↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第1章 召喚女子高生勇者(笑)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/93

第5話 初めての依頼

【これまでのあらすじ】

 勇者として魔王が復活する直前の世界に召喚された女子高生勇者 早瀬阿左美と、その巻き添えとなった教師 眞壁真一、そして二人の付き添いとして勇者神殿から派遣さることになった神官ミント・アンジー。

 3人の冒険の旅の最大の障害は金欠だった。

 生きていくために3人は冒険者ギルドで依頼を受けることになる。

「先ほど言った方針を変更する」


 すっかり軽くなってしまった財布を握りしめつつ、真壁真一がそう切り出した。


「うっ、嫌な予感」


 それを聞いて、早瀬阿左美が身構えつつ半歩後ずさる。


「どのように変更されるのですか、シンイチ様?」


 そう応じたのはミント・アンジーだ。


「まずは、今すぐクエストを選択する」


「今からですか?」


「そうだ。条件はここから近いこと。さらに、戦闘はせずに、少しでも報酬が良いことだ」


「それはまた随分と……」


「ああ、分かっている。とりあえず、今の条件で探すぞ」


 そう言うと、真一は壁一面に貼られている依頼書を片っ端から読み始めた。


「先生、先生、これなんか良いんじゃない?」


「却下だ」


「見もせずに即答?!」


「お前が選んだものが、まともなはずがない」


「せ、せめて見てから言ってよ!!」


 そう言うと、阿左美が依頼書を剥がして彼の顔の前に突き付けた。


「新薬の被験者募集中。1週間、毎日薬を投薬し、人体への影響を観察する。報酬、生きていたら金貨3枚」


「どう? 凄いでしょ。一人金貨3枚、3人なら9枚だよ!!」


「ちょっと待て、何の新薬だ?」


「えっと、新しい毒消しだって」


「つまり、まず毒を飲まされて、その効果を打ち消す新薬の試験をするわけだな。そうか、頑張れよ」


「ち、ちょっと、ちょっと待って先生!!」


「安心しろ。お前なら致死量の毒を飲んでも、下痢ぐらいで済むだろう」


「済まないから、私、死んじゃうから!!」


「下痢ぐらいで死ぬわけないだろう」


「そうじゃなくて、ごめんなさい、私が悪かったです!!」


 なお、阿左美が勇者神殿の地下で受けた勇者装備の加護の中には、毒を無効化するものもあったのだが、彼らはその事をまだ知らなかった。


 阿左美が依頼書を元の位置に戻すと、泣きながらさらに次を探し出す。


「あ、あの、シンイチ様、これはどうでしょうか?」


 今度はミントがそう言って、1枚の依頼書を差し出してきた。


「どれどれ」


 それを受け取ると、真一はじっくりと読み始める。


「対応が私の時と違いすぎる!!」


「うるさい!! 牧場の夜の見回りか……場所は隣村で……報酬は一晩、銀貨10枚。これは人数割りじゃないな。悪いが、


 一人でやるなら有りだが、3人でこの報酬だと少なすぎるな」


「やはりそうですか」


「目の付け所は悪くない。他に良いのがなかったら、受けるのも有りだろう」


 ただし、真一はできれば3人でできる依頼を受けたかった。


 なんせ、彼と阿左美はこの世界に来たばかりなのだ。


 ミントと離れるのは危険すぎる。


 その時、真一の目が一枚の依頼書で止まった。


「これは……」


「何、何、受け狙いなのあった?」


「誰もそんなものは狙っていない」


 そう言いつつ、依頼書を剥がして端から端までしっかりと読む。


「依頼内容は立ち退きの説得。場所はここから北に20kmほど行ったところにあるトリア村か……報酬は説得に成功した場合のみで、銀貨20枚。悪くないな」


「説得って……誰を?」


「トリア村と言えば、側にエルフが住む森があったはずですけど」


「ああ。そのエルフに森から出て行ってほしいそうだ」


「ええっ?! エルフと言えば、森の番人と呼ばれているのですよ。出て行くなんて考えられませんけど」


「しかし、これなら口先だけで何とかなる」


 真一はそう言うと、その依頼書を持って、受付に座っているジュレ・マリーゼに差し出した。


「これを受ける」


「畏まりました」


 彼女はそう言うと、その依頼書にバン! バン! と大きなスタンプを押した。


 一つは勇者神殿支部のスタンプで、もう一つは依頼を受けたことをギルドが承認した証だ。


「では、依頼を達成した場合は、これを燃やしていただければ結構です」


「燃やす?」


「はい。こちらに写しがありまして、依頼書が燃やされると、色が変わるようになっています」


「なるほど。いちいちギルドまで報告しに来なくても良いわけだな」


「はい。ただし、不注意や戦闘などで燃やしてしまった場合は、速やかに報告をお願いします。それと、依頼を達成していないのに勝手な判断で燃やした場合は、ペナルティーがあります」


「そのペナルティーとは?」


「罰金です。これは依頼に対する報酬の10倍の金額を払っていただきます」


「10倍か……依頼人への謝罪金も含まれているわけだな」


「はい、おっしゃる通りです。あと、違反の内容によっては冒険者としての資格停止、さらに取り上げもあります」


「分かった。失敗は仕方がないとして、嘘をついて誤魔化さなければ良いわけだな」


「その通りです」


「では、行くぞ」


 真一がそう言うと、ギルドの出口へ向けて歩き出した。


「せ、先生、まさかこのまま?」


「当たり前だ。今夜は徹夜で移動して、明日の朝一番で依頼人に会うぞ」


「ええ~っ、嫌だよ、そんなの?!」


「反論は許さん。もう明日の宿代もないんだぞ」


「ううぇ~」


 そう言うと、真一が彼女の腕を掴んでズンズン歩いて行く。


「では、行って参ります」


 最後にミントがジュレに頭を下げ、それに続いた。


 

 幸いなことに、今夜は天気が良く、月と星明かりのおかげで足元がはっきりと見えた。


 とりあえず、真一も阿左美も土地勘などさっぱりないので、ミントに案内をしてもらう。


「エルフは森の番人と言っていたな?」


「はい。森の木々がよく育つように手入れをしてくれます。そのおかげで水源が守られたり、動物がたくさん住めるのだそうです」

歩きながら、真一はミントに質問をしていた。


「トリア村の側の森に住むエルフは有名なのか?」


「そうですね。1000年前、魔王と勇者様が戦った頃から森で暮らしているはずです」


「それは同じエルフなのか?」


「はい。一人で暮らしていますから、代替わりはしていないと思います」


 先ほどからあやふやな回答ばかりだが、どうやらそのエルフは森から全く出てこないらしい。


 そのため、実際に姿を見た村人もいないのだった。



「もしかしたら、どこかに引っ越している可能性もあるんじゃないか? 一人が寂しくなってエルフの国に行ったとか?」


「もしそうなら、村人が気付いているはずです。エルフは自分が住んでいる森に結界を張りますから、それが残っている間は、住み続けているという証拠です」


「これは、思ったよりも厄介そうだな」


 1000年以上も森に引きこもっているエルフを説得できるだろうか?


 そもそも、一人でそんな長い年月を過ごしたら、言葉を忘れている可能性すらある。


 さすがの真一も、コミュニケーションが取れない相手を説得する自信はなかった。


「せんせぇ~」


 その時、それまで二人から少し遅れてついて来ていた阿左美が、不満の声を上げ始めた。


「何だ?」


「眠い~、お腹減った~」


「ちょっと待て、晩飯を食べてからまだ2時間しか経っていないぞ」


 なお、阿左美は勇者装備の加護をうけているため、疲労軽減の効果を受けている・・・・・はずだ。


「そんな些細なことはどうでも良いから、休憩しようよぉ~」


「お前な」


 この世界の気候も、日本で言うところの秋のような感じだ。


 つまり、夜になればかなり気温が下がり、じっとしていると寒い。


 休憩するなれば、焚き火の準備をしなければならないだろう。


「我慢しろ」


 そんな暇があれば、一気に目的地まで進んだ方が良い。


「でも~」


「フゥ、分かった。すまないが、ミントさん、この馬鹿の荷物を持ってやってくれ」


 阿左美と違い、ミントはまだ余裕がある。


 真一は阿左美の鞄を彼女に預けると、自分は阿左美に背中を向けてしゃがみ込んだ。


「えっ?」


「えっ? じゃない。背負ってやるって言ってるんだ」


「ええ~っ?! 先生のスケベ!!」


「そうか。じゃあ、黙ってついて来るか、一人で神殿まで戻るか、好きな方を選べ」


「嘘です、おんぶして下さい!!」


 瞬間移動のような勢いで真一の背中に飛び乗る阿左美。


「あ、あの、シンイチ様、まさかアザミ様を背負ったまま、トリア村まで行くのですか?」


「行けるところまでな」


「ハァ~、楽ちんな上に温かい」


 この後、3分もしない間に阿左美は真一の背中で熟睡し始めた。


「こ、こいつ、寝たら急に重たくなりやがった」


 人間は寝てしまうと全身の力が抜けるので、そう感じるのだ。


「あ、あの、シンイチ様、質問をしてもよろしいでしょうか?」


「構わないが」


「アザミ様は、シンイチ様のことを先生とお呼びしていますけど、一体何の先生なのですか?」


「少し説明がややこしいが、俺たちの世界では、子供は全員、学校というところで教育を受けるんだ」


「全員ですか? 貴族やお金持ちだけではなく?」


「ああ、そうだ。俺はその学校で教師をやっていて、こいつは俺の教え子だ」


「素晴らしいですね」


「この世界では、子供は金持ち以外は教育を受けていないのか?」


「そうではありませんけど、村や町で博識なお年寄りが、子供たちを集めて読み書きを教えています」


 江戸時代の寺子屋のような感じか。


「ですから、貧しい村などでは、子供も働かされるので、なかなか勉学がはかどりません」


「なるほど」


「そして、ある程度の年齢になり、才能があると、職人が通う学校やギルドなどで学ぶことができるようになります。村によっては、将来のことを考えて皆でお金を出し合って、優秀な子供を送り出したりしています」


「そして、一番手っ取り早いのが神殿というわけだ」


「はい。学費がただですから。あと、学費という面では、兵隊になると給金がもらえる上に、ある程度の教育と技術を身に付けることができます」


「兵士にとっての技術……武器を使った戦い方や、応急処置などだな」


「はい。ですから、貧しい家では、子供を積極的に兵役につかせたりしています」


 まあ、滅多に戦いなどないらしいから、選択肢としては有りか。


 逆に、この世界(時代)の軍の仕事は、町や村の警備や盗賊退治、あと魔物狩りらしいから、兵役を終えて村に帰ってからも、いろいろと役に立つことが多いのだろう。


「あの、疲れませんか?」


 いくら小柄な女子とはいえ、人を背負って歩くのは大変だ。


 ミントが心配そうに真一にそう聞いた。


「ああ、大丈夫だ。こう見えて学生時代は体を鍛えていたからな」


 外見からはとてもそうは見えないが。


 夜が明ける前に、3人(そのうち1人はずっと背負われていたが)は目的地であるトリア村へと到着した。


 村の入口の側にある大きな木の根元に、真一がそっと阿左美を降ろした。


 そして、その上に自分が羽織っていた白衣をかけてあげる。


「ハァ~、さすがに疲れた」


 その隣に腰を下ろし、木の幹にもたれかかりつつ、真一がそう言う。


「お疲れさまでした。凄いですね。結局、一度も休憩せずに到着するなんて。さあ、少しお休みください」


 ミントがそう言うと、自分の鞄から毛布を取り出して彼にかける。


「すまない。しかし、君も疲れただろう」


「いいえ、私はただ歩いていただけですから」


 真一の世界には、女性で徹夜で20km歩ける人はそうそういない。


「いいから、少し休め」


 そう言うと、隣にミントを座らせて、彼女にも毛布をかけた。


「東の空が明るい。この世界も東から日が昇るのだな」


「シンイチ様の世界もそうなのですか?」


「ああ、植物や風景もよく似ている」


 異世界といっても、パラレルワールド的な感じなのかもしれない。


 つまり、魔力がない世界と、それがある世界のような感じで。


 あ~、相変わらず冷静だな、俺って、と真一は足元に転がっている早瀬阿左美に視線を向けつつ、そう考えていた。


 いきなり異世界に召喚されたというのに――いや、召喚されたのは阿左美であって、自分は巻き込まれただけなのだが――、なんにせよ、普通ならパニックを起こすか、理不尽な境遇に激怒して周囲に八つ当たりする状況なのだが、すぐに気持ちを切り替え、こうやって生き延びるための行動をしている。


 それを言えば、まだ高校生でしかない阿左美は、もっと混乱をしてもよいはずなのだが、まあ彼女はどうやら昔からこういう世界やシチュエーションに憧れていたのと、あと人間として単純にできているため、元の世界でもこの世界でも言動は一切変化していない。


 言い換えれば、いつでもどこにいても危なっかしいのだ。


 まあ、放っておけない奴ではあるな、と考えて苦笑する。


 真一は元々、物事に動じない方だが、それでも阿左美が一緒だから、冷静でいられたのかもしれないと思ったのだ。


 しかし、それだけではないような気がする。


 何故だか分からないが、この世界に来てから、あまり不安を感じていないのだ。


 ゲームで似たようなシチュエーションを何度も経験しているからか? 風景や環境が元の世界に酷似しているからか? いや、違うな、これは……。


 真一は首都圏で生まれ育った。


 両親も同じなため、田舎というものを知らない。


 それでも、旅行などで都会を離れてそういう場所に行けば、懐かしく感じて落ち着く。


 おそらく、人間の深層心理に刷り込まれた何かが、そう感じさせるのだろう。


 それと同じものを、この世界に感じているのだった。


 どういうことだ? もしかして俺は、この世界のことを知っているのか?


 そこまで考えて、馬鹿馬鹿しいと思った。


 そのようなことは今考えても仕方がないし、また意味もない。

 

 目的地に到着した安心感からか、急に眠たくなってきた。


 もしこのまま真一もミントも眠り込んでしまったら、荷物を置き引きされる可能性がある。


「鞄を背中に敷いてクッション代わりにしよう。もし寝込んでも盗まれないだろうし」


「はい、分かりました」


 こうして阿左美の鞄を真一が、ミントは自分の鞄を木の根元に置いて、改めてそれにもたれかかった。


 2時間ほどして、完全に夜が明けると、まずは真一が目を覚ました。


「そろそろか」


 そう言ってふと隣を見ると、ミントが彼の肩にもたれかかるようにして眠っている。


 柔らかい体と温かい体温、そして女性特有の甘い香り。


 この世界にも香水はあるだろうが、とてつもなく高価なはずだ。一体何の匂いなんだろう、などと考えてしまった。


 女性というものに幻想を抱かなくなった真一とはいえ、思わずドキッとしてしまう。


 いくら現代日本の女性よりタフとはいえ、徹夜で歩けば疲れるのは当然だ。


 このままゆっくりと眠らせてあげたいところだが、そうもいかない。


「ミントさん」


 普段の彼からは想像できないような優しい声で、彼女を呼んだ。


 すると、長い睫毛が微かに震え、そして静かに瞼が開いた。


「そろそろ行こうか」


「えっ、あっ、す、すいません、私ったら」


 自分がどのような姿勢で寝ているのか気付いたミントが、慌てて体を離して謝る。


「いや、おかげで温かかった」


 照れ隠しにそう言って、真一は立ち上がると、毛布を畳んで彼女に返した。


 そして、地面の上で丸くなって熟睡している阿左美を見下ろす。


「うう~ん、勇者様とお呼び……」


 一体どのようなシチュエーションの夢を見ているのだろうか。


「こいつ」


 真一が手を伸ばすと、彼女から白衣を剥ぎ取った。


 急に寒くなったので、阿左美が身体を丸める。


「起きろ、目的地に着いたぞ」


「う~ん、お母さん、今日の朝ごはん何?」


「いつまで寝ぼけているんだ。ここは異世界だぞ、ぽんこつ勇者」


 異世界と勇者という単語に反応して、阿左美が目を覚ました。


「あっ、先生、おはようございます」


「ああ、おはよう」


「寒っ……」


 そう言うと、真一の手から白衣を取り返して羽織る。


「ミントさん、朝飯にしよう。それが終わったら村に入るぞ」


「はい」


「りょうか~い」


 この後、ミントの鞄に入っていた弁当を食べ、3人は村へと入っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。