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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第1章 召喚女子高生勇者(笑)

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第4話 神官ミント アンジー

【これまでのあらすじ】

 勇者として魔王が復活する直前の世界に召喚された女子高生勇者 早瀬阿左美と、その巻き添えとなった教師 眞壁真一、そして二人の付き添いとして勇者神殿から派遣さることになった神官ミント・アンジー。

 3人はこの世界で生きていくために、冒険者ギルドで登録を行う。 

「一番安い定食を3人前。」


 3人がテーブルにつくと、ウェイトレスが注文を取りに来たので、真一がそう答えた。


「先生、先生、私、このステーキセットが食べたい」


 壁に貼られたお品書きの一番左端を注文した真一と、右端を指さす阿左美。


「別にいいけど、それを食べたら三日間飯抜きだぞ」


「うっ……」


 確かに一番安い定食は銅貨3枚だが、ステーキセットは銀貨1枚と銅貨5枚もする。


「生活が安定するまでは倹約だ。分かったな?」


「はぁい」


 そんな二人の様子を眺めていたミントは、この二人はいきなり異世界に召喚されたというのに、なぜこんなに平然としていられるのだろう、と不思議に感じていた。


 二人がどのような世界で生活していたのかは知らないが、服装から判断するに、文化や文明はこことはかなり違うようだ。


「それにしても、さすがは異世界人様ですね。お二人とも凄いです」


 彼女がそう話しかけると、二人がミントの方に向き直った。


「そうか?」


「私は不満なんですけどぉ~。何で勇者の私よりも先生の方が目立っているんですかぁ~?」


「仕方がないだろう。勝手に水晶が反応したんだから」


「でも、真っ黒だなんて……プッ……ククク」


「お前だって、頭の悪そうなピンク色だったじゃないか」


「色は別にして、やっぱり凄いですよ。普通は薄く色がつくくらいで、人によっては水晶に顔を近づけないと、色が変わったことすら分からないのですよ」


 そもそも、魔力適性がまったくない人間も珍しくないのだ。


「ミントさんも、あの検査は受けたことがあるのか?」


「はい。神官見習いから神官に昇格すると、時々冒険者さんたちと一緒にクエストに出ることがあるのですよ。その時にあの検査を受けて登録をしました」


「その時はどんな感じだったんだ?」


「私の時は、薄い水色でした。それでもかなり強い反応だと言われたんですけど」


「その色には何か意味があるのか?」


「聞いた話では、攻撃系の魔術は赤っぽい色に、癒し系は白や青に、支援系は黄色で、錬金系は茶色に近い色になると言っていました」


「なるほど。それでいけば、早瀬は攻撃と癒し系の両方に適性があるということか?」


「赤と白を混ぜたらピンク色だもんね」


「それで、黒は何系になるんだ?」


「そ、それは……」


 どうやら、あまり良い系統ではないようだ。


「暗黒魔術系で、主に魔族が使う魔術です」


「ええ~、先生、それはまずいよ。仮にも勇者のお供がそんな魔術を使ったら」


「安心しろ。俺が魔術を使えるようになったら、真っ先にお前で実験してやるから」


「あ、暗黒魔術と言っても、さらに系統が分かれますし、先ほどジュレさんも言っていた通り、人間でも使える人はいます」


「魔族と人間の混血、ハーフというやつか?」


「はい。ですが、あくまでもその系統の魔術に向いているというだけで、何を覚えて使うかは自由ですから」


「馬鹿を治す魔術はあるか?」


「それは聞いたことがありません」


「残念だったな、早瀬」


「ひっどぉ~い!!」


 そこで、ひとまず話題を変える。


「とりあえず、勇者神殿が嫌々俺たちを召喚したことは分かった。それは今さらどうしようもないが、ミントさん、あんた、もしかして嫌われているのか?」


 いきなりの質問に、ミントが胸を押さえて「うっ」と呻いた。


「えっ。でもミントさん、優秀だから私たちの案内人として選ばれたんじゃないの?」


「あのハーブ神官長の態度を見ていれば分かるだろう。体のいい厄介払いだよ」


 さらにミントが「うっ」と呻いて俯く。


 まるでグサ、グサッと見えない何かが突き刺さっているような感じだ。


「ミントさん、何やったんですか? 神官長が隠していたお菓子をコッソリ食べたとか、お気に入りのお茶碗を割っちゃったとか?」


「他人をお前の基準で判断するな」


 そう呆れてから、真一は言った。


「出る杭は打たれる。若くて優秀な人間は、どこの世界でも妬まれ、疎ましがられるんだよ」


「はい、仰る通りです」


 小さな声で、ボソッとミントがそう答えた。


「私は、近くの小さな村の出身で、幼い頃に可愛がっていた犬が大怪我をしたとき、助けたくて必死にお祈りをしたら……」


「癒しの魔術が使えたと?」


「はい。色々ある魔術の中で、一番自然に覚える可能性が高いのが癒しの魔術だと言われています。それでも両親や村の人たちはビックリして、私を一番近かった勇者神殿に預けたのです」


 ようは、才能がある彼女を専門機関に預けることによって、大物に育ててもらおうと考えたわけだ。


「父は、『聖女ミントの生まれ故郷』というキャッチフレーズで、村おこしをすると張り切っていました」


「……」


「普通は神官見習いは12歳にならなければ入れません。しかし私は8歳でそれが許され、そして2年前に神官になれました」


「ちなみに、神官見習いから見習いが取れるまで、どれくらいかかるんだ?」


「最短で10年、長い人だと20年ぐらいかかります。最悪だとなれない人も」


「君はいま何歳?」


「18歳です」


「つまり、8歳で神官見習いになって、16歳で神官に昇格したわけだ。これだけ飛び出せば、叩かれまくるのは当然だな」


「分かるわ、その気持ち……」


「具体的に何がどう分かるんだ、早瀬?」


「私って、とっても可愛いでしょ。だから、いろいろ勘違いされたり、僻まれたりして」


「そうだな。うんうん、お前は可哀想な奴だよ」


「ち、ちょっと先生、何その顔、その言い方。何か間違ってるよ!!」


「うるさい。何にせよ、それでミントさんは俺たちのお供という口実で、神殿から追い出されたわけだ」


「はい、そういうことになります」


「まあ、同情するが、俺たちとしてはありがたいとも思っている」


「えっ?」


「体裁ばかり気にするプライドが高いだけの奴だったら大変だからな。あんたにとっては迷惑だろうが、大助かりだ」


 真一が笑いながらそう言った。


「あ、ありがとうございます。そう仰っていただけるだけで、とても嬉しいです」


「まあ、頼りにしているよ」


 真一がそう言うと、阿左美がポンと手を叩いて、


「そういえば、ミントちゃん」


「何でしょうか、アザミ様?」


「私たちを召喚した時の一発ギャグって、何だったの?」


「それは忘れてください!!!」

 料理が運ばれてきた。


 固いパンが二つと野菜スープ、そして水。


「かったっ!!」


 パンに齧り付いた阿左美が、噛み切れずにそれを口から離してそう言った。


「アザミ様、それはスープにつけて柔らかくしてから食べるんですよ」


「うっす!!」


「調味料は貴重品だからな。あと、香辛料はさらに希少だ」


 一口食べるごとに驚いたり文句を言ったりする阿左美に対して、ミントと真一が淡々と説明をする。


「あ~、マックのハンバーガーが食べたい」


「あれと同じ物をこの世界で作ろうと思ったら、金貨1枚ぐらいかかるぞ」


「高っ?!」


 日本円に換算すれば、約10万円ということになる。


「ところで、この時間を利用して、色々聞いておきたいのだが」


「はい、どうぞ。私でお答えできることでしたら」


「まず、この世界の国というか、勢力はどうなっている?」


「えっと、まず大きく分けまして、この世界は人界と魔界に分かれています」


 固いパンを齧ったり、スープを啜ったりしながら、ミントが大雑把な説明を始めた。


 この世界のことを、彼女たちはアープルと呼んでいるらしい。


 そして、今のところ自分たちが住んでいる大陸以外のことを、あまり知らない。


 大陸の周辺にいくつかの小さな島があり、そこにも人が住み、国を作っていることは知っているが、そのさらに外側まで探索が進んでいないのだ。


 地球で言えば、大航海時代前の状態なのだった。


 創世神話としては、始祖神ジョブスが自分の二人の子供に命じて、それぞれ一つずつ世界を作らせた。


 一つは女神アイが作った可愛い物と美しい物だけの世界。


 そしてもう一つが、男神マックが作った、魔物だらけの戦いばかりの血なまぐさい世界。


 そのあまりに両極端な世界を見て、始祖神ジョブズはブチ切れ、両手でその二つの世界を掴むと強引に合体させたのだった。


 北の魔界と南の人界を隔てる城壁山脈は、こうして出来上がったと信じられている。


 こうして、この世界アープルは誕生したのだった。


「随分と無茶するわね、ジョブズ(神様)って」


「まあ、神話なんぞそんなもんだ」


「その後、この世界は女神アイと男神マックが共同して治め、さらに今は、その3人の子供も含めて5神が信仰されています」


「ん? ちょっと待てよ。その神様の中に勇者は含まれているのか?」


「いいえ。先代の勇者様は準神として、その一つ下の位です」


「そうか。ここでは、どれだけ偉業を達成しても、人間は神様にはなれないのだな」


「はい。ですので勇者神殿は、年がら年中、経営難状態です」


 信仰の次は、人界の説明に移る。


 この大陸には、大きく分けて3つの人間の国、2つのエルフの国、そして2つのドワーフの国がある。


 他にも中小国が複数あるのだが、どこかの大国の属国だったり同盟国だったり、もしくはどこからも相手にされないほど貧しい小国だったりした。


 あと、それぞれの国は一応種族ごとに分かれてはいるが、人間の国にエルフやドワーフもけっこう住み着いている。


 逆に、エルフとドワーフの国には、ほとんど他種族はいなかった。


 そのため、規模的には、多様性を認めた人間の国が一番大きくなっている。


 ちなみに、今、真一たちがいる勇者神殿は、大陸のほぼ中央、人間の国アルメシア王国領内にあり、一応自治区扱いされていた。


「やっぱりエルフは森に、ドワーフは洞窟で暮らしているのか?」


「それってやっぱりお約束だよね。あとエルフは耳が尖っていて寿命が長くて、ドワーフは背が低くて太っているの?」


 真一に続いて、阿左美もそう質問をする。


「1000年前の魔王軍の侵略までは、そうだったと聞いています。ただ、その時にたくさんの森が焼かれ、山が崩されたので、住む場所を失ったエルフやドワーフは、人間を真似して平野部に町を作り、それが国になったとか」


「では、エルフやドワーフも、こんな感じの町を作って暮らしているのか?」


「はい。もちろん、全てがそうというわけではありません。昔ながらの森で暮らしているエルフもたくさんいますし、洞窟で暮らすドワーフもそれは同じです。あとエルフの特徴ですけど、確かに耳が尖っていて長命ですけど、森を離れたエルフは神秘性を失って、200年から300年ぐらいで寿命を迎えるそうです」


「それでも十分に長生きだとは思うが、昔ながらの森で暮らすエルフはどうなんだ?」


「そちらは、ハッキリ言って、何歳まで生きるのか分かりません。1000年前に勇者と一緒に戦ったエルフが、まだ昔の姿のまま生きていると聞いたことがあります。どこかのエルフの国で族長だか長老をやっているとかいないとか。」


「ほぅ」


「あと、エルフの中には上位種、ハイエルフと呼ばれる人たちもいて、その人たちの寿命は永遠だと言われています」


「永遠の命?」


「正確には肉体的には、ということです。結局、何千年か生きているうちに、生きることに疲れて、最後は自分から森の中に消えていくんだそうです」


「本当におとぎ話みたいだねぇ」


「ドワーフも寿命は私たちより長いですけど、あの人たちは皆、同じような体型で髭を伸ばしていますので、外見的には年齢が判断しにくいです」


「他に種族はいないのか?」


「少数種族は大陸の各地にいます。ただ、基本的に言葉は通じますし、大陸共通のルールに従って生活をしていますので、それほど危険はありません」


「それだけ、特徴が違う種族が集まっていて、争いは起きないのか。それこそ、国同士の戦争とか?」


「悲しいことに、戦争は時々起きます。ただし、あまり大規模にはなりません。理由は……」


「北の魔族か?」


「はい、その通りです。人界で戦乱が続けば、必ず魔界で動きがあります。万が一、戦で疲弊しようものなら、その隙を突いて再び侵略してくるでしょう」


「なるほどな。魔界の存在が抑止力になっているわけだ」


 そう言って真一が、さきほどから静かにしている阿左美の方に目を向けた。


 彼女は、そぉ~っとフォークを持った手を伸ばして、真一のスープの中に浮かんでいる小さな肉の切れ端に突き刺していた。


「おい、それをどうする気だ?」


「ギクッ!!」


「静かにしていると、ろくなことをしないな」


「な、何を言ってるんですか。これはあれですよ。そう、はい、先生、ア~ン」


 彼女が口元に近づけてきた小さな肉に、何の躊躇もなしに噛り付く。


「ああ~?! 先生、それって間接キス」


「くだらん」


 もちろん、女子高生相手にからかわれたからといって、恥ずかしがったりなどしない。


「なんなら、俺のフォークを使え」


「それって同じことだよね」


「フンッ。さて、次の質問だ」


「はい、何でしょうか?」


「これから我々がやる、冒険者についてだ」


「冒険者とは、一言で言えば何でも屋です。あそこの壁に貼られている依頼書の中から、自分たちに適したものを選んで達成すれば、報酬を得ることができます」


「何でも屋ということは?」


「はい。魔物退治や人探し、隊商の護衛、要人警護、あと洞窟探査といった、いかにもな内容から、畑仕事の手伝い、家の補修の手伝い、地下水路の清掃のような雑用まで、とても幅広いです」


「この世界の治安維持はどうなっているんだ?」


「一応、どの村や町にも兵舎があって、警備のための兵隊がいます。あと、大きな町には砦や城があって、領主様が率いる軍隊や王国の騎士団、さらに魔術師もいます。ただしこの人達は、それぞれの村や町の警備が主な仕事で、盗賊団やよほど凶暴な魔物が相手でなければ出動はしません」


「なるほど。その穴を埋めているのが冒険者というわけか」


「そうです」


「ところで、今、魔物退治もすると言ったが、魔物は北の魔界にいるんじゃないのか?」


「主な生息地は城壁山脈以北の魔界ですけど、少数ですけど人界にもいます」


「ねえねえ、私、ゲームをやっていた時から考えていたんだけど、普通の動物と魔物の違いって何なの? 凶暴なのが魔物? 大人しいのが動物?」


「普通の動物は、犬や猫、あと家畜ですね。それらと違い、魔物とは魔術が使える動物のことを言います」


「ええっ?! 魔術を?」


「火を吹いたり、肉体を強化したりするわけだな」


「その通りです。基本的には人間を恐れず、逆に襲い掛かってきます。そして、とても強いです」


「ねえねえ、ミントちゃん、ドラゴンっているの?」


 テーブルの上に両手をついて身を乗り出し、瞳を輝かせつつ阿左美がそう質問した。


「は、はい。種類は色々ですけど、実在します」


「強い? 火を吐いたり空を飛んだりする?」


「上級種の中には、そういうことができるドラゴンもいるようですね。私が見たのは、ただ大きいだけでしたけど」


「み、見たことあるの、ドラゴン?!」


 これには真一も驚き、少し目を細めて彼女に注目する。


「はい。神殿に入る前に、王都の動物園で見ました」


「……」


 そして二人そろって間抜け面になった。


「ど、動物園?」


「はい。その魔獣コーナーにいました。森に住むフォレストドラゴンという種類で、体は大きいのですけど、自分の身体を周囲と同じ

色にできるそうです」


「巨大なカメレオン?」

________________________________________

「さて、食事も済んだし、そろそろ申請手続きも終わるだろう」


 最低限の基礎知識を教わった真一がそう言った。


「申請通るのかな? あの水晶の時、かなり慌てていたけど」


 阿左美がそう心配をする。


「あきらかな犯罪歴がない限り、冒険者ギルドは誰でも入れますよ」


「まあ、そうだろうな。冒険者などと名乗っていても、実際は冒険家や賞金稼ぎ、さらに傭兵みたいなものだ。さぞ、いろいろな経歴を持った人間が集まってくることだろう」


 実際、冒険者という職業は、若者たちが一度は憧れるが、現実になる者は少ない。


 村や町によっては、犯罪者と同じような目で見られたりもする。


 いろいろと誤解されやすいのは確かだが、しかし、その行動に関してはギルドが厳しく規則を定めていた。


 いくら依頼であっても違法行為は行わない。依頼を受けたら途中で勝手に止めたりしない。


 どうしても達成困難なときは、依頼人に相談のうえ、ギルドに増援もしくは支援を依頼する。


 ギルドを通さずに仕事を依頼された場合は、よほど緊急性がない場合を除き、勝手に受けたりしない。


※違法行為に関して、盗賊や野盗・海賊退治などにおいて、戦闘時に相手を殺傷することは、この世界では合法とされている。

 ただし、降伏した相手を傷つけてはならない。


 これらの規則に違反をした冒険者には、当然ペナルティーが科せられる。


 資格停止に始まり、一番重いものは、ギルドが総力を挙げた討伐などというものまであった。


 要するに、冒険者のパーティーが「悪落ち」などした場合は、冒険者ギルドが責任をもって捕まえるか、抹殺をするということだ。


 その場合は、とても高額な報奨金がギルドから支払われるので、皆こぞって参加をするらしい。


「今後の行動予定だが」


 真一がそう切り出した。


「今夜はもう遅いから、神殿に戻って休むことにする」


「ええ~っ?! あそこに戻るの? 冒険者ギルドって宿屋も兼ねているんでしょ。ここに泊まろうよぉ~」


「駄目だ、あそこを見ろ」


 真一がそう言って指さした方向を見ると、そこには、


『宿泊 おひとり様銀貨3枚、休憩 銀貨1枚』


 と書かれていた。


「休憩って……」


 ラ〇ホテルを連想させるが、実際には旅の途中でちょっと横になりたいとか、装備の手入れをしたいという冒険者が利用するようだ。


「ここに泊まれば、3人で銀貨9枚かかる。対して神殿なら、ミントさんの分は必要ない」


「せこいなぁ~」


「馬鹿言え。手ぶらで冒険者などできないだろう。武器や生活必需品も最低限揃えないといけないんだぞ」


 ちなみに、ミントの鞄の中には、3人分の弁当一食分と、最低限の着替え、そして野宿をするときに使う毛布などが入っている。


 そして阿左美の学校指定鞄の中には、体操服とお菓子類が入っていた。


 教科書類は、すべて元の世界の教室の机の中に残置している。


「そっか、剣に鎧、あと盾も欲しいなぁ~」


「無理だ。とりあえず、棍棒か短刀が買えれば御の字だろう」


「勇者の最初のお約束装備だね」


「あとは、盾は鍋の蓋、兜はそこら辺の桶でも被ってろ」


「そんな恰好で人前を歩くのは、いくら私でもちょっと……」


「最初は戦闘を伴わない依頼を受けるべきでしょう。まずは装備を揃えることが先決です」


 ミントがそう言ったとき、受付の方から、


「申請手続きが終わりました」


 という声が聞こえてきた。


 3人はテーブルを離れ、ジュレがいる受付へと向かう。


「シンイチ様とアザミ様の手続きが終わりました。このプレートを必ず身に着けておいてください。これは大陸全土共通ですので、どこの冒険者ギルドでも身分証明書代わりになります」


 そう言って手渡されたのは、元の世界の軍人がよく身に着けているドッグタグ(認識票)を銅で作ったようなプレートだった。


 表面には、それぞれの名前と性別、ギルド登録日、さらに登録をしたギルド名が刻まれている。


「その端の穴にこの紐を通して、首から下げるのが一般的ですね」


 そう言って、細い紐もくれる。


「これで、仕事を受けられるのか?」


「はい。何でしたら、そこの依頼書を見ていってください」


 そう言われて、3人が壁際に移動しようとした時、背後からさらに声をかけられた。


「登録料は、お一人銀貨10枚になります」


 二人で銀貨20枚。


 残金は銀貨3枚、銅貨21枚になった。


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