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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第3章 偽勇者となんちゃって勇者

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第61話 おっぱいと自爆装置 

【これまでのあらすじ】

 魔王が近々復活すると言う予言にしたがい、異世界召喚された女子高生勇者、早瀬 麻美と、その巻き添えとなった担任教師の眞壁 真一。

 2人は異世界で知り合った勇者神殿の神官ミント、マッチョエルフのエリチン、シーフのシラクサ、王国女騎士ヴァレリアンと共に、異世界で冒険者として旅を続けている。

 フラーノの郊外で暮らす魔導書研究家のビーデ・シヨから魔導書探索の依頼を受けた勇者パーティーは、依頼主を連れて魔導書が封印されている遺跡を目指す。

 そして、ついにその遺跡の奥で表紙に女性の胸の装飾が施された魔導書を発見したのだった。

第61話「おっぱいは自爆装置?」


12月4日


 魔界の中央にあるヴォルノー火山。


 溶岩の源流として太古の昔から噴火をし続けるこの山は、気候すら変えてしまう。


 魔界と人間界を隔てる城壁山脈のさらに北にある魔界は、極寒の地のはずなのだが、このヴォルノー山から流れ出す溶岩の川のおかげで、魔王城の周辺はとても過ごしやすい気温が保たれていた。


「夏は死ぬほど暑いけど、冬はちょうどいいよね」


「ホント、ホント、あったかぁ~い」


 スケルトンキングと氷の女王が、城のベランダから外を眺めつつ、そのようなことを言っている。


 ちなみにスケルトンキングとは、元は人間の偉大な英雄だったのだが、呪いで体は死んでも魂が身体に留まり続けたという魔族で、外見は立派な鎧兜を身に着けた骨格標本だ。


 相方の氷の女王は、雪女達の長で、相手が人間なら吐息だけで凍らせることができるという、危ない奴だった。


 ちなみに彼女は冷え性らしく、毎年冬になるとこの魔王城にやって来て、春まで滞在する。


 そしてスケルトンキングは、雪の中でウロウロしていると、関節に詰まった雪が凍って身動きできなくなった。


 以前、吹雪の中を歩いている時、身動きが取れなくなり、雪解けまで誰からも発見してもらえなかったことがあるらしい。


「そう言えば、今日もそろそろだな」


 骨しかないのにどうやって声を出しているのか謎なスケルトンキングがそう言うと、振り返った。


「そうね~、チビチビやるぐらいなら、一気にドバァ~ってやった方が楽でいいのに」


 その時、魔王城を震わせるような咆哮が鳴り響いた。


「ううっ、きつい……」


「これだから、ドラゴンってやっかいなのよ」


 それは、黄金竜シャドードラゴンの悲鳴だった。





「はい、終わりましたよ」


 ダークエルフの上級魔族デォマヌスが、手袋を外しつつそう言った。


 彼の前にはシャドードラゴンが蹲っており、シクシクと泣いている。


「ちょっと血を抜いただけだというのに、大げさな」


【言っておくが、ドラゴンの外皮は剣も魔術も跳ね返す。つまり、血を流すような怪我は滅多にせんのだ……】


 本人はグルルルと唸っているだけなのだが、その声は周囲の者達の頭の中に直接響いてくる。


「ですが、これで必要な量は集まったのでしょう?」


 そう言ったのは、半透明の巨人ゲインズ ラモンだった。


「そう、魔王召喚に必要な、ドラゴンの血がやっと揃った」


 召喚魔法の魔法陣を描くには、黄金を混ぜたドラゴンの血が大量に必要になる。


 人界に異世界から勇者が召喚されたことを知った魔界では、それに対抗するために、千年前に勇者ワルダスカーによって倒された魔王を復活させることにした。


 正確には、異世界に転生した魔王を、この世界に召喚するのだ。


 そして、そのためにドラゴンの長であるシャドードラゴンから、毎日ちょっとずつ血を抜いていたのだった。


【分かっておるだろうな。これで魔王召喚に失敗などしたら、我は暴れるぞ】


「召喚儀式に関して言えば大丈夫です。ただし、魔王様が転生をしていなければ、召喚は無駄になる」


 その召喚の儀式を担当するダークエルフのデォマヌスが、肩をすくめつつそう言った。


「そうですね。魔王様の転生に関しては、遺言でしかありませんから」


 魔王ボルテッカーが勇者ワルダスカーに倒された時、最後に辞世の句を歌った。


 その内容が、千年後に復活(転生)をするというものだったのだ。


 そして、それが今年だったりする。


「というわけで、暴れるなら人界で頼むよ」


【フンッ】


 シャドードラゴンが鼻を鳴らすと、デォマヌスとゲインズ ラモンが肩をすくめた。





12月4日


 魔導書が封印されている事を確認した真一達が遺跡の出口へ戻ってくると、入り口の広間でビーデ シヨ達が待っていた。


「外でじっとしていると寒かったので」


 ミントがそう説明する。


「それで魔導書はあったのか?」


「ええ、祭壇に封じられていました」


「そうか!!」


 いつも不機嫌そうな仏頂面のビーデ シヨが、嬉しそうに笑った。


「さあ、早く案内しろ」


「分かりました」


 そう答えてから、真一はエリチンへと近づいた。


「遺跡の入口を塞げるか?」


「植物でか?」


「時間稼ぎ程度で構わない」


「分かった」


 エリチンは外套の下でモゾモゾと何かをまさぐってから、手を外に出した。


 そこには植物の種が握られている。


「お前、その下はブーメランパンツ一丁のはず……まあ、いいか」


 種をどこに入れて持ち歩いていたのか、それは知らない方がいいだろうと判断したようだ。


 当の本人は全く気にした様子もなく、取り出した種を遺跡の入口付近にパッと蒔いた。


 そして、精霊魔術を発動すると、まるで早送り映像のような速度で植物が発芽して成長していく。


 スルスルと蔦が縦横に伸びて、遺跡の入口を覆い隠した。


「せ、精霊魔術か……初めて見た」


 ビーデ シヨが驚きつつそう言った。


 人間の魔術師が使う魔術と、エルフが使う精霊魔術は系統が全く違う。


 そして、人間の魔術師は数が少ないが、エルフは基本的に全員が精霊魔術を使える。


 その代わり、長寿ゆえにエルフの人口は人間に対して少ない上に、精霊は破壊行為を嫌うため、攻撃系の精霊魔術は少ないのだった。


 要は、あまり魔術で物を壊したり人を傷つけたりすると、精霊に嫌われて精霊魔術の威力が弱まったり、最悪の場合、使えなくなったりするのだった。


「ところで、何故出入り口を塞いだんだ?」


「昨日の宿屋で一緒になったパーティーを警戒しているだけです。あくまでも念のために」


「そういうことか」


 どうやらビーデ シヨも、偽勇者パーティーを胡散臭いと感じていたようだ。


 下手をすると、


「私を閉じ込めて、魔導書を自分達の物にするつもりか?!」


 と、疑われても不思議ではない状況だ。


 もっとも、そのような真似をすれば、真一達は冒険者ギルドから指名手配をされてしまうのだが。


「終わった。もし誰かがこの蔦を切れば、俺がすぐに分かる」


 出入り口が完全に塞がると、エリチンがそう言った。


「よし、それでは行くぞ」


 ビーデ シヨが鼻息荒く、遺跡の奥を目指して歩き始めた。


 真一達が慌ててそれを追いかける。


 この遺跡は規模自体はそれほど大きくないし、ほとんど一本道だ。


 獣が隠れている可能性はない上に、罠も調べ尽くされているため、依頼人が先頭でも特に危険はない。


 ビーデ シヨに付き従っていたウッドゴーレムが、発光の魔石が埋め込まれたランタンを取り出すと、それが光り出した。


 松明よりもかなり明るく、持ち主の魔力が切れない限り光り続けるという便利なアイテムだが、かなり高価な代物だ。





「その右手の大きな岩の影に隠し通路があります」


 真一がそう言うと、ビーデ シヨはウッドゴーレムが持っていたランタンを取り上げて、自分で岩の影を照らした。


 確かにそこには、人が屈んで通れるぐらいの大きさの入口がある。


「なるほど」


 彼はそう呟くと、中へと入って行った。


 中は真っ暗で、冒険者ではないビーデ シヨなどからすれば、かなり不気味なはずなのだが、魔導書に近づいて興奮しているのだろう。彼はズンズンと進んで行く。


「確かに、ここは今までの場所と造りが違うな」


 洞窟の壁を削って作られていた通路から、石を敷き詰めたものに代わり、彼もそう感じたようだ。


「どうやら、この部分は後から付け足されたようだ」


「それって、どういう意味?」


 彼の独り言に、阿左美がそう問いかける。


 普段なら無視をされていただろうが、興奮しているせいだろうか、ビーデ シヨが解説を始める。


「この遺跡自体は、大昔の集落に住んでいた人達が信仰の場として作ったものだ。他にも外敵から身を守ったり、食料などの保存場所としても使っていたかもしれん。そして今いる、この隠し通路は、それからかなり後になって掘られたものだ」


「魔導書を封印するために?」


「それは分からん。もしかしたら、さらに隠し通路や部屋があるのかもしれんからな。ただ、先ほどまでの洞窟が千年以上昔の遺跡だとしたら、ここはせいぜい数百年程度だ」


 数百年でも立派な遺跡だが、歴史的価値などあまり認められていないのかもしれない。


 真一達の世界でも、古代の王の墓がその後盗掘され、空っぽになっていることがよくある。


 現在の人間からすれば、物凄い歴史的価値がある物でも、当時の人達にとっては、単なるお宝でしかないわけだ。


 恐ろしいことに、エジプトのミイラなど、根拠は全くないが、とりあえず体に良さそうだからという理由で、粉にして薬として売られていたぐらいだ。


「実は、お前達が屋敷に来る前に、この土地について調べていた」


 猟師から封印された魔導書の話を聞き、冒険者ギルドに依頼を出してから二カ月近くたっている。


 その間、彼はただ待っていたのではなく、色々と下調べをしていたのだった。


「今は、この付近はフラーノの街ともども国王の直轄領になっているが、三百年前まで一人の貴族の領地だった」


 魔族との最前線であるこの付近は、千年前の魔族侵攻時に活躍をした将軍に、恩賞として与えられた。


 領民から税を得る代わりに、絶えず魔族に目を光らせておけということだ。


 その将軍は戦だけではなく、統治者としても優秀で、死の谷の城塞の側にフラーノの街を作り、経済を発展させるとともに、気候の厳しい城壁山脈の麓を開拓させていった。


 魔族の脅威と厳しい気候のため、人口はなかなか増えなかったが、それでも時間をかけていくつもの村が生まれていく。


 軍勢や兵糧の移動を速やかにするために、街道も整備したし、要所に小さな砦がいくつも建てられた。


 魔王が倒されてからしばらくは、順調に発展をしていたのだが、その後、平和な時代が続くと、だんだんと緊張感が薄れてきた。


 そして、最初は武門の家柄として有名だったこの地の領主も、だんだんと余計なことを考えるようになり、散財をするようになる。


 その結果、三百年前にこの領地は経済が破綻をし、国王によってお取り潰しになったのだった。


 魔族との最前線が不安定になることを避けるために、取り上げられたわけだ。


「おそらく、この魔導書のある通路は、その領主の時代に作られた物だろう」


「それって……何だか危なくない?」


 ビーデ シヨの説明を聞いて、阿左美が真一に小声でそう言った。


「武将の領主の魔導書か……」


「そうそう、対魔獣や魔族用の超強力な魔術が書かれているとか」


「あの表紙で?」


「何を言ってるのよ先生、おっぱいって女にとっては立派な武器だよ」


「確かに、対人間の男にとってはそうかもしれんが、相手は魔獣や魔族だろ?」


「魔族にだって巨乳好きとかいるかもしれないじゃない」


「それは分からんが、何だか嫌だな、それ」


「甘いわよ」


 二人の会話にシラクサも加わる。


「もっと危ない代物かもしれないよ」


「実は貧乳好き?!」


「いや、胸の大きさじゃなくて……」


 シラクサがコホンと咳払いをしてから、話を続ける。


「実は、フラーノの街で情報収集をしている時に、こんな噂を聞いたの」


「どんな?」


「千年前みたいに魔族が再び死の谷を通って人界に侵攻をしてきた時、そして門(城塞)でそれを防ぎきれそうになかった時……死の谷の両側の崖を崩して谷を塞ぐ仕掛けがされているって」


「それは初耳だぞ」


「ごめん、いくら何でも無茶苦茶すぎるから、てっきり嘘だと思って」


「確かに、死の谷を土砂で塞ぐほどの爆発となると、半端な魔術では無理だ……なるほど、大規模魔道、つまり魔法陣か」


「まあ、予想以前の妄想だけどね」


 要は、ここに封じられている魔導書は、魔族が再侵攻してきたときの自爆スイッチかもしれないということだ。


 まだ、この地の領主が緊張感を持っていた時代、フラーノの城塞が陥落した時に備えて、死の谷を封鎖する最終手段として、城塞から少し離れたこの地にそれを封印しておいた。


 途方もない話ではあるが、あり得ない話でもない。


「でも、その表紙が……おっぱいなの?」


 阿左美がそう言うと、真一とシラクサが、それなんだよなぁ~と頷き合った。

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