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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第2章 死者の神殿と愛の神殿

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第22話 ゾンビ

カゲツの街には門がないため、いつでも誰でも出入りは自由である。


 現に、夜中でも人の行き来があるため、24時間営業の店も少なくない。


「冒険者ギルドはこっちだよ」


 シラクサの案内で、道幅の広い大通りを進んでいく。


 ここは、荷物を積んだ大型馬車が4台並んで走れるほど広いメインストリートの左右に、ズラリと宿屋や商店が並んでいた。


 美味しそうな匂いがするたびに、店に入っていこうとする阿左美を引きずりつつ、真一達は冒険者ギルドに到着した。


 1階が石造り、2階が木造で、1階が食堂と受付、2階が宿泊施設という、お約束の造りになっている。


 両開きの扉を開けて中に入ると、そこには20個ほどのテーブルが並んでおり、いかにも冒険者といった感じの格好をした男女が、くつろいだり食事をとったりしていた。


「まずは依頼書の確認だ」


「ええ~っ、先生、お腹減ったぁ!!」


「我慢しろ。あとで肉を食わせてやるから」


「肉っ?!」


 普段は固いパンと味の薄いスープという、一番安い定食ばかりなので、彼女の瞳が輝いた。


 そしてそのまま、受付前の壁に貼られている依頼書コーナーへ駆け寄っていく。


「極端な奴だ」


「なんだかんだ言って、シンイチってアザミに甘いよね」


 シラクサが呆れながらそう言う。


「まあ、頭の悪い子ほど可愛いって言うからな」


 正確には「出来の悪い子ほど可愛い」だが。


 全員で依頼書を手分けして見ていく。


「できれば、アバトの街に向かう隊商の護衛だ」


「と言うが、やっぱり田舎行きばかりだな」


 ヴァレリアンが顎の下に右手を当てつつそう言う。


「駄目なら、アバト方面の依頼なら何でもいい」


「……では、これなんかどうだ?」


 そう言ってエチリンが1枚の依頼書を指さした。


「どれどれ……」


 真一がそれを壁から剥がして読む。


 それは魔物退治の依頼書だった。


 近くの鉱山に魔物が出現し、30人近くの鉱夫が命を奪われたらしい。


 その魔物を退治してほしいというもので、報酬は金貨50枚。


 先日の盗賊退治の報酬が、盗賊50人で金貨20枚だったのに比べると2.5倍だ。


 基本、この世界の報酬の額は依頼の危険度に応じて高くなっていく。


 魔物が1匹なのか、それとも群れなのか分からないが、かなりヤバい内容だということは分かった。


 ちなみに、魔物の正体や数が分からないのは、その姿を目撃して生き残った者がいないためだ。


「こ、これは……ちょっとあれだな」


「確かに、かなり危険そうだが」


 ハッキリ言って、真一達、召喚勇者のパーティーはかなり強い。


 実際に50人の盗賊を、こちらは損害なしで一方的に討伐している。


 だが、魔物相手の戦いは全員未経験であり、ましてや場所が狭くて暗い鉱山だ。


「これを見てみろ」


 真一が依頼書の端を指さした。


「う~む……依頼日……1カ月前か」


 これほどの高額報酬にもかかわらず、1カ月間達成されていない。


 つまり、ハードルが高すぎて誰も受けていないか、何人かチャレンジしたものの返り討ちに遭ったかだ。


「やっぱり止めておこう」


「うむ、分かった」


 フゥと溜息をついてから他のメンバーを見ると、ミントが真剣な表情で依頼書を睨みつけていた。


「どうした、ミントさん?」


「あっ、シンイチ様」


「何か、気になる依頼があったのか?」


 そう言いつつ、彼女が見ていた依頼書を読む。


「ゾンビ退治……」


 この近くの村の周辺にゾンビが出現しているらしい。


 土地を腐らせたり、村人を追い回したりして迷惑だから、何とかしてほしいという依頼だ。


「ミントさん」


「はい、何でしょう?」


「この世界のゾンビって、人を襲ったり、噛みつかれたら人もゾンビになったりするのか?」


「確かに、ネクロマンサー(死霊使い)の魔術で造られたゾンビは凶暴で、命令されたら人を襲いますけど、基本、ゾンビは無害ですよ。少し臭いますけど」


「無害なゾンビ……」


 魔力が満ちたこの世界では、死んだ人をきちんと葬儀しないと、たまにゾンビになるらしい。


 それは主に、山奥で遭難したり、病気にかかって人知れず亡くなったり、盗賊や魔物に殺されて放置された亡骸だ。


 ただし、死体が動き出したからといって、何か目的や、やりたいことがあるわけではないので、人を襲ったりはせずにウロウロと歩き回るだけらしい。


 そもそも、魂が体から抜け出ているため、意思そのものがないのだ。


 まあ、どんどん腐敗が進んでいくので、歩いたルート上に身体のパーツがポロポロと落ちていたり、周囲に腐臭が立ち込めたりするが。


 衛生上とてもよろしくないので、それが原因で疫病が発生することがあり、人に直接危害は加えないが、ゾンビは早期に駆除するというのがこの世界の常識だった。


「過去には、村の井戸にゾンビが落ちて使えなくなったこともあったそうです」


「確かに、それは迷惑だな」


 おそらく、その村の近くで人知れず死んだ人がいて、それがゾンビになったのだろう。


「報酬は……金貨3枚か」


 それが相場として高いのか安いのかは分からないが、襲ってこないゾンビなら楽勝な気がする。


 ただ、動き回る死体を捕まえて処分するという仕事を、喜んでやりたがる冒険者は少ないだろう。


 それこそ、レベルの低い初心者向けのクエストだ。


「えっ、ゾンビ?」


 近づいてきた阿左美がそう言った。


「懐かしいなぁ~」


「何だ、早瀬。幼馴染にゾンビがいたのか?」


「そ、そんなのいないよ!!」


「じゃあ、お前が子供の頃はゾンビだったとか?」


「そんなわけないでしょ!!」


「じゃあ、何が懐かしいんだ?」


「去年の文化祭ですよ。私のクラスはダンスしたじゃないですか!!」


「ああ~、マイ〇ル・ジャク〇ンのスリラーか」


 キング・オブ・ポップスと呼ばれた世界的大スターが1983年に発表したダンスミュージックで、ゾンビ達がキレッキレのダンスをしたミュージックビデオが有名だ。


 1年生の時、阿左美のクラスは、文化祭で全員でそれを踊ったのだ。


 ゾンビの仮装をしたクラスメイト達の中心で、一人だけ赤いジャンパーを着て顔を黒く塗った彼女が踊りまくっていた。


「それで、ミントさんはこの依頼を受けたいのか?」


 真一が彼女の方に向き直りつつそう言った。


「はい、私も神官の端くれですから」


 まあ、確かにそうだ。


 あんまり神官らしい仕事をさせてあげていないし、たまにはいいか。


「よし、これを受けよう」


 こうして、新たなクエストに挑むことになったのだった。








 カゲツの街に到着した日の夕方


 ゾンビ退治の依頼を受けた後、約束通り焼肉定食を食べ、真一達はゾンビが出現するポリネの村に移動をした。


 徒歩5時間ほどで到着した頃にはかなり日が傾いていたが、とりあえず村長の家を訪ねておく。


「冒険者の方々ですか!!」


 よほど不安だったのだろう。彼は真一達を見ると、大喜びで家に招き入れてくれた。


「ありがとうございます。本当に、もう不気味で怖くて、皆、怯えておりました」


 真一達がテーブルを囲むように椅子に座ると、お茶やお菓子が次々と出てくる。


「それで村長、具体的にどのような被害が発生しているのか教えてください」


 彼がそう切り出すと、「ええ、それはもう恐ろしいことが起こっています」と村長が説明を始めた。


「先週ですけど、村の東側の野原にゾンビの群れが現れまして、何かウロウロとしていたのですが、夕方には姿を消してしまいました」


「群れ?」


「はい。たまたま近くを通りかかった村の者が見ていたのですが、10体ほどいたそうです」


 おかしい。


 ミントの話では、ゾンビには知能がないはずだ。


 つまり、集団行動をする必要もないということになる。


 要するに、孤独を感じて寂しがったり、群れをなして安心したりするような心理や感情はないし、集団で何かを成すような知恵もないはずなのだ。


「それで、翌日、そのゾンビ共がいた場所を調べに行ったら、草花が枯れて土が腐っていました」


「まあ、ゾンビがうろついていたのなら、そうなるだろうな」


 腐肉と一緒に、いろいろな菌などもばら撒かれていたはずだからだ。


「あと、これも東側の森の中で、木の実を採っていた村の若い娘がゾンビに追いかけられたとか」


「追いかけられた?」


 やはり、ただのゾンビではないようだ。


 死霊使い(ネクロマンサー)によって生み出された人造ゾンビという可能性が高くなってきた。


 しかし、そうだとすれば、一体何の目的で、何をやっていたのだろうか?


 今のところ村人に実害は出ていないようだが、今後もそうだとは限らない。


「なんにせよ、村の東側ばかりなのですが、よくゾンビが目撃されているのです」


「東側ねぇ~。そちらに何かありませんか? 墓場とか廃城とか洞窟とか」


「いいえ。少し行ったところに死者の神殿があるぐらいで」


「死者の神殿か」


 死んだ人の魂があの世に行くために通る場所だ。


「ミントさん、どう思う?」


 真一が彼女にそう聞いた。


「死者の神殿の神官は、私達よりも死霊やアンデッドに対して知識が豊富で、対処する方法も知っているはずです」


「しかし、現実にはゾンビ達が野放しになっている」


「はい。あの、村長さん」


「何でしょうか、神官様?」


「最近、誰か死者の神殿に行かれた村人はいますか?」


「い、いいえ。怖くて怖くて、誰も村の東側には出かけなくなりましたから」


「そうですか」


「何にせよ、幸い、今のところ村の者に被害は出ていませんが、それもいつまでもつかどうか」


 村人に何かあってからでは手遅れなのです、と村長が言った。


「明日の朝から、さっそく調べてみよう」


 真一がそう言うと、一同が頷いた。


「よろしくお願いします。宿泊は村の宿屋をお使いください。宿代は結構ですので」


「それは助かる」


 これで寝るところと食べ物は確保できた。

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