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召喚女子高生勇者が思いのほかポンコツでした  作者: よしぞう
第1章 召喚女子高生勇者(笑)

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第12話 初めての戦闘

 隊商護衛2日目


 御者や真一達以外の護衛の表情が険しくなっているのが分かった。


 どうやら、盗賊が出現する危険地域に入ったらしい。


「ねえねえ、シラクサちゃん」


 今日も馬車の荷台に乗っていた阿左美が、隣に座るシーフのシラクサ インカラに話しかけた。


「なあに?」


「シラクサちゃんは、今までにもこんな依頼を受けたことがあるの?」


「隊商の護衛? うん、あるよ」


「その時も、こんなに物々しかったの?」


「うんにゃ。その時はもっと安全な地域だったから、護衛の人数も半分だったし、警戒する相手も盗賊というよりは、商品を盗みに来るコソ泥だったから」


「そうなんだ」


 そう答えると、チラッと彼女の左腰にぶら下がっているダガーを見る。


「それ、使ったことあるの?」


「これ?」


 そう言うと、シラクサがダガーを抜いた。


 柄の部分には滑り止めとして布が巻かれており、刀身は黒く塗られている。


 いかにも使い込まれている感じだ。


「あるよ。人を殺したことはないけど、何人か怪我はさせたことがある」


「うわっ、実戦経験者なんだ」


「そうだよぉ~、尊敬したまえ」


 そのような会話をしている二人の隣を、真一とミント、あとエリチンの三人が歩いている。


「シンイチ様も、アザミ様も、もうすっかりこの世界の人みたいですね」


「まあ、元の世界でも、よく似たゲームはずっとやっていたからな」


 ミントの質問に、真一がそう答える。


「お二人の世界ってすごいのですね。全然違う世界を体験できるなんて」


「まあな。しかし、ゲームでは、目的地まで三日もリアルで歩くなんてことはなかったな」


 そんなゲームがあったとしても、誰もやらないだろうが。


「それに、俺がやっていたゲームの世界では、こんなムキムキのエルフはいなかった」


「ハハハ、当たり前だ。間違いなく、この世界でも俺だけだろう」


 二人の後ろで、ダンベルで腕を鍛えつつ歩いていたエリチンが笑う。



 この日は村ではなく、廃墟になった砦跡で野宿をすることになった。


 とはいっても、このルートを通る隊商や旅人はよく利用するらしく、あちらこちらに焚火の痕跡やゴミが残されている。


 完全に暗くなる前に砦跡に入ると、まずは怪しい奴か潜んでいないか調べて回った。


「ここは丘の上で見張りがしやすいからな。おい、新人共」


 とりあえず安全を確認すると、御者達が馬を馬車から放して休ませ、護衛のリーダーであるマイカル アミナンが真一達を呼んだ。


「何だ?」


「俺達は北側の塔から見張りをするから、お前達は門番をやれ」


 そう言いつつ、半分崩れかかった塔と、扉がなくなり、ただのアーチになっている正門を指差す。


「分かった」


 今夜はちゃんと働いてくれるようなので、真一達は素直にその指示に従う。


「篝火を焚いて、誰も入れるなよ」


「他の隊商や旅行者が来た場合は?」


「中は貸し切りだと言え」


 どうやら、それがこの世界のルールのようだ。


「よし、門の側にテントを立てて、昨日と同じ順番で見張りをするぞ」


 真一はそう言うと竈を作るための石を、エリチンは火を燃やすための薪を集める。


 その間に、阿左美とミントは、隊商から今夜の料理の食材と調理器具を受け取っていた。


「ねえ先生、ここは井戸がないから水が少ないんだけど」


 近くに川や泉があれば、そこまで汲みに行くのだが、どうやらかなり距離があるようだ。


「しょうがないな」


 真一はそう言うと、鍋を置いて、目を閉じて意識を集中した。


 すると、その鍋の中に湧き出すように水が出現する。


「はぁ~、便利だね~。こんなことができるなら、昨日もわざわざ井戸まで汲みに行く必要なかったんじゃないの?」


「そんなことしたら、早瀬にできる仕事がなくなるだろうが」


「ひっどぉ~い!!」


 この日は昨日のように骨をもらえないので、出汁のない干し肉や干し野菜だけのスープになる。


 その時、薪を集めに行っていたエリチンが、


「途中で、見つけた」


 と言って、大量の枯れ枝と一緒に一羽のウサギを捕まえてきた。


 いや、それは真一達の世界で言うウサギに似た姿をしているというだけで、この世界で何と呼ばれているのかは知らないが。


「わぁ~、美味しそうですね。私が皮を剥ぎます」


 そう言うと、ミントがそれを受け取り、ナイフを取り出した。


「えっ、ミントちゃん、それをバラすの?」


「はい。子供の頃からよくやっていましたので、得意なんですよ」


 そう言いつつ、ウサギ(仮)の内腿に刃を当てるとザクッと突き刺し、そのあとは、そこに指を入れて皮を剥いでいく。


 これは、現代っ子の早瀬には衝撃的すぎるか? と思ったが、彼女はミントによって手際よく解体されていくウサギ(仮)に興味深げに見入っていた。


「案外、逞しいな……」


 何にせよ、これで今夜のメニューが確定した。


 せっかくなので、その骨で出汁を取り、肉の方は半分はスープに、残りの半分は焼くことにする。


「実は、今日は移動中にハーブを見つけた」


 真一がそう言うと、白衣のポケットから何種類かの葉っぱを取り出した。


「形も匂いも俺達の世界の物とよく似ていたから、多分大丈夫だろう」


 そう言って、念のためにエリチンに見せる。


 植物のことに関して言えば、間違いなく彼が一番詳しいからだ。


「うむ、香草だな」


 どうやら大丈夫なようだ。


 それを内臓が抜かれたウサギ(仮)の中に詰め込んで焼く。


「おおっ、今日も旨そうだな」


 その匂いを嗅ぎつけて、御者達が近寄ってきた。


「分け前が欲しければ、分かっているだろうな?」


 真一がそう言うと、両手で酒瓶や食材を掲げる。


 そして、酒宴が始まった。


「ところで、エリチン」


「何ですかな、マカベ殿?」


「この動物、何という名前なんだ?」


「ウサギだ」


 それを聞いて少し驚くと真一と阿左美が顔を見合わせて笑った。

________________________________________


 隊商護衛3日目


 予定通りいけば、今日の夕方には目的地であるシンインの街に到着する。


「今日一日乗り切れば、依頼達成だ」


 真一が気合を入れてそう言う。


 今日は阿左美が歩いて、ミントが馬車に乗っていた。


「おい、お前ら。襲撃を受けて逃げたりしたら、後でぶっ殺すからな」


 馬に乗ったまま近づいてきたかと思うと、マイカル アミナンがそう言った。


「安心しろ。逃げる時は、その前にお前を攻撃するから」


 真一がフッと笑いながらそう言うと、苦々しげな表情になり、唾を吐いてから離れていく。


「本当に偉そうで嫌な奴」


「まあ、でも場数は踏んでいるわよ」


 彼の後ろ姿にベーッと舌を突き出していた阿左美に、いつの間にか近づいてきたシラクサがそう言った。


「シラクサちゃん、あの嫌味男と付き合いは長いの?」


「うんにゃ。この隊商の護衛で初めて組んだから、一週間前からだけど。彼が護衛をした隊商は、被害が少ないことで有名だよ」


「確かに、言い方が偉そうなだけで、指示の内容自体は的確だな」


「じゃあ、もっと普通に言えば良いのに」


「それだけ、俺達が信用されていないということだ」


 なんせ、こちらはパーティーを組んだばかりの素人集団だ。


 彼のようなプロにしてみれば、使えない味方は敵よりも質が悪いということだろう。


 敵は問答無用で叩き切ればいいが、使えない味方は足を引っ張られ、それをフォローするために戦力を割かなければならない。


「盗賊が出てきたら、ボコボコにしてやるのに」


「出てこないに越したことはないだろうが」


 昨日までは、隊商は定期的に休憩を取り、昼食時間には一時間ほど停止したものだが、今日はノンストップだった。


 食事も前進しながら食べ、トイレに行っている間も隊商は前進を続けるので、手早く済ませないと置いていかれそうになる。


 あの偉そうなマイカル アミナンは、森に入る時や丘を越える時は先行して偵察をし、待ち伏せに適した場所では、隊商の速度を上げて一気に駆け抜けたりした。


「前の隊商は、シンインの街の手前で襲われたらしい」


 真一が前日の酒宴で得た情報を皆に伝えた。


「町の近くで? それはまた大胆ですね」


 ミントが驚いてそう言う。


 確かに街が近いということは、襲撃の通報が守備兵に届きやすく、さらに周囲を巡回している警備兵達と鉢合わせする可能性が高くなる。


 せっかく襲撃に成功しても、戦利品を運ぶことに失敗すれば無駄骨だ。


 かといって、軽易に運べる程度の荷物で我慢をしていては利益が少ない。


 つまり、街の近くで襲撃をするというのは、リスクが高すぎるのだ。


 できれば街から少しでも遠く、それでいて森や山道など、すぐに逃げ込めるような場所が理想的なのだった。


 この付近の地形は平坦で、畑と林が交互に連なっている。


 待ち伏せがしやすく、逃げやすい地形か。


 真一は周囲を見回して、そう考えた。


 その時、エリチンが近づいてきて、彼にそっと耳打ちした。


「マカベ殿、前方の林の中に複数の人が潜んでいる」


「間違いないのか?」


 真一がそう確認すると、目深に被ったフードの下で彼が頷いた。


 どうやらエルフの能力を使って怪しい場所に近づくと、先行的に探査をしていたようだ。


 植物を通じて、それに何者かが接触していれば反応がある。


 もしかしたら木こりや炭焼き職人、さらに狩人という可能性もある。


「人数は分からないのか? あと、武器を持っているか?」


「どうやら林の中に開けた場所があるようだ。草木に接触していない人間もいる可能性がある。しかし、最低でも人数は五人以上。あと、武器は分からん」


「五人以上か……」


 何にせよ、今も隊商はその林に向かって進んでいる。


 待ち伏せされていると分かっていて、何もしないわけにはいかないだろう。


 真一は馬に跨って先頭を進んでいるマイカル アミナンに近づいていった。


「ちょっといいか」


「何だ?」


「うちの連れが、あの林に複数の人間の気配を感じたらしい」


「はぁ? さっき俺はあの林を調べたが、何もいなかったぞ」


 そりゃ馬に乗ったままでは、茂みの中に身を潜めた相手を見つけることは難しいだろう。


「あんたが偵察をした後に林に入ってきたのかもしれない」


「……その気配を感じた奴っていうのは、信頼できるのか?」


「ああ。冒険者としては新人だが、生まれてこのかたずっと森で暮らしてきた」


「……」


 こいつは上から目線で嫌な奴だが、シラクサが言うには、決して無能ではないらしい。


 そう考えつつ様子を見ていると、マイカルが右手をバッと上げた。


 それを見て、後続の馬車が停まる。


 林までの距離は一〇〇mの位置だ。


 これはロングボウの射程ギリギリで、林の中に盗賊が潜んでいた場合、かろうじて安全地帯というこ

とになる。


 周囲を見回すと、左右は小麦畑で、三〇〇mほど後方に小さい林がある。


「もう一度俺達が林を見てくる。お前達は隊商を連れて後方の林まで下がれ」


 実に的確な指示だ。


「分かった」


 真一がそう答えて、馬車の方に戻ろうとした時、前方の林から十人ほどの男達が飛び出してきた。


 全員、遠目に見てもむさ苦しい男達で、手には武器を持っている。


 装備に統一性がないため、一目で正規の軍隊ではないと分かった。


「自分達の待ち伏せがバレたと思って飛び出してきやがった」


 マイカルがそう言うと、シラクサを含めた彼の仲間達が駆け寄ってきた。


「新人、お前達も前に出ろ」


「分かった」


 真一がそう言って仲間のところに戻る。


「弓だ!!」


 マイカルがそう言って馬から降りると、ロングボウを取り出す。


 そして矢をつがえて、こちらに向かって突っ込んでくる男達めがけて、それを放つ。


 それは命中しなかったが、相手の足が止まった。


 そして、十人のうち弓矢を装備していた者達が反撃してくる。


五〇mほどの距離をおいて、野盗と護衛が矢を撃ち合うことになった。


 こうして異世界召喚勇者パーティーの初めての戦闘が始まった。


 その相手は、魔王の手下でも魔獣でも無く、人間の盗賊団だった。

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