…………」


 状況から判断するに、こいつらは上級魔族達で、ここは魔界のどこか。


 そして、どうやら勇者神殿が阿左美を召喚したように、自分もここへ呼ばれたらしい。


 それも驚いたことに、復活した魔王として。


「どうりで、やたらと魔力が強いわけだ。でも全然覚えていないな」


「それは仕方がありません。転生する際、記憶は全て失われますから」


 ダークエルフがゆっくりと近付いて来ると、そう言った。


「でも、それだと転生をする意味がないだろう」


「何を仰います。これから長い年月をかけて、新たな魔王として知識を身に着けていただけば良いのです。あと、何かの拍子に記憶が戻るかもしれませんし」


「過去に、魔王が転生をした時はどうだったんだ?」


「それが、先例がないのです」


「つまり、今回が初めて?」


「左様です」


 これはいよいよ困った。


 いきなりこんな怪獣軍団のボスになれと言われても、予備知識がなさ過ぎる。


 そもそも、何かの間違いという可能性も高い。


 どうする、正直に無理だと言うか? でも、じゃあ帰って良いよということにはならないだろうし、下手をしたら本当の意味でミンチにされかねない。


「すまない、いきなりのことで少し疲れた。休ませてくれ」


 とりあえず今は時間が欲しい。真一がそう言うと、上級魔族達がハハァ~ッと再び平伏したのだった。





 真一が通されたのは、千年前に魔王が使っていた居室だった。


 魔王城は、基本的に壁も床も天井も黒い石で組み上げられている。


 ただ、窓から差す光は赤かった。


 何故だろうと思って覗いてみると、城の周囲を溶岩の川が流れている。


「どうりで暑いわけだ」


 ここが魔界なら、城壁山脈の北側のはずで、極寒の地のはずだ。


 それなのに、外套と防寒着を脱いでも全く寒くはなかった。


「これまた立派な部屋だな」


 魔王の部屋は、何もかも豪華で、さらに綺麗に磨き上げられていた。


 よくゲームやアニメでありがちな、人間の骨や拷問道具が飾られていたりはしない。


 サイズも平均的な人間用で、真一が普通に使えそうだ。


「本か、記録が残っているとありがたいんだけど」


 とりあえず、ここにずっといるつもりはない。


 あの出来の悪い教え子や仲間達を放置するわけにもいかないし、そもそも、雰囲気的にここは駄目だ。


「何とか誤魔化して、向こう側に帰らないとな」


 その時、扉がノックされた。


「どうぞ」


 そう返事をすると、1人の若い女性が入って来た。


 褐色の肌に金色の髪と瞳の美女だ。


 服装は、真一達の世界にいたコスプレメイドのようだが、この世界では服装だけで相手を判断はできない。


 とりあえず、蜥蜴やゴキブリみたいな魔族だったらどうしようと思っていただけに、少し驚きつつもホッと胸を撫で下ろした。


「お帰りなさいませ、魔王様」


 褐色の金髪美人がドアの前で胸に手を当てると、片膝をついて頭を下げた。


「ああ、ただいま。ただ、記憶がなくてな。君は魔王を覚えているかもしれないが、こっちはさっぱりだ」


 魔族達との会話から、ここの連中の多くは転生前の魔王と面識があったり、仲が良かったようだ。


 つまり、エリチン並みの寿命があるということになる。


 この褐色の金髪美人もそうなのだろう。


 ちなみに最初はダークエルフかと思ったが、耳は尖っていなかった。


「構いません。私は魔王様にお戻りいただけただけで十分でございます」


 頭を下げたまま、彼女がそう言う。


「すまないが、自己紹介をしてくれるか?」


「はい、私の名はイオン モール、フェイでございます」


 フェイ? なんだそれは、種族か、役職か、はたまた一族の名前か。


「失礼いたしました。フェイとは精霊族のことで、私は魔王様の身の回りのお世話をさせていただいておりました」


 怪訝そうな表情をしている真一を見て、イオンと名乗った美女がそう補足説明をした。


「ありがとう。じゃあ、この部屋の掃除とかも、君が?」


「はい、魔王様がいつお戻りになられても良いように、毎日欠かさず続けておりました」


 千年間ずっと?! 長寿なのも考え物だなと思った。


「お許しをいただければ、今後も魔王様のお側でお仕えさせて下さいませ」


 おいおい、いくら人間ではないとはいえ、こんな美人にお世話をされたりしたら緊張するな。


 転生した魔王と言われても、20年以上普通の人間として平凡な生活を送って来たのだ。


 いきなり、ハァ~ッハッハッ、我は世界の支配者、魔王なりぃ~!! などと頭を切り替えられるわけがない。


 阿左美が勇者として召喚され、それに巻き込まれただけでも、十分非日常的だというのに。


 まあ、そういったゲームが好きだったおかげで、まだ何とかパニックにならずに済んでいるが、それにしても限度というものがある。


「お食事をお持ちいたしましょうか?」


 そう言われて、朝から何も食べていないことを思い出した。


「すまないが頼む」


「畏まりました」


 そう言うと、イオン モールは立ち上がってドアから出ていった。





「フゥ、何よりもまずは情報だ」


 そう言いつつ、窓から外を眺めていると、かなり遠くに城壁山脈が霞んで見えた。


 あの向こうに阿左美達がいる。


 突然真一が消えたりしたから、きっと大騒ぎになっていることだろう。


 そう物思いにふけっていると、窓の外にうっすらと人影が見えた。


 それは宙に浮いており、そのまま近付いて来ると、窓をノックするような仕草をする。


 真一が窓を開けると、それは室内に入って来た。


「助かりました。魔王様の部屋には何重にも結界が張られていまして、窓からは許可を得ずには何人たりとも入れないのですよ」


 それはゲインズ ラモンだった。


 実体がない彼は、身体のサイズも自由に変えられる。


 今は、真一とほとんど同じ大きさに合わせていた。


「ちょうど良かった。色々教えてくれ」


 魔界における唯一の面識がある魔族は、彼しかいない。


「実は、先回お会いした後、私はこちらに帰ってから、勇者が召喚されていることを伝えてしまったのですよ」


「早瀬のことだな」


「はい。するとシャドードラゴンが、我々も千年たってどこかに転生をしているはずの魔王様を召喚しようということになりまして」


「なるほど、人界に対抗しようとしたわけだな」


「その通りです。しかし、まさかあなたが転生した魔王様だったとは、驚きました」


「一番驚いているのは俺だがな」


「ハハハハ、しかし、いくつか納得はしました。あなたの魔力は確かに人間離れをしていましたから」


「でも、あの時は気付いていなかったのだろう?」


「もちろんです。知っていたら、そのまま魔界へお連れしていましたよ」


「ところで、本当に俺は転生した魔王なのか?」


「それに関しては、私は何とも言えません。ただ、魔王様を召喚したら、魔法陣にあなたが現れた」


「儀式に間違いがあった可能性は?」


「それに関しても私には何とも。方法を知っていたのはデォマヌスだけでしたから」


「あのダークエルフか」


「はい、私達の中では最も高齢で、1万歳以上のはずです」


「1万年前……地球なら中石器時代か、人口は全世界で100万人から1千万人ぐらいだったな。そんな時代から生きているなんて、もう歴史そのものだ」


「はい、この世界でも彼が生まれた当時は、人間はまだ狩猟で食料を得ていたはずです」


「そんなとんでもない奴を従えていたのか、魔王は」


「聞いた話では、完膚なきまでに魔王様に打ち負かされたとか。実際、上級魔族の多くは、魔王様に戦いを挑んで敗れています」


「まさに力づくで従えたわけだな」


「御覧になった通り、人間などよりはるかにバリエーションが豊富ですからね。全種族共通のルール、それは強い者が正義です」


「魔王様って凄かったんだな。サイズ的には俺と大差ないみたいだけど」


「はい、魔王様は外見は人間でした。ただし魔力は絶大で、あの巨大なシャドードラゴンですら、敵いませんでしたけど」


「冗談だろ」


「いいえ、後にも先にも、シャドードラゴンが泣きながら土下座をしているのを見たのは、魔王様に負けた時だけです」


 何者なんだ、魔王って……。


 その時、ドアがノックされた。


「飯が届いたみたいだ」


「イオン モールですか? 彼女は信用して良いですよ。ただし、怒らせないで下さいね」


「えっ? 怖いの?」


「それはもう」


 そう言うと、ゲインズ ラモンはフワッと浮き上がって、窓から外へと出た。


「では、ひとまずこれで」


「また、色々教えてくれよ」


「喜んで」


 そして、そのまま消えてしまう。


「何だか魔族って良い奴ばっかりだな」


 そう言ってから、ドアに向かって「どうぞ」と答える。


 先ほどの説明によると、真一が入室を許可しない限り、中には入ってこられないようだ。


「お待たせいたしました……」


 イオン モールが料理と飲み物が乗ったワゴンを押しながら入室してきた。


 そして、何かを感じたらしく、足を止めて室内を見回す。


「どうした?」


「いいえ、失礼いたしました」


 そう言うと、緊張を解いて部屋の中央にあるテーブルに料理と飲み物を並べる。


「魔王様の大好きな、溶岩虫のムニエルとビホルダーの触手のスープです」


「…………」


 大きなゴキ〇リの蒸し料理と、ウネウネと動いている触手が入った紫色のスープ。


「…………うん、早く帰ろう」


 そう強く決意した瞬間だった。

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