第62話 魔道エロ本
【これまでのあらすじ】
魔王が近々復活すると言う予言にしたが、異世界召喚された女子高生勇者、早瀬 麻美と、その巻き添えとなった担任教師の眞壁 真一。
2人は異世界で知り合った勇者神殿の神官ミント、マッチョエルフのエリチン、シーフのシラクサ、王国女騎士ヴァレリアンと共に、異世界で冒険者として旅を続けている。
フラーノの郊外で暮らす魔導書研究家のビーデ・シヨから魔導書探索の依頼を受けた勇者パーティーは、依頼主を連れて魔導書が封印されている遺跡を探索し、ついに目的の魔導書を発見するのだった。
そして、ついにその遺跡の奥で表紙に女性の胸の装飾が施された魔導書を発見したのだった。
魔導書が封印された台座を目指して遺跡の通路を慎重に進んで行く。
興奮したビーデ シヨが放っておくと真一達を置き去りにして先に進んで行きそうになるので、落ち着かせるのに苦労をした。
そうこうするうちに、通路の行き止まりにたどり着く。
「おおっ!!」
祭壇を見つけたビーデ シヨが歓声を上げつつ駆け出す。
そして、その上にはめ込まれている魔導書を見つけて、笑い声を上げた。
「ハッハッハッハッ、あった、あったぞ。これだ」
さらに自分の魔導書も取り出して、祭壇の上に並べる。
「おっぱいが四つに……」
「確かに、事情を知らない人間が見たら、かなり”アレ”だな」
阿左美と真一が、ビーデ シヨに聞こえないように小声でそう囁き合う。
「さあ、封印を解くぞ」
自分の魔導書のページを捲っていくと、白紙だったページに文字が浮かび上がっていた。
「それは?」
「インクが劣化して薄くなったわけではなかったということだ」
「なるほど。それで、封印されている魔導書の正体は分かったのですか?」
「うむ……」
浮かび上がった文字を読むビーデ シヨ。
「これは、まず魔導書の封印を解く方法だな……」
そして、白紙のページ全てに文字が浮かび上がっているわけではなかった。
「とりあえず、この封印を解けということか」
「ま、待ってください。もし本当に、この魔導書が死の谷を封鎖するためのものだったりしたら、大変なことになりますよ」
まあ、魔族が攻めてきているわけではないので、犠牲者は出ないが、魔界と人界を繋ぐ唯一の通路が塞がれてしまうことになる。
「そのような魔道が谷に仕込まれているかどうかは分からんが、本の封印を解いただけで発動するということはないだろう」
「魔導書の専門家であるあなたの見解に異を唱えるつもりはありませんが」
「おそらく封印を解けば、残りのページにも文字が浮かび上がるはずだ」
そう言っている間に、読み終わったようだ。
「方法は簡単だ……両方の表紙をくっつけるだけだそうだ」
「その割に、浮かび上がった文字が多かったような」
「ただ、くっつけるだけでは駄目だ。まずは……」
そう言うと、ビーデ シヨは自分の魔導書を持ち上げ、祭壇に埋め込まれているそれに近づけていった。
「表紙の装飾を近づけ、先端部分を軽く触れさせ、こう、上下左右に動かす」
「うわぁ~、最低だ」
どう見ても、怪しい老人が、怪しい本で怪しい行為をしているようにしか見えない。
ミントやヴァレリアンが、そのセクハラ行為を正視できず、顔を背ける。
「依頼人に言う言葉ではありませんが、これは、色々と酷いですね」
「黙れ、封印を解くためだ」
やっている本人も、かなり恥ずかしいようだ。
こんなことなら、一人で来れば良かったと、その表情が語っている。
本の表紙のおっぱいを擦り付けていると、祭壇がうっすらと輝き出した。
そして、それが消えた時。
「解けた」
埋め込まれていた魔導書が、ポコッと外れた。
「やった、ハハハ、大金と羞恥心を失ったが、ついに魔導書を手に入れたぞ」
「それは、良かったですね」
とりあえず、これで依頼は達成だ。
2冊になった魔導書のうち、封印されていた方を祭壇の上に置き、ページを捲っていく。
真一達も、それを囲むように集まると、息を飲んだ。
数百年前にこのような遺跡に封じられた魔導書の中身とは?!
ページには、美しい女性が描かれていた。
それも不思議なことに、立体(3D)に見える。
別に本の上に浮かび上がっているわけではない。
逆に、紙のページの中に奥行きがあるのだ。
それは物凄い技術だが、問題は、そこに描かれている女性の方だった。
全裸なのだ。
「表紙からなんとなく想像はできたけど、物凄く高価なエロ本だ」
阿左美が一言でそう表現した。
ただ、全裸ではあっても、辛うじて肝心な部分は手や長い髪の毛で隠されている。
ページを捲ると、次のページにも、さらにその次にも違う全裸の女性が描かれていた。
ポーズもそれぞれ違っており、立っていたり、横になっていたり、座っていたりするが、共通するのは、全員美人で、肝心な部分は隠れているというところだ。
「まあ、死の谷が大爆発しなくて良かった、良かった」
シラクサが微妙な感想を言う。
「これは、旧領主殿の趣味なのか?」
ヴァレリアンが眉間を右手の親指と人差し指で揉みつつ、そう言った。
「こんな高価な魔導書を封印するために、こんな遺跡まで作るなんて」
どこまで馬鹿で暇なの? と、シラクサの表情が語っている。
「技術的には凄いんだけどな」
真一だけは、一応感心していた。
「光を屈折させる魔術、いや、歪ませているのは視覚の方か。それにしても、どうやってそんな魔術を何百年も保持できているんだ? まあ、発動条件をページを捲った時に限定すれば、魔力の消費は最小限で済むだろうけど」
「うわぁ~、先生がエロ本を凝視してる」(阿左美)
「まあ、シンイチも男ってことね」(シラクサ)
「見損なったぞ、シンイチ殿」(ヴァレリアン)
「不潔です」(ミント)
随分な言われようだが本人は特に気にしていないようだ。
「フンッ、ネットを検索したら、この程度の画像、簡単に見られるぞ」(真一)
それもモロの奴を、と心の中だけで付け足す。
確かに、いくら立体的に見えても、肝心な部分が隠れ、さらに行為に及んでいない画像など、ネット世界では微エロにカテゴリーされる。
「ま、まて」
魔導書の内容が、予想していた物とかなり違っていたため、衝撃を受けていたビーデ シヨが正気に戻った。
「残りのページに文字が……」
彼が持っていた魔導書の白紙のページに、次々と文字が浮かび上がっていく。
「こ、これは、さらなる解除の方法……」
「さらなる? つまり、このエロ・・・・・じゃなくて魔導書には、まだ何か封印されているということですか?」
「その通りだ」
「ま、まさか?!」
このリアルに描かれた美女達は、実は生きている人間で、この魔導書に封じ込められているのかもしれない。
もし、それが本当なら、この魔導書を作った魔術師は、魔族よりもはるかに極悪ということになる。
当然、途方もない手間暇と金がかかるため、この地の領主が無関係ということはあり得ないだろう。
「本の中の女性は、全部で46人」
「それだけの人間を本に封じることなんてできるのですか?」
「通常、本に人間を封じたりはしない。魔族ならあり得るがな」
そもそも、人間の魂や意識を本に封じることはできても、肉体は無理だ。
つまり、もし本当にこの46人の美女達の魂がこの魔導書に封じられているのなら、肉体は大昔に朽ちていることになる。
「過去に、偉大な魔術師が、自分の膨大な知識を魂ごと魔導書に封じようとしたことがあった。そして、それは半分成功し、そして半分失敗に終わった」
「何か問題があったのですか?」
「魔術師の魂を知識ごと魔導書に封じることには成功をしたのだが、その後に……」
「後に?」
「その妻が、魔導書の前で息絶えている夫の身体を見つけて大騒ぎになってな。つまり、死んでしまったと思ったわけだ。そして、夫の肉体と一緒に遺品として魔導書を火葬してしまった」
「うわぁ~、事前に伝えていなかったのですか?」
「いや、一応『私は魔導書の中で生きる』と伝えてはいたらしいのだが、妻はそれを、死ぬほど魔導書を愛していると受け取ったらしいのだ」
「確かに、説明不足だとは思いますね」
「後日、魔術師の友人が、魂を魔導書に移すことに成功をしたのか確認に来て、妻が夫の身体と魂を燃やしてしまったことが発覚をした」
「それって、殺人になるの?」
阿左美がそう言うと、
「いいや、魔術師の魂が本当に魔導書に移っていたのか証明できなかったからな。公式には、何かの発作で急死したことになっている」
「それを考えると、46人もの人間の魂を本に封じるのって無理なのではないか?」
ヴァレリアンがそう言うと、ビーデ シヨが難しい表情で頷いた。
「普通に考えれば、46人の魂を封じるには46冊の魔導書が必要になる。もっとも最高品質の触媒や高度な魔法陣等を使えば、1冊で複数の魂を閉じ込める事も可能だが。」
それこそ国の財政が傾くレベルのお金がかかるが。
「では、残りのページに浮かび上がったのは、一体なんなのですか?」
真一が妙にウキウキしつつ、そう言った。
彼は化学の現役教師らしく、実は実験や検証が大好きなのだ。
「細部は分からん。ただ、この祭壇に封じられていた魔導書に関連していることだけは間違いない」
「…………」
全員が豪華な革張りのエロ本に注目する。
「確かめる方法は一つ」
ビーデ シヨが、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
「問題は、どこでそれをやるかだな」
彼の屋敷の地下には、魔導書を研究する工房がある。
そこでなら、何が飛び出しても大概のことには対処できた。
しかし、ここまで大掛かりな封印をされた魔導書である。最悪の場合は、彼の屋敷が丸ごと呪われたり、吹き飛んだり、大炎上したりする可能性があった。
対して、ここなら何があっても逃げれば、あとは知らぬ存ぜぬで逃げおおせる。
「よし、ここで封印を解こう」
「何か妥協か打算をしたな」
「万が一、この魔導書に封印されている46人が魔族という可能性もある。そのような物をフラーノの街の側で放つわけにはいかん」
まあ、それは正論である。
「では、やるぞ」
ビーデ シヨが、魔導書に浮かび上がった文字を何度も読み返し、そして大きく深呼吸をした。
「解除の方法は、呪文だ」
「良かった。さっきの悪趣味なのを、もう一回見せられるのかと思った」
阿左美がボソッとそう言う。
ビーデ シヨが、魔導書を持ち上げると、詠唱を始める。
それは英語とフランス語をミックスしたような、独特な発音だった。
美女達の絵が描かれた魔導書が、少しずつ輝き出す。
「物凄い魔力を感じます」
そう言ったのはミントだった。
「もし攻撃魔術なら、この遺跡が完全に破壊されるほどの威力になります」
「ま、まさか、封印が解けたらボッカァ~ンって爆発とかしないよね?」
阿左美がそう言いつつ、真一の背後に隠れた。
「それを確かめるには、このまま進めるしかない」
真一がそう言いつつ、チラッとエリチンの方を見ると、彼はさりげなくミント達の背後に立っていた。
いざという時は、彼女達の盾になるつもりなのだ。
ここに来てから一言もしゃべっていなかったので、存在感が皆無だったが、きちんと自分の仕事はわきまえている。
ビーデ シヨの詠唱が終わった。
魔導書を包む輝きはどんどん増していき、地下遺跡だというのに突風が巻き起こり、ページがバサバサとめくれ始めた。
まるで紙が破れるのではないかと心配になるほど、それは強かったが、頑丈に作られた魔導書は最後まで耐えた。
光が薄れ、風が収まっていく。
そして、一人の美女の絵のページで、それが止まった。
泉の水面から突き出した岩の上に足を揃えて腰を下ろし、豊かな胸の前で手を合わせたその姿は、まるで水の精霊のようだ。
ゴクッと、皆が唾を飲み込む。
その視線が集中する中で、パカッと両足と手が開かれた。
「…………」
恐る恐るビーデ シヨが手を伸ばし、ページを捲る。
すると、やはり先ほどとは少しだけ姿勢が変わっていた。
次のページ、さらに次と捲っていくが、どれも同じだ。
微エロが、全て18禁エロへと代わっている。
「ふ、ふ、ふ、ふざけるなぁ~!!」
ビーデ シヨの絶叫が、遺跡内に響き渡った。




