245話 友として、ライバルとして
「さあ次のマッチアップはこちら!今まで全ての試合を10秒未満で終えてきた紛うことなき優勝候補!怜奈選手!」
歓声が湧き上がる。
新しく怜奈に賭けた、という人も多いのだろう。
それだけ圧倒的な戦績を残した怜奈の顔は―いつもと変わらず涼しげではあるのだが―
いつもと違って、既に右手に短刀を創り出していた。
「・・・学校以来かな?」
そう声を先にかける。
「そして対戦相手もまた強豪!決勝で見てもおかしくはない組み合わせになってしまった!全ての試合で相手を寄せ付けなかった魔力の天才―愛花選手!」
愛花もいつもと違って、歓声に反応して手を振ったりはしない。
ただ真っ直ぐ怜奈を見つめている。
「そうだね・・・あの時は勝てなかったなぁ。」
「・・・ふふ、勝つ気満々。・・・一応目的は同じ、片方が譲ってもいいけど。」
「まさか。確実に優勝する為に、より強い方が残るべきだよ。」
その答えを分かっていたと言わんばかりに怜奈は構える。
2人には、お互いの事しか見えていない。
その他のものは聞こえもしていないような。
その不思議な雰囲気が会場をも支配していき―
異様な程に静まり返る。
誰かの息を飲む音。
誰かが喉を鳴らす。
その本来なら目立たない音が、非常に目立つ空間。
その中に、大きな試合開始の音が鳴り響いた。
さっきまでの静寂が嘘のように、2人は動く。
魔力が大量に空間を支配し、そこに疾風の如く怜奈が駆け抜けて行く。
「・・・随分いやらしくなったじゃん。」
「舜兄が魔力使えたなら、こうしてるからね!」
怜奈の機動力が活かしにくいフィールド。
より単純な動きをして素早く動くという基本を、辺りに緻密に置かれた魔力が邪魔をする。
怜奈は離れた位置で、空中から短刀を弧を描くように振るう。
「・・・三日月よ、飛べ!」
その弧の剣撃が地に向けて一直線に放たれる。
「よっと!」
愛花の浮かしていた魔弾2つで相殺され、辺りに煙が充満する。
(あんな簡単に浮かせてるもので、たった2つで相殺。威力も相変わらず化け物・・・だけど。)
(煙から突っ込んでくるのは怜奈ちゃんにとってもリスクが多い。なら・・・。)
刹那の思考。
(配置は覚えてる!無くなった2つ分の隙!新たに配置が変わる前に突っ込む!)
(1番怖いのはそのリスクを取られた時!1つの行動に100点満点じゃなくていい!全ての行動に60点を取れる選択肢を!)
怜奈の耳に聞こえる、弾ける音。
何をしているかはまだ見えない。
でも、突っ込むと決めたその身体は、あるはずの見えない安全な空間を魔力を蹴りながら移動していく。
(・・・おかしい。煙が・・・長い・・・?)
愛花の姿が見えないどころか、視界が広がらない。
(・・・戻れるか。)
怜奈は今来た道のりと、配置を考える。
こちらが煙に隠れてる以上、向こうもまだ見えていないはず。
煙の中を闇雲に魔弾を動かされる前に―脱出を図ろうとする。
一方愛花は・・・左右背後にあった魔弾同士を弾け合わせ、辺りをより煙に充満させながら、全力で後退していた。
弾けた音を聞かせたのは、自身の足音を出来るだけ聞こえなくさせる為でもある。
たとえその音で煙の増加という手の内がバレても、距離が取れればまた愛花のフィールドに持っていける。
そして、もし向こうが手の内に気が付かず、見えない地面に落ちようものなら―。
愛花は耳を澄ませて下がりながら待つ。
何か、地面から音が鳴った。
(・・・そこ!!!)
その位置に大量の魔弾が降り注ぐ。
その魔弾の雨に、煙はちりちりとなって掻き消された。
「・・・わお。・・・殺すつもり?」
「あー・・・当たるか不安で・・・。」
「・・・当たらなくてよかった。」
突き刺さった怜奈の短剣が霧散する。
その付近の地面はボコボコに荒れていた。
後退する際、愛花が全ての魔弾をそこに向かわせるよう短刀を地面に投げていたのだ。
改めて怜奈は武器を―
―鎌を創り出した。
「・・・見たことない武器。」
「・・・見た事ないの?・・・鎌って言うんだよ。」
「そうじゃなくて怜奈ちゃんが使うのを見た事ないって話ですー!」
怜奈の頬を一筋、汗が流れた。
「随分魔力消費高そうだね?」
「・・・無理やり、創ってるからね。・・・本物と比べてもだいぶ劣るけど・・・。」
真っ黒な刃は、まるで背筋を凍らせるような雰囲気を漂う。
「・・・デスサイス。」
振るわれた黒いオーラが、すっ飛んでくる。
「よっ!と!」
愛花は魔弾を放った衝撃で飛ぶように移動しながら、避けたその斬撃に魔弾を何発か当ててみる。
だが、その斬撃は全ての魔弾を斬り裂き、壁すら貫いて消えて行った。
「おおー・・・凄い威力・・・。密度使わなきゃ駄目かな?」
「・・・本来は避けさせすらしないけれどね。・・・劣化版じゃこんなもん。」
「怜奈ちゃんって結構負けず嫌いですよね。」
「・・・お互い様。」
戦いの最中だというのに、会話をしながら、2人は笑い合う。
学生時代からの仲、それから様々な戦場を経た2人の友情。
分かりあってるからこそ―安心して、心から負かしてやると意気込むのだった。
おまけネタ
舜「ラミツ・・・一体どんな奴なんだ?」
クーユー「そうだね・・・!?危ない!後ろだ!」
舜「うわっ!なんだこの黒いの!ラグナロク!!ラグナロク!!!」
こうして、怜奈の鎌から放った壁すら貫いた斬撃は、ようやく止まった・・・かもしれない。




