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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第2章 死者の神殿と愛の神殿

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第26話 魔物退治依頼受け

食事が終わると、真一達は宿泊施設の二階にある客室へと移動し、交代で入浴をした。


 部屋は全て二人から四人用の個室で、真一とエリチン、阿左美とミント、ヴァレリアンとシラクサという部屋割りにした。


 昨日に続き、野宿と違って交代で見張りをする必要がないため、ゆっくりと休むことができる。


 もっとも、考えようによっては、同じ敷地内に三十五体(人)のゾンビがいるという、かなり異様な状態なのだが。


 そして翌日、朝食をとると、真一達は神殿を後にした。


 目的地は、魔物がいる鉱山だ。


 途中、ボイド村に立ち寄り、ゾンビについては全員、死者の神殿で身柄を確保されているので安心していいと伝えておく。


 もちろん、そのゾンビ達に魂があるとか、鉱山の魔物が原因だということは黙っておく。


 こういう場合、中途半端な情報を流すと、あっという間に尾ひれがついて、大概は悪い方に話が転がっていくからだ。


 気が付いたら、武器を持った村人達が死者の神殿を包囲して、ゾンビを皆殺しにしろ!!と叫びつつ火をつける、などという事態になりかねない。


 恐怖心は簡単に人から冷静な判断力を奪い、さらにそれが集団になると、ほとんどの場合、暴走する。


 特にこういう場合は、異物を排除する方向に働くことが多い。


 真一達の説明を聞いて、村長は今のところ納得してくれた。


 ゾンビ達が神殿内に隔離されていると聞いて安心したのだろう。しかし、もし再び村の近くでゾンビが目撃されたら、今度はどのような過剰反応を引き起こすか分かったものではない。


 死者の神殿に対して不信感を持つ。

 ↓

 実は、あのゾンビを生み出した真犯人は神殿。

 ↓

 神殿はゾンビを使って村や町を襲おうとしている。

 ↓

 やられる前にやれ!!


 かなり極端ではあるが、そう考える村人がいたとしても不思議ではない。


「是非お礼をしたいので、今日は村に泊まっていってください」


 まるでゾンビ問題を解決したのが真一達であるかのような雰囲気になり、感謝感激している村長のその誘いを断って、真一達は次にカゲツの街を目指した。


 そして夕方には到着し、冒険者ギルドで鉱山の魔物討伐の依頼書がまだ貼られていることを確認する。


「教えてほしいのだが、この依頼を受けた冒険者は、これまでに何人いるんだ?」


 真一が、ギルドの受付にいた男性職員にそう質問した。


「……実は、二組のパーティーがこの依頼を受けた」


 かなり言いにくそうだが、冒険者からの質問には可能な限り答える義務がある。


 嘘をついたり、必要な情報を与えなかったりして、それが原因で冒険者が命を落とせば、ギルドの信用が失われるからだ。


「そして最初のパーティーは魔物を発見できずに依頼をキャンセルし、二番目のパーティーは五人全員が命を落としている」


「それ以降は?」


「いない。二番目の全滅したパーティーは、かなり有名なベテラン揃いだったからな。この付近で、この依頼を受ける者はもういないかもしれん」


「そうか」


 昨日、死者の神殿で会った冒険者ゾンビ達のことを思い出しつつ、真一がそう返事をした。


 通常、冒険者パーティーが依頼を受ければ、ギルドに貼られている依頼書は剥がされる。


 そして、失敗、もしくは達成困難なためにキャンセルされた場合のみ、再び依頼書が貼り直されるのだ。


「この依頼は、鉱山側から早く何とかしてほしいとせっつかれているんだが、魔物の正体すらさっぱり分からないからな」


「なるほど」


 ちなみに、全滅した二番目のパーティーは、今ではゾンビになって死者の神殿で家畜の世話をしているが、もちろん黙っておく。


「これを受ける」


 真一がその依頼書を剥がすと、受付に渡した。


「ほ、本気か、あんた達?!」


 報酬は大きいが、かなり危険な依頼だ。


 なんせ、すでに三十五人が命を落としていることになっている。


 受付の男性職員は、受け取った依頼書と真一達の顔を交互に見た。


「この依頼、かなり危険だぞ。本当に内容を理解しているのか?」


「もちろん」


「これまでに二組のパーティーが受けている。一組目は魔物を発見できずに撤退。二組目は五人全員死亡だ」


「聞いている」


「それでも受けるのか?」


「ああ」


 真一が即答すると、受付は困ったように眉を寄せた。


 冒険者ギルドは依頼を斡旋するが、誰でも彼でも危険な依頼を任せるわけではない。


 依頼失敗の代償が冒険者の命という場合もあるし、無謀な依頼をそのまま受けさせれば、ギルドそのものの信用にも関わる。


 特に今回のように、すでに死人が出ている依頼ならなおさらだ。


「すまないが、あんたのプレートを見せてくれ」


 そう言われて、真一は勇者神殿で発行してもらった身分証明用のプレートを見せた。


 受付はそれを受け取ると、しばらく眺めた。


「……マカベ・シンイチ。冒険者になって、まだ半月か」


「ああ」


「他の連中も見せてもらえるか?」


「全員か?」


「できればな」


 真一は仲間達を見る。


「だそうだ」


 それぞれが自分のプレートを取り出し、受付に渡していく。


 受付はそれらを一枚ずつ確認した後、今度は受付の奥から百科事典のような厚みのある名簿を取り出してきた。


 そこには大陸中の冒険者の名前と簡単な経歴が書き込まれていた。


 もちろん、これもマジックアイテムで、全ての冒険者ギルドに同じ物が置かれている。


 そして、遠く離れた場所で書き込まれた内容が、全ての冒険者ギルドにある名簿に反映されるようになっているのだった。


「マカベ・シンイチ……マ、マ……マカ……マカベ、あった」


 名簿は五十音順のようだ。


「なんだ、まだ冒険者になって半月しかたっていないじゃないか……」


「そうだな」


「それなのに、こんな依頼を受けるのか?」


「そういうことになるな」


 受付の男は呆れたように真一を見る。


「……トール領で五十人の盗賊退治……」


 名簿に記された経歴を読み進めるにつれ、その表情が変わっていく。


 これはかなり大きな仕事だった。


 ベテランの冒険者でも、いくつかのパーティーが共同し、十人以上の戦力を集めなければ達成は難しい。


 それを彼らは、たったの六人(その時はヴァレリアンとシラクサは正式にはパーティーメンバーではなかったが)でやってのけたのだ。


「……なるほど」


 受付は他のメンバーの経歴も確認していく。


 しかし、阿左美やエリチンについては、どうにも釈然としない顔をしている。


「実績はある。だが……」


「だが?」


「この依頼は普通の魔物退治じゃない。相手の正体も分からず、これまでの二組が失敗している。いくら盗賊を五十人倒した実績があっても、それだけで任せていいとは思えん」


 もっともな話だった。


「それで、どうする?」


 真一が尋ねる。


「俺の一存では決められない。少し待ってくれ」


 そう言うと、受付は名簿とプレートを持って奥へ下がっていった。


 しばらくすると、別の男と話している声が聞こえてくる。


「……実績はあるんですが、冒険者歴が短すぎます」


「しかし、トール領の件は?」


「五十人の盗賊を六人で……はい。記録上は間違いありません」


「それなら、本人達の実力を確認するしかないな」


「ですが、ここで試験をしても……」


「いや、直接話をしよう」


 そんな会話がしばらく続いた後、五分ほどして受付が初老の男性を連れて戻ってきた。


 どうやら、その老人はここのギルドマスターのようだ。


 左足を少し引きずっているところを見ると、元冒険者のなのだろう。


 おそらく足に怪我をして第一線を退き、ギルドマスターになったと思われる。


「あんた達か、あの鉱山の魔物退治を受けたいと言うのは?」


「その通り」


 阿左美が胸を張ってそう答える。


 ギルドマスターは真一達をしばらく無言で眺めた。


 そして、一人ずつ確認するように視線を動かしていく。


「……神官に騎士にシーフ」


 ミント、ヴァレリアン、シラクサを見る。


 くそっ、美人揃いだな、羨ましい。


「そして魔術師・・・変わった格好だな。」


 そう言って真一を見る。


「あと、名簿にはエルフがいるとあったが?」


 どこだ?とばかりに周囲を見回す。


 すると、エリチンがフードを後ろにずらして顔を見せた。


「お、お前がエルフだったのか?!」


 さらに外套を脱いで、ブーメランパンツ一丁の超ムキムキボディーを見せる。


「な、何者だお前は?!!」


 一気に分からなくなってしまった。


「最後は……」


 阿左美を見る。


「お前は何者だ?道化師か?」


「違うよ、失礼な!!」


 元気よく否定をする阿左美


「そうだ、こいつはお笑い芸人だ。」


「それも違う!!」


「……本当に、この六人で受けるのか?」


「そうだ」


 真一がそう答える。


「鉱山で何が起きているのか分かっていない。それでも?」


「ああ」


「魔物を見つけられない可能性もある」


「ああ」


「見つけたとしても、こちらの攻撃が効かない可能性もある」


「ああ」


「それでも受けると?」


「ああ」


 ギルドマスターはしばらく真一の顔を見つめた。


「……随分と肝が据わっているな」


「まあ、それなりに自信はあるからな。」


 それを聞いたギルドマスターの目が細くなる。


 ギルドマスターは少し考え込んだ。


 やがて、壁に貼られたままになっている依頼書を眺める。


「よし。承認しよう」


 ギルドマスターは依頼書に手を伸ばしてそれを剥がした。


「ただし、無理だと思ったら、すぐに撤退しろ。依頼を失敗することより、無駄に死人を増やす方がギルドとしては困るからな」


「分かった」


「それと、鉱山側にもお前達が依頼を受けたことを伝えておく。明日の朝には出発できるよう準備しておけ」


「了解した」


 ギルドマスターが頷く。


「……しかし、妙なパーティーだな」


 そう呟きながら、改めて真一達を見る。


 神官、騎士、シーフ、魔術師、正体不明のムキムキエルフ、そして奇妙な格好をした若い娘。


「まあ、実力があるなら文句はない」


 ギルドマスターはそう言うと、依頼書にスタンプを押した。


 こうして、真一達は正式に鉱山の魔物討伐依頼を受けることになった。


 外を見ると、日がかなり傾いていた。


 ここから鉱山まで、また半日近く歩かなければならないので、今日はこの冒険者ギルドで休むことにする。

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