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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第3章 偽勇者となんちゃって勇者

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第54話 情報収集

これまでのあらすじ】

 魔王が近々復活すると言う予言にしたが、異世界召喚された女子高生勇者、早瀬 麻美と、その巻き添えとなった担任教師の眞壁 真一。

 2人は異世界で知り合った勇者神殿の神官ミント、マッチョエルフのエリチン、シーフのシラクサ、王国女騎士ヴァレリアンと共に、異世界で冒険者として旅を続けている。

 フラーノの郊外で暮らす魔導書研究家のビーデ・シヨから依頼内容の説明を受けた彼等は、その準備の為に一度フラーノの街へ戻ったのだった。

 魔導書捜索依頼について説明を受け、ビーデ シヨの屋敷からフラーノの街に戻って来たのは、ちょうど昼頃だった。


 阿左美が、お腹が減ったと言って騒ぎ出す前に昼食をとると、午後からの行動を決定する。


「情報を集めよう」


 食後のお茶を飲んでいると、真一がそう切り出した。


「何の?」


「色々だ」


 彼がそう言うと、全員の顔を見回す。


「まずは、あらゆるものを疑ってみる」


「それって、魔導書のことですか? それともビーデ氏のことですか?」


 ミントがそう言うと、真一は首を左右に振った。


「すべてだ。俺達は、この街や魔導書について、あまりに知らなすぎる。もちろん、依頼主についてもだ。だから、昼からは旅の準備をしつつ、情報を集める」


「さすがは先生、性格が捻くれているから、誰も信用していないんだね」


 阿左美が明るい笑顔でそう言うと。


「そんな事はないぞ、俺は皆の事は信用している、お前以外はな」


 と爽やかな笑顔で返した。


「ひっどぉ~い!!」


 そう言って膨れる彼女を無視して、真一が全員の顔を見まわす。


「シラクサは、この街とその周辺で最近起きた事件や噂を調べてくれ」


「分かった」


「特に、魔導書が絡む情報が欲しい。次にヴァレリアン」


「何なりと」


「ヴァレリアンは城塞へ行って、魔族についての情報を集めて欲しい」


「城塞でか?」


「騎士なら入れるだろう」


「確かに」


「次にエリチンは、街の外に出て森を調べてくれ」


「何を調べるんだ?」


「魔族や魔獣の痕跡、あと戦いの跡とかだ」


「分かった」


 一応中身はエルフであるエリチンは、植物達から色々な情報を集めることが出来るのだ。


「ミントさんは、この街にある神殿で、同じく情報収集を頼む」


「分かりました。確か、この街には戦の神殿があったはずです」


 さすがは最前線の街と言うべきだろう。


「早瀬は俺と一緒に市場で情報を集める」


「市場?! 喜んで!!」


 拗ねていた彼女の機嫌が一瞬で治る。


「買い食いが目的じゃないぞ」


「でも、商品を買った方が、色々と教えてくれるかもしれないよ、先生」


「そこは状況次第だ」


 こうして、全員が行動を開始したのだった。




 ヴァレリアンは、フラーノの街の北の端へと来ていた。


 彼女の目の前には、無骨としか表現のしようがない、巨大な城塞が建っている。


 高い城壁と見張り用の塔が、死の谷を塞ぐように築かれていた。


 街の南門は、日中はずっと開放されているが、こちらの門は千年近く固く閉ざされている。


 次に開かれる時は、人間達が魔界へ攻め込む時か、その逆のどちらかだと言われていた。


「何者だ?」


 彼女が城塞へ近づくと、完全武装の兵士に誰何された。


 さすがは最前線を守る精鋭と言うべきだろう。目つきも動作も機敏だ。


「私は、王国騎士のヴァレリアン ホルセットと申す」


 彼女は防寒用の外套を脱いで、鎧を見せた。


 胸甲には、王都の騎士団の紋章が着けられている。


 現在、彼女は騎士を休職中だったが、身分を剥奪されている訳ではないので、この行為には問題はない。


「王国騎士殿でしたか。失礼いたしました」


 美しくて若い女騎士に槍の穂先を向けていた兵士が、それを収めて姿勢を正す。


「何か御用ですか?」


 王国の騎士は、必ずこの城塞で数年勤務をしなければならない決まりがあった。


 しかし、その時には各騎士団が発行する命令書を携行している。


 騎士になって間もない彼女は、まだこの城塞で勤務をしていない。さらに言うと、命令書も貰っていなかった。


 そこで、


「実は、任務でこちらに来たので、ついでに城塞を見学させてもらおうと思ったのだ。いずれ正式に赴任するのだからな」


「そうでしたか。少しお待ちください。隊長に知らせてきますので」


 いくら相手が王国騎士とはいえ、下端の兵士の判断で勝手に中に入れることは出来ない。


 彼は、同僚にこの場を任せると、自分は上官の元へと走って行った。


「皆、真面目に任務を果たしているのだな」


 残った兵士にそう言うと、


「大陸の平和の要となる砦ですので」


 誇らしげに胸を張ってそう返事をされた。


 この城塞で勤務をしている兵達の士気は高く、皆、誇りを持って勤務をしているということだろう。


「ところで、最近、魔界側の様子はどうなのだ? 何かおかしな動きとかは無いのか?」


 彼女にそう聞かれて、兵士が少し考え込んだ。


「これといって何も」


 毎日、城壁や見張り塔から死の谷を見張っているが、実を言うと、誰も魔族など見たことがないのだ。


 たまに魔獣が迷い込んでくることがあるが、高い城壁を越えることが出来ず、しばらくウロウロとすると北へと帰って行く。


「魔獣の中には、空を飛べるドラゴンなどもいると聞いたが」


「この砦には、魔術師もいますし、大型の武器も揃っていますから」


「そうか」


 ドラゴンは知能が高いので、そのような危険な場所には近付いて来ないということだ。


 その時、上官に許可を貰いに行っていた兵士が、駆け足で戻って来た。


「隊長が直接案内をしてくださるそうです」


「えっ? それは何というか、申し訳ないな」


「兵士達と違って、指揮官は暇だからな。気にするな」


 そう言いつつ、兵士の後から一人の騎士が姿を現した。


 屈強な体躯の大柄な男で、ヴァレリアン同様、鎧には騎士団の紋章が装飾されている。


「ほぅ、確かに美人だな。これは役得と言えるだろう」


「ヴァレリアン ホルセットと申します」


「俺はガウス。十人いる、この砦の守備隊長の一人だ」


 彼はそう言うと、胸を反らせてニカッと笑った。


 うわっ、私の苦手な(脳筋)タイプだ。


 そう感じたが、黙っておく。




 真一達がビーデ・シヨの屋敷を訪れる二カ月前。


 猟師が満面の笑みを浮かべて、自分の家を目指して歩いていた。


 先日、狩りの途中で偶然見つけた遺跡の奥の祭壇。


 そこには魔導書が埋め込まれており、持ち帰ることができれば、大金が手に入ったはずだった。


 しかし、封印が施されており、魔術師でもシーフでもない彼には、どうすることもできなかった。


 その時、彼はフラーノの街の近くに、魔導書を集めている金持ちが住んでいたことを思い出したのだった。


 封印を解くことができないなら、せめて情報だけでも売ってやろう。


 彼はそう考えると、ビーデ・シヨの屋敷に向かった。


 ネズミに財布を盗まれて、そのまま家に帰れば嫁に半殺しにされるというのも、理由の一つだったが。


 魔導書の相場など見当もつかないが、金貨十枚。


 これが彼なりの最低ラインだった。


 現物がないというのに、我ながら欲張りすぎかとも思ったが、それだけあれば新しい弓を買い、さらに春まで家で毎日酒を飲みながらのんびりできる。


 冬の狩りは命がけなのだ。


 とりあえず彼が知る一番高価な物、それは良質な霜降り肉で有名なフラーノ牛一頭分だったので、それを目安に交渉するつもりだった。





 魔術師にして魔導書のコレクター兼研究者であるビーデ・シヨ氏は、見るからに気難しそうな老人だった。


「これは門前払いだな」


 自分とは正反対なタイプだと感じた彼は、初対面でいきなり諦めた。


 信じてもらえず、散々馬鹿にされて追い返されるのが関の山だ。


 あ~、来るんじゃなかった。


 そのようなことを考えつつ、とりあえず自分が偶然、封印されている魔導書を見つけたと伝えた。


「フンッ、猟師に魔導書かどうか分かるはずがない」


 予想通り、鼻で笑われてしまった。


「で、でも旦那様、祭壇に埋め込まれていて、どうやっても取れなかったんですよ」


「それが本物なら、罠やガーディアンがいるはずだ。つまり、お前が生きてここにいるという時点で、偽物だという証拠だ」


「ハァ~、やっぱりか」


 見つけたのが冒険者とかなら少しは信じてもらえたかもしれないが、魔術はもちろん、魔導書など見たこともない猟師の言うことなど、信じてもらえるわけがない。


 魔術で黒焦げにされる前に、退散しようとした時、彼がボソッと呟いた。


「そうだろうなぁ、表紙におっぱいがついた本が魔導書なわけないよなぁ~」


 その瞬間、偉そうにソファーに踏ん反り返っていたビーデ・シヨが、バネ仕掛けの人形のように立ち上がった。


「な、なんだと?」


「す、すいません!!」


「今、何と言った?!」


「表紙におっぱいが付いていたって……」


「分かった。その情報を買おう。金貨二十枚でどうだ?」


「に、二十枚?!」


「あと、この情報を絶対に他人に漏らさないと約束するなら、さらに十枚足そう」


「さ、三十枚?!!」


 それだけのお金を貯めようと思ったら、いったい何匹の鹿や猪や熊を狩らなければならないか。


「も、もちろんです。旦那様以外の誰にも決して話しません」


「良いだろう。ただし、保険は掛けさせてもらう」


 そう言うと、ビーデ・シヨは執事を呼んだ。


 そして、金貨三十枚と一冊の魔導書を持って来させた。


「この魔導書は、昔の女貴族が愛人の男の浮気防止のために呪いを封じた物だ」


「えっ?」


「もし、お前が私との約束を破ったら、この呪いを解き放つ。そうなれば、お前は異性に近づくだけで股間に激痛が走り、悶え苦しむことになるぞ」


「ええっ?!」


「なぁに、簡単なことだ。誰にも言わなければ良いだけなのだから」


 股間に呪いをかけられるのは恐ろしかったが、それよりも金貨三十枚の魅力には敵わない。


 彼は、自分が魔導書を見つけた遺跡と、その細かい位置を教えたのだった。





 ホクホク顔で家路を急ぐ猟師。


「このまま帰ったら、全部嫁に取り上げられるな」


 ベルトに挟んだ三十枚の金貨が入った財布をポンポンと叩きつつ、そう呟いた時。


 彼の前に、一目で格闘家と分かる男が立ちはだかった。


「随分と楽しそうだな、猟師さんよ。よほど獲物が高く売れたようだ」


 両手を合わせて拳をポキポキと鳴らしつつ、その格闘家風の男が言った。


「だ、誰だ、あんた?!」


「分からないのか? これだけ分かりやすく表現してやっているのに」


 分からないはずがない。


 金を出せ、さもないとボコるぞ、と全身で表現しているのだ。


 冗談じゃない。


 こんな大金、二度と手に入らないぞ。こんなところで取られてたまるか!!


 猟師は背中に背負っていた弓と矢を取り出すと、構えた。


 生まれてこの方、人間相手に矢を向けたことなどなかったが、この三十枚の金貨は、命をかけて守るだけの価値がある。


 今、戦わずして、いつ戦う!!


「良い度胸だ。ただ、俺は熊より強い魔獣を何匹も退治してきた強者だぞ」


 格闘家がそう言いつつ、身構える。


 その時、睨み合う二人の間で炎が弾けた。


「魔術?!」


 二人が同時に叫んだ。


「こんな日の高い時間に出没するとは、野盗にあるまじき行為じゃな」


 そこへ、さらにもう一人、老魔術師が姿を現す。


「何者だ、ジジィ!!」


「うるさい奴じゃな。歳はとっていても、そこまで耳は遠くなっておらんぞ」


「良いから答えろ?!」


「ワシのことなどどうでも良い。さあ、出番ですよ」


 老魔術師がそう言うと、長身の女戦士がゆっくりと歩み出てきた。


 銀色の髪が特徴的で、高価そうな鎧を身に着け、片手剣と小型盾を持っている。


「あ、あなた様は?!」


 すると、それまで不遜な態度を取っていた格闘家が、急に怯えだした。


「えっ、あの人って有名人なの?」


「ま、まさか、お前はあのお方を知らないのか?」


「まぁ、すまんけど全然」


「あのお方こそ、勇者ワルダスカーの子孫にして、その血脈を受け継ぎし者、勇者ライディーン様だぞ!!」


「へぇ~」


「む、無理だ。絶対に勝てない」


「命だけは助けてやる。早々に立ち去れ」


「あ、ありがとうございます。美人な上になんて心が広いお方なんだ」


 そう言うと、格闘家は一目散に逃げだした。


「……」


 何だったんだ、今のは?


 猟師が呆然と立ち尽くしていると、勇者ライディーンと老魔術師が近づいてきた。


「怪我はないか?」


「は、はい。おかげさまで助かりました。ありがとうございます」


「それは、良かった」


 そう言うと、老魔術師が笑みを浮かべながら、こう切り出した。


「ところで、助けられたら礼をするのが人として当然とは思わんか?」

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