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第一章 5話目 道は遙か遠く

もう、これからは月曜日位に更新、とファジーにいくことにします。

超繁忙期です。

師走ですね〜。


 まず用意するのは洗濯などに使う大きなたらい。

 それに5mm程水を張って、布を染める時に使う赤い花をつぶして溶かし、奥庭の小川で拾ってきた、直径3cm程の丸く平べったい白い石を128個並べます。

 そのまま3日間放置したのち取り出して乾かし、仕上げにもう一回綺麗に洗って乾いた布でみがきます。

 すると片面がピンク色(布を染める時ほど紅くは染まらなかった…)で、片面が白い2色の石が出来上がるので、小袋2つに64個づつ分けて入れます。

 次に50cm四方の大きさの何かの動物の皮をなめした丈夫な布を貰ってきます。

 この世界にあるチェスに良く似た紳士の嗜み的ボードゲーム、シャトラ(軍駒とも呼ばれます)の盤面をお父様の書斎から借りてきます。

 40cm程の正方形が8×8に線で分割されているシャトラの盤面を布に写し取り、線の部分をメリサに刺繍してもらいます。自分でしたかったのですが、まだ針を持たせてもらえません。

 布の端っこがほつれないようにかがり縫いもしてくれ、ついでにワンポイントにお花の刺繍もしてくれました!濃い茶色のなめらかな皮布にアッシュグレイの糸で、シックでお洒落な感じに仕上がりました!

 小袋の口をリボンで結んで、革布もくるくる巻いてワイン色の組紐で結んで、出来上がりです!


「メリサ、ありあと〜」


 大満足な出来映えに満面の笑みの私に、メリサもにっこりと笑いかけてくれるが、刺繍糸や縫い針を片付けながら、不思議そうな表情になる。


「それにしてもお嬢様、おっしゃった通りに作りましたけど、それは一体何なんです?」


「え〜とね…う〜んと…」


 言葉で説明するのは難しいなぁ。目の前でやってみせれば一発なんだけど…。

 しかし、これはプレゼント。

 たくさん手伝ってくれたメリサには悪いけど、出来れば贈る相手であるシェス姉様に手渡してから、これはこうやって遊ぶんだよ!と種明かししたい。


 3日後に迫る次姉シェスティリアの誕生日プレゼントに何か手作りのものを贈ろう!と思いたったのは今から約3週間前。

 何を作ろうかな〜と考えながらの奥庭の小川での水遊び中に、水底に敷き詰められた石を見てピンときた。


「そうだ!オセロを作ろう!」

 

 もともと大きさの揃った、踏んでも痛くないように平たくて角の取れた丸い石を選って敷いてあったので、その中から白っぽい色をしたものを見つけるのはそんなに大変でもなかったが、出来れば色の感じも揃えたかったし、何しろ2歳半の子供の手ではいっぺんにたくさんは持てない。

 128個集めるのには小川に3回は通わなければならなかった。

 そんなこんなで出来上がった手作りオセロ。駒を入れる袋の作成や盤面になる皮布への刺繍など、重要な部分の半分はメリサにやってもらったので、「私の手作り!」と胸を張っては言えないけど。


「姉様にあげてから、どうやってあしょぶかおしぇるね!そしたらメリサもいっちょにあしょぼう!」

「まあ、遊ぶものなんですか?」

「シャトラみたいだけど、シャトラよりかんたんなの」


 それは楽しみです、と微笑みながらメリサがお茶の支度を始める。


 

 この世界ではまだまだ“娯楽”というものの幅が少ない。


 男性貴族の間では娯楽といえば狩りや、前述のチェスに良く似た「シャトラ」というボードゲームや、木彫りの札を使ったポーカーのようなゲーム。

 庶民の男性は、サイコロのようなものはこの世界にもあるので、それでチンチロリンのような賭け事をしているみたい。

 あとは双方ともお酒を飲んで語ったりする。

 独身の場合は花街に繰り出したりするのも娯楽のうちに入るのだろうか?


 片や女性がする暇つぶしや娯楽といえば、貴族女性の場合はお茶会をしてひたすらお洒落などに関してのおしゃべりか、刺繍やレース編み、詩作くらい。

 シャトラや木札のゲームは女性がするものではないという風潮。もちろん刺繍やレース編みを男性はしない。

 庶民の女性ならばやっぱりおしゃべり。刺繍やレース編みもするけど、それは売り物にしたりするものなので内職のようなものだ。


 男女共通するものといえば、旅回りで祭の時などにやってくる楽団や劇団や吟遊詩人などの歌や劇(モチーフは過去の偉人の英雄譚)や音楽、踊りを楽しむ事くらいかな?(貴族の場合は領地にやってきた評判の楽団などを館に呼んで楽しむ)

 絵画や彫刻などは貴族の屋敷や街の建築のそこここに、元の世界の現代なら美術館に収められていてもおかしくないような素晴らしいものが溢れてるのだけど、それを芸術として鑑賞するという感じではないし、絵を描く貴族はいない。

 それらは建築に関わる職人が建物を飾るために制作するものだからだ。

 もちろん美しい彫刻や絵画で自らの家を飾りたいので、腕のある職人は人気があるが、芸術家という概念はいまはまだないようだ。


 子供たちは男の子なら冒険ごっこやかけっこやちゃんばらごっこをして遊ぶし、女の子なら木の葉っぱや木の実を使ったおままごと。

 おもちゃなんてものもほとんどない。

 貴族なら、女の子はお人形や、おままごと用の小さなティーセット、男の子は積み木や木馬なんかを持っているけど、私が知る限りおもちゃと言えるものはそれくらいだろう。


 この国は中央から海にかけての平地に肥沃な農地が広がり、ところどころに広い森がある、気候温暖で地の恵み豊かな農業国だ。

 北から東に険しい山脈が広がり、南側は大海、西側は幅の広い河が通っていて、隣国と土地が直に接している部分がない、立地に恵まれた国でもある。

 その攻めにくい地形のおかげで、兵力では周辺諸国に劣るが、ここ数百年は戦争らしい戦争を経験していない。

 平和な国で、民が飢えるということはめったになく、のほほんとした平和ぼけした国民性で、内乱とも縁がない。


 唯一攻めてくる可能性(立地的に)のある国に、河を挟んでの隣国となる大陸の半分を占めるキオリク帝国がある。

 今は落ち着いているが侵略主義の大国で、本来はいくら広大な河を間にしているといえども気を抜けないはずの国なんだけど、大陸のほとんどの国が動乱のさなかにあった群雄割拠の戦国時代、後の帝国第一代皇帝となる人物に、彼が小国の王子だった頃から援助をしていた(どうやら当時の国王の友人だったらしい)関係で、代々強固な同盟を結んでおり、良好な関係を築いている。

 代々の皇帝の後宮に王家ゆかりの姫を側妃として嫁がせていて、歴代のなかには後の皇帝を産み正妃となった姫もいるみたい。


 我が国生産の食料の輸出先はほぼ帝国。一番のお得意様となっている。

 だいぶ相場より安い金額での不平等貿易だが、そのおかげでもはや侵略する必要なしとみなされている。

 いまやほぼ属国状態というか、周辺諸国には「帝国の食料庫」と影で言われていたりするんだけども。


 さて、私の今世での野望は、あまり目立たないようにしつつ、この世界に“娯楽”や“趣味”という概念を増やすこと。

 そして“物語”を広め、バリエーション豊かな、まだ私の読んだことのないたくさんの“物語”を読むことが出来るようになること。

 

 こんな平和が続くこの国で、そろそろカルチャー的な何かが芽生えても良い頃だと思うんだ。

 

 もうしばらくしてお屋敷の図書室に入室の許可が貰えて、めぼしい本を読み尽くしたら、そこから着想を得ました、みたいにしていろいろなパターンの“物語”を広めていき、紙を普及させて活版印刷までもってって…。

 それまでにぼちぼちと、知る限りかつ再現できる範囲でゲームや遊びも広めていって…。

 ああ、識字率もあげなきゃだけど、どうすりゃいいのか…。

 

 出来るかどうかわからないけど、今2歳半だから、とりあえず20年目標に頑張ってみよう。


 20年あれば、漫画なら「赤○鈴之助」が大人気だったのが「キャ○ディ・キ○ンディ」ブームに、小説なら三島由○夫の「金閣寺」から、村○龍の「限りなく○明に近いブルー」になるんだよ!

 20年あればなんとかなるはず!

 どんなレベルかはわからないけど、新しい物語が読めるようになるはず!


 しかし、目立たないように達成できる目標なのだろうか…。

 そもそも達成できるのかもあやしい…。

 先は長いなあ…。


来週も少し更新が遅れるかもしれません。

今週と来週を乗り切れば、あとは年末…!

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