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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第1章 召喚女子高生勇者(笑)

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18/91

第18話 作戦会議

昼過ぎにシンインの街を出発した真一達は、日が暮れる前に盗賊の砦の手前にある村に到着した。


「止まれ!! お前達は何者だ?!」


 そして、村の入口で見張りをしていた自警団に誰何される。


 長い木の棒の先にナイフを括り付けた、即席の槍を突き付けられた。


「私は王国騎士のヴァレリアン ホルセットだ。村長と話がしたい」


 ここは、この国で一番社会的地位の高い彼女が先頭に立つ。


 彼女の鎧の胸元には、所属する騎士団の紋章が施されている。


 それは、白い鷲が翼を広げた紋章だった。


 シラクサの情報が正しければ、この村の近くに盗賊団の砦がある。


 そのためか、村人達の表情はとても複雑だった。


 頼もしい味方が来てくれたと喜ぶ半面、助けてくださいとお願いしても裏切られ、そのあとで盗賊から報復をされるかもしれない。


 これまで何度も領主に助けを求めたが、ただの一度も警備の兵隊一人送ってこなかった。


 今更信用しろと言うのも、虫が良すぎる話だろう。


「な、何の御用ですか、騎士様?」


「盗賊について色々と聞きたい」


「そんな事をして、何か意味があるんですか?」


「奴らを討伐する」


 それを聞いて彼の表情が一瞬明るくなったが、すぐに元に戻った。


 村人達は、盗賊と兵士達が結託している事に気付いていた。


 そのため、これは罠ではないかと疑っているのだ。


 ここで盗賊についての情報を伝えたら、それを口実にして、直後に盗賊団が、


「お前達、裏切ったなぁ~!」


 と言って村に襲い掛かってくる。


「何もお話しすることはありませんよ」


「そうか。しかし、村長には会わせてもらうぞ」


 そう言うと、ヴァレリアンは強引に村の中に入った。


 さすがの見張りも、即席の槍一本で騎士に立ち向かうほど馬鹿ではない。


 さらに彼女は、5人のお供を連れている。


「そ、村長!!」


 彼はそう叫びつつ、村長の家に向かって駆け出した。


「何だ、騒々しい」


 彼の声を聞いて、村の中央にある家から一人の老人が出てきた。


 白髪白髭で、杖をついている。


 村長というよりは、長老といった雰囲気だ。


「お、王国の騎士様が、盗賊について話を聞かせろと」


「何じゃと?!」


 そう言って近づいて来る一団に目を向けると、確かに金髪の美しい女騎士と、バラエティーに富んだ格好のお供達が見えた。


 特に目立つのは、外套の上からでも分かるほど、ムキムキな巨漢の男である。


「な、なんじゃ? オーガか?!」


「あなたが、この村の村長か?」


 驚いている彼の正面に立つと、ヴァレリアンがそう言った。


「私は王国騎士のヴァレリアン ホルセットと申す者だ。盗賊団について話を聞きたい」


「ま、まさか、本物の……」


 そう呻いてから周囲を見回し、


「と、とりあえず中に入ってくだされ。さあ、早く」


 と言って、一行を家の中に招き入れた。


「私達は、盗賊を討伐に来た。もちろん、盗賊の拠点がこの先にある事は、すでに知っている」


「な、何と……」


 村長は、細い目を力一杯見開きつつ立ち尽くす。


「き、騎士殿、あなた方は先発隊で、後から軍勢がやって来るのですか?」


「いいや、我々だけだ」


「そ、それはまた……」


 見開いていた目が閉じられる。


「無謀じゃ。こんな人数では、返り討ちになるだけですぞ」


「そうならないために、情報を聞きたい」


 そう言ってヴァレリアンの隣に進み出たのは真一だ。


「お前さんは?」


「冒険者だ」


 そう答えて、ギルドから貰ったプレートを見せる。


「どうりで、兵隊には見えんからな……いや、そもそも何者かさっぱり分からんし」


 彼と阿左美を見て、村長が首を傾げる。


「我々が聞きたいのは、盗賊の人数……あと、人質の有無だ」


 それを聞いて、村長がムゥと呻いた。


「人質?」


 そう言ったのはヴァレリアンだ。


「ああ、盗賊が奪う物と言えば、金と食料、そして女だ」


「た、確かに」


「当然、あの砦にはさらわれた女達がいるんじゃないのか?」


 その時、突然、村長の家のドアが開いた。


「そ、その通りです。お、俺の娘が、エディアンが、あいつらに!!」


 驚いて振り返ると、ドアの外には村人達が集まっていた。


 どうやら、王国騎士がお供を連れて盗賊討伐に来たという話を聞いて、集まって来たようだ。


「俺の嫁も、あの砦に連れて行かれたんです!!」


 別の村人もそう叫んでいる。


「ひ、人質か……」


 ヴァレリアンが腕を組んで考え込みつつ、そう言う。


 どうやら彼女は、砦に正面から乗り込んでいき、力業で盗賊達を殲滅しようと考えていたようだ。


「人質がいるなら、まずそれを救出しなければ戦えない。正確でなくても良いから、何人ぐらいいるか教えてくれ」


「お前さん達、本気なのか?」


「当たり前だ」


「冒険者は、金のためにしか働かんと聞いたが、このままでは死にに行くようなもんじゃぞ」


 まあ、確かに金のためではあるが……。


「村長、この者達は昨日、その盗賊団と一戦交え、一方的に撃退した挙句、盗賊を一名捕まえている」


「それは本当か?」


「嘘では無い。その捕まえた盗賊はアジトの場所を調べるためにわざと逃がしたが、今朝、この村を通ったはずだが」


 真一がそう言うと、おそらくその時、見張りに立っていた者だろう。


「確かに、一人フラフラと歩いて帰って来た。おかしいと思ったんだ」


 という声が聞こえた。


 もちろん、真一が口にした事は嘘だ。


 そして、騎士らしく正義感が強いヴァレリアンは、いくら相手を信用させるためとはいえ、嘘などつけない。


「ほ、本当に、あんた達だけで盗賊を……しかし、あいつらは50人もいるんじゃぞ」


 50人か……予想より少し多いな。


「さらに、魔術師もおる。とてもこの人数で勝てるとは思えん」


 当たり前だが、なかなか信用してもらえない。


 これまで裏切られ続けたせいだろう。


 どうする、切り札を使うか? 実はこの早瀬 阿左美は召喚された勇者だと……いや、駄目だ。さらに信用がなくなる。


 ついでに言うと、当の本人も、その異世界召喚勇者としての自覚がどんどん薄くなっているような気がする。


 エリチンの正体を明かすか? 駄目だ。外套を脱いだ瞬間に村人達が逃げ散ってしまう。


 ミントとシラクサは、一目見て何者か分かるが、神官と盗賊(シーフ)だけでは戦闘に勝てない。


「村長、俺は魔術師だ」


「なんと?!」


「それも、かなり強力な攻撃魔術が使える」


「……」


「見せてやろう」


 口で何を言っても信じてもらえない事は分かっている。


 真一は村長の家から出ると、村人をかき分けて広場へ出た。


「炎や水は後始末が大変だし、よし、風で行くか」


 周囲を見回すと、村の側に林があった。


「何本か木を切り倒させてもらうぞ」


 そう言うと、村人達にも分かりやすいように右手を突き出す。


 その直後、林の中に生えていたかなり大きな木が、同時に3本切断された。


 それも、ただ根元から切り倒されたのではなく、枝が払われ、さらに5mほどに分断されて、ゴロンゴロンと地面の上に落下する。


「な、何と?!」


 風の魔術で標的を切断するというものは確かにある。


 しかし、これほど同時に何か所も切断するというのは、聞いたことも見たこともなかった。


「こ、これは、ちょうど加工しやすいサイズだ」


 村長が、予想とは少し違う驚き方をしている。


「私が本気になれば、10本ぐらい同時にできる」


「じ、10本?!」


 これはハッタリだった。


 あと2、3本ぐらいなら、何とかできそうな気がするが、さすがにまだそこまで魔術を使いこなしてはいない。


「あ、あなた達なら、奴らを倒せるかもしれんな」


 しかし、村長達はそれにコロッと騙されたのだった。


「砦の中は、こんな感じですじゃ」


 村長の家の中に、盗賊について詳しい村人達が集められている。


 そして、木の切れ端や食器などを並べて、盗賊達のアジトを立体的に再現していた。


「俺は、何度かあの砦に酒や食料を運んだことがあります。だから間違いありません」


 そう言った村の若い男が、建物を模した食器を一つずつ指さしつつ、


「ここが食糧庫で、ここが厩。あと、この東の端にある大きな建物が、あいつらの首領の住居です」


「さらわれた人質が閉じ込められている建物は分かるか?」


「はい。この首領の建物に若い女が連れ込まれるのを見ました。たぶん、この中です」


 確かに、それで間違いないだろう。


「この砦自体はかなり古いが、城壁は修理されている。なんせ、やらされたのは俺達だ」


「そうだ、門を直したのも俺達だ」


「なるほど、それで城壁と門は綺麗だったのね」


 そう言ったのはシラクサだ。


「見張りは城壁の四隅にずっと立っています」


「……」


 一通り説明が終わると、村人はもちろん、パーティー全員の視線が真一に集まった。


 どうやら、いつの間にやら彼がリーダーという事になったらしい。


「よし、それでは俺とシラクサ、あとミントさんの3人で砦の東側から接近し、人質を救出する。村長、何人か村人を待機させて、逃げ出してきた女性達を保護してやってくれ」


「わ、分かりました」


「ヴァレリアン、エリチン、早瀬の3人は、俺達が人質救出を開始したら正門から攻撃を開始してくれ」


「承知した」


「承った」


「はぁ~い」


 こうして分担が決まる。


「あ、あの、シンイチ様」


 知らない間に、村人達からも様付けで呼ばれるようになっていた。


「俺達も戦わせてください」


「邪魔だ」


「そんな身も蓋も無い」


「言っておくが、あいつは危ない奴だぞ」


 真一がそう言いつつ、阿左美を指さした。


「あ、危ない!」


「そうだ。戦いが始まったら、血に飢えた魔物のように敵味方見境なしに襲い掛かる」


「ええっ?!」


「ち、ちょっと先生!!」


「だから、俺達だけでやる」


「わ、分かりました!!」


「先生、先生、私のイメージが大変な事になっているんだけど!!」


 真一に詰め寄り阿左美がそう抗議するが、後の祭りだった。

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