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ライブを乗り切り

あのキスをした日のあと、リナは問題なく声が出せるようになったらしい。本当にキスのおかげなのか、それとも別の要因があるのか。あるいは、声が出ないなんて実は嘘だった……いや、これはない。リナはちゃんと信念を持って仕事をしてる。冗談でもこんなこと言ったら、きっといくら好かれてても幻滅されちゃうな。

……とにもかくにも無事スランプは乗り越えられたようで、今日はライブ本番。リハーサルもあって、リナは昨日から家にいなかった。招待客としてユイと一緒に特等席で見れることになっており、今は待ち時間。


「なあ、リナとのこと、やっぱり怒ってるのか?」


あの日から今日まで、二人から特別アクションはなかった。忙しいリナはともかく、ユイはたぶん……すごく気を遣わせたんだろうなと思う。生活の中でも、なんだかんだリナへの思いやりが見えてたから。


「今話すことじゃないでしょ?」


やっぱ気を遣っててくれたんだよな。


「いや、俺もそうは思ってたんだけどな。なんか二人きりになると、どうしてもな」


「……ねえカイト」


「ん?」


「カイトがこの先どうするつもりなのかは知らないけど、どうあってもカイトとの縁が切れちゃうのは嫌だからね」


「どうあっても……」


「少なくとも、幼馴染以下の関係になるのは認めないってこと」


「……いっそリナとうまくやれないかな。三に……」


「……」


冗談……でもなかったけどさ。睨まないでくれよ。


「……結局カイトが決定権を持つのは確かだけどね。……結局先に惚れたのはこっちなんだから」


「……ちゃんと口に出されると照れるな」


「……はいはい。もう行きましょ?関係者席はそろそろ入れるでしょ」


実際、これまでなんだかんだやってこれてた。二人が俺に甘くて、しかもすごく互いに配慮してくれてたからっていうのは分かってるけど。俺の考え方が甘いんだろうか。

……そんなことを考えながらユイと色々話をしてたら、あっという間に時間になっていた。


「みんなー、久しぶりだねー。元気だったー?」


元気だったよー、なんて声があちこちから聞こえてくる。


「ありがとー!私も元気だったよ。長めに休みを取れたから、こないだは動物園に遊びに行ったりもしたんだ。パンダさんが可愛かったなあ」


リナちゃんの方が可愛いよー、って聞こえてきた。俺もそれはそうだと思う。というか、こないだのデートの話だよな。さらっと話してしまえるあたり、リナは結構スペック高いよな。当然だが。


「じゃあ、早速一曲目行こうか。みんな、今日は楽しんで行ってねー」


……ライブはつつがなく進行していった。やっぱりリナってちゃんとアイドルなんだな。理解していたつもりではあったけど、こんな大勢の前で歌って踊って。普段のリナの様子からじゃちっとも想像がつかなかったけど、これだけの重圧に向き合ってきたんだ。すげえや。


「いやー、盛り上がってきたね。みんな楽しんでくれてそうで、私も嬉しいな」


実際楽しい。生のコンサートってやっぱ楽しいんだな。


「で、次の曲なんだけど、実は新曲なんだ。私が尊敬してる音楽プロデューサーの、デフロストさんって人がいてね?その人に作ってもらった曲なんだけど、みんな気に入ってもらえるといいな」


来た。


「めちゃくちゃ緊張するんだけど」


「大丈夫よ。ぶっちゃけ、リナが歌ってれば間違いなく聞いてくれる人はいるんだし」


「それはそうだけど。……いや、そうだな。俺よりもリナの方がよっぽど緊張してるはずだもんな」


「信じれば大丈夫よ」


ありがとう。やっぱユイもいい女だな。


……ライブは終わった。俺の曲も、まああんなものだろう。新曲に対する反応なんて、まだよくわからないというのが大半だろうから。事務所の車に乗せてもらって、三人で帰ってきた。


「……ユイ。ぶっちゃけどうだった?俺の曲」


でもやっぱ気になる。意見を聞きたい


「お客さんの反応がって話なら、別に普通かな。可もなく不可もなくって感じ。またMVも上げるはずだから、そこで反応見れると思うよ」


「……まあ、そうだよな」


「少なくとも、私はカイトの曲が一番好きだったわよ」


「私もだよ。カイトくんの想いを背負っていたからこそ、今日頑張り抜けたんだもん」


「……ありがとう。二人とも」


安心感もあって、少し涙が流れてしまった。そうしたら、二人が左右から抱きしめてくれた。


「大好きだよ。二人とも」


そっと俺も二人を抱き返した。んだけど。


「まさかこのまま有耶無耶にしようとは思ってないわよね?カイト」


「それとこれとは話が別だからね?カイトくん」


「……いっそさんぴ……」


「カイト!」


「カイトくん?」


どうしよう。いや、俺が悪いんだけどさ。どっちも選びたいし、どっちも離れてほしくない。人間欲が出ると、どんどんダメになるよなあ。

……あれ、そういや今日、桃井ちゃんと会いそびれたな。ああ、たしか結局都合が悪くなったから、明日会うことになったんだっけ。朝早いし、もう寝ちまうか!

多分明日で終わるはずです。まだ書きたい気持ちもあるんですけどね。もう一つの方放置してるし。

あと、アイドルってMCで何を話すんすか。マジでわからんから雰囲気です。

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