キス魔
いよいよ本格的に、新曲の練習が始まった。期限は二週間。かなり短く思えたが、次のライブに合わせてのスケジューリングらしいので、仕方ないのだろう。で、実際に今日もリナが練習に行ってきたわけなのだが。
「なんでなんだろうな」
「やっぱりカイトくんがそばにいなきゃダメなのかな〜」
上手く声が出せなかったらしい。スタッフが集まったところで歌うとやはりプレッシャーを感じてしまうんだろうか。
「……俺がそばにいて解決するんなら、いくらでもいてやるけどな」
リナはふざけたことを言ってるけど、内心辛いはずだ。
「こないだカラオケに行った後は、問題なく練習してたんだろ?」
「そうだね。トレーナーさんと練習してる分には問題なかったんだけどね。今日色んな人と会って、多分また無意識にプレッシャー感じちゃってたのかなあ。情けないね、私」
「そんなことはないさ。むしろ、人の期待を背負っておいて何も感じてないよりよっぽどいいと思う」
「ふふ。ありがとう。やっぱりカイトくんは優しいね」
「ん、まあ。それより、実際どうするかだな。今度のライブまでに、どうにか調整していきたいよな」
「そうだね。でも、カイトくんが一緒にいてくれればきっと大丈夫だよ」
「うん。できる限り支えはするさ」
「……?カイトくん。私、結構本気で言ってるよ?」
ん?どういう意味?
「というと?」
「カイトくんが私と一生を添い遂げるって誓ってくれたら、私、それだけで勇気をもらえるから」
???
「……一生を誓うのはちょっと難しいかもしれないけど、当日ちゃんと応援には行くぜ?」
「もちろん当日は見守っててもらいたいけどね。というか、カイトくん言ったじゃん。できる限り私を支えてくれるって」
「……言ったけど。……もちろん、これからもリナのために曲を書いていくつもりはあるよ。それこそリナが引退するまで。それじゃダメか?」
「うーん。満足とはいかないけどね。じゃあせめて、こないだの返事を聞かせてよ」
「こないだ?」
「ちょっと時間空いちゃったけど、勢いで告白しちゃったでしょ?」
ああ、あったね。あれ以来色々おかしくなったんだっけ。
「返事って」
このタイミングでノーとは言えないだろ。
「ちょっとずるいタイミングで聞いたのはわかってるけどね」
「……いや。……その、さ。俺もリナのこと、好きになってるのは間違いないよ」
ユイも同じぐらい好きだけど。
「じゃあ、これから私たち付き合うってことでいいんだよね」
いいのかな。
「……そうだ……」
「いいわけないでしょ!!」
ユイがきた。嫌なタイミングで。
「カイト?一旦落ち着くまで保留にしようって言ってたじゃない!何勝手に話をしてるのよ!?」
「……あんまり人のせいにするようなことは言いたくないが、俺からは何も言ってないぞ」
「でも、カイトくんだって乗り気だったでしょう?」
まあ悪い気はしなかったというかね。
「……ねえカイト。この際はっきり言ってよ。どっちが好きなのかって」
え。
「そうだね。カイトくんがはっきりしてくれればそれですむ話だね」
そりゃそうだけども。
「……どっちも好きだなあって……」
「は?」
「カイトくん?」
めっちゃ睨まれてる。低い声出すのやめて。怖いから。
「真面目な話さ、今すぐ決めろって言われても困るぐらい、二人のこと好きなんだよ。悪いことだってのは分かってるけどさ」
「だってさユイちゃん。こんなクズのカイトくんと付き合ってもいいことないよ。やめといたら?」
「カイトは昔からこういうとこあったの。小学校の時とか酷かったんだから。リナこそ、もっといい人いるんじゃない?」
「「……」」
あっ。なんかヘイト逸れた。ラッキー。
「……ねえカイトくん。キスしてよ」
逸れてなかったわ。
「なんでよ!?」
「カイトくんがキスしてくれたら、頑張って歌えるから。ね?」
「意味わかんないんだけど」
「……目、閉じてくれよ」
「カイト!?」
ちゅっ
軽めにいった。
「カイト!」
「ごめんね、ユイちゃん。でも……」
「ユイも目を閉じて」
「え?」
「ん?」
ちゅっ
「……カイトくん?」
「……夕飯できたら呼んでくれ」
「……」
「カイトくん!ねえちょっとカイトくん!?」
自室に逃げた。
あれ、なんかメールきてる。なんだろ。
「桃井くんの件だが、リナくんのライブの日に顔合わせをできたらと思う、か」
ほんとにあの子とも仕事をすることになるのか。全然実感が湧かないというか。
「結構いいコネを手に入れたのか?俺」
今うまくやっておけば、将来の仕事に困らないんじゃないだろうか。それはそうと、どんな子なんだろうなあ。今からちょっと楽しみだな。
桃井くんは、ちゃんと出る前に一旦完結させます。一応キャラ設定は作ったので(完全に私の趣味で)、そのうち続編書くかもわかりません。




