第51話 村人達からの依頼
【これまでのあらすじ】
魔王が近々復活すると言う予言にしたが、異世界召喚された女子高生勇者、早瀬 麻美と、その巻き添えとなった担任教師の眞壁 真一。
2人は異世界で知り合った勇者神殿の神官ミント、マッチョエルフのエリチン、シーフのシラクサ、王国女騎士ヴァレリアンと共に、異世界で冒険者として旅を続けている。
アバトの街の冒険者ギルドで”魔導書探索”の依頼を受けた勇者パーティーは、依頼人がいる人間界最北の街フラーノに到着する。
そこで、偽勇者パーティーの噂を耳にするのだった。
日が暮れて気温が一気に下がったため、真一達は冒険者ギルドへ戻ってきた。
食堂では、夕食を食べたり、飲酒をしたりしている他の冒険者が何組かおり、テーブルは三分の一ほど埋まっている。
さらに、先ほどの三人の村人の姿が、依頼受付カウンターの方に見えた。
「はぁ~、お腹減ったぁ~」
暖房が効いた屋内に入るなり、阿左美がそう言ってテーブルに駆け寄って座る。
「お前という奴は……」
一時間ちょっと前に食事をとり、さらにその後、街中を歩きながら買い食いしまくっていたばかりだというのに、と真一が呆れ返る。
「でも、身体が冷えたから暖かい物が飲みたいわね」
「うむ、私もシラクサ殿に賛成だ」
「私もです」
女性メンバーの意見が一致したため、真一はエリチンの方を見て、
「とりあえず、今日はゆっくりするか。エリチンもそれでいいか?」
と聞いた。
「私は、もう少し外で筋トレをしてくる」
「そうか」
巨漢エルフが外へ出ると、残りのメンバーはテーブルにつき、それぞれ好きな飲み物を注文した。
あと、阿左美はさりげなく、軽食も頼んでいる。
そして、それが届き、皆が談笑しながら口をつけていると、
「頼むから、何とかしてくれよ」
「頼むと言われてもなぁ」
依頼受付カウンターの方から、男達が問答する声が聞こえてきた。
「あの人達、さっきの……」
ホットハチミツ酒をチビチビと飲んでいた阿左美が、声のする方に顔を向けた。
「門のところで会った三人だな」
「何かもめているようですね」
ヴァレリアンとミントもそう言う。
自然と全員が依頼受付カウンターの方に注目する。
「だから、あんた達が言うような連中は冒険者ギルドに登録されていないんだよ。だからギルドとしては、何もできないんだ」
「あれだけ目立つパーティーなのに?!」
「えっと、勇者を名乗る若い女に、老魔術師と治癒術士、あと格闘家だっけ? そもそも勇者を名乗る馬鹿が、冒険者にいるわけがないだろう。誰がそんな頭のおかしい奴に依頼を出すんだよ」
三人の村人の相手をしているのは、真一達の対応をした男性職員だ。
確かに彼が言う通り、この世界では勇者は歴史上の英雄だ。
当然、その子孫はこの大陸のどこかにいるはずだが、その名を騙る偽物の方が圧倒的に多いため、復活した勇者とか、勇者の血脈とか、勇者の後継者などと名乗る者は、イコール、詐欺師か、ただの目立ちたがりということになっていた。
間違っても、信用が第一の冒険者が、酔っていない状態で名乗ったりはしない。
「どうにかして欲しいなら、ギルドに依頼をしてもらうしか……」
「あいつらに脅し取られて、金なんか残っていないよ!!」
「だったら、砦の方の兵隊に……」
「それが無理なことは、あんたも分かっているだろうが」
フラーノの城塞に詰めている軍隊は、魔界との最前線を守ることを第一の任務としている。
そのため、よほどのことがなければ砦を離れることはなかった。
これが魔獣が城壁山脈を越えて村を襲っているとか、山賊が洞窟に住み着いたとかいうなら話は別だが、勇者を騙る連中がウロウロしているぐらいでは絶対に無理だ。
まあ、かなり胡散臭いが、魔物を退治して、その代償をかなり強引に求めてはいるが、今のところ死人はもちろん、怪我人も出ていないようだし。
「先生、先生、来たよ、来た。お約束の偽物勇者イベントだよ」
確かにゲームやアニメでは鉄板ネタである。
正義の味方である勇者の偽物が現れ、勇者の知名度を悪用したり、逆にそれを貶めるために悪逆の限りを尽くす。
「お前も、なんちゃって勇者だろうが」
「ち、違うよ。私は本物の異世界召喚勇者」
「偽物勇者より、よっぽど胡散臭いな」
「ひっどぉ~い!!」
「あ、あの真一様、私達で何とかすることは?」
「ミントさん、さっきも言った通り、俺達はすでに依頼を受けている」
「しかし真一殿、目の前に困っている人達がいるのだぞ」
「ヴァレリアンまで……」
「ねえ先生」
「なんだ、早瀬」
「やっぱり本物の勇者パーティーとしては、困っている村人達を見捨てるのは良くないと思うんだけど」
「…………」
真一がシラクサの方に目を向けると、彼女は苦笑いを浮かべつつ肩をすくめた。
困った人を助けることが務めの神官であるミント、忠義と正義を守る騎士であるヴァレリアン、そして重度のゲームオタクである阿左美。
彼女達にとって、このシチュエーションは、村人を助ける以外の選択はないのだ。
その点、現実的で、いざという時には冷静な判断を下せるシーフであるシラクサは、本当はどうするべきか分かっているのだが、今は面白がって、あえて正論は言わない。
「フゥ、ここにエリチンがいても、結果は同じか」
彼は、筋トレと森林保護以外には一切興味を示さない。
「分かった。俺達の依頼を遂行しつつ、空いた時間で情報を集めて、そしてついでで良ければ解決をしてやろう」
「えっ、良いの?」
「良いわけあるか。これは完全なタダ働きだぞ。俺達にそんな贅沢が許されると思っているのか?」
せめて冒険者ギルドからの依頼であれば、成功報酬が見込めるが、今回はそれがないのだ。
あえて言うなら、被害に遭った村と直接交渉をすれば何とかなるかもしれないが、どうやら偽勇者パーティーによって金銭的にかなりの被害を被っているようだ。そのような人達から、さらに報酬をもらうのは難しいだろう。
そもそも、それが払えるのなら、最初から冒険者ギルドに依頼をしているはずだ。
「とりあえず、詳しく話を聞くとするか」
真一がそう言うと、受付で揉めている三人の村人達の方に目を向けた。




