結衣に好きな男がいるだと????
翌朝。昨日は全然眠れなかった。でも起きないわけにもいかないので、強い眠気を堪えながらリビングまで降りると、ユイが朝食を作ってくれていた。ありがたい。
「おはよう。マジで朝飯も作ってくれるんだな。ありがとう!ユイ」
「おはよう。昨日も作りに来たんだけどね?」
「……」
何も言えんよ。
「……ごめんごめん。昨日のことは一旦なしにしたもんね。ほら、リナさん起こしに行ってくるから、先に食べててよ」
ありがとうユイ。……オムレツうめえ。
「おはよー。カイトくん」
「……!お、おはよー。リナくん」
なんか変な返ししちゃった。てか何でリナは平然としてるんだよ。あれ、でも今日はちゃんと着替えてる。髪も綺麗にしてるし、意識はされてるのか?
「ん?どうしたのカイト。なんか様子おかしくない?」
「そんなことねーさ。ちょっとリナの真似をしてみただけだよ」
「……」
「……?」
……その後、普通に朝食を食べて、何事もなく家を出た。昨日のこと、リナと話しそびれたなあ。
「……ねえ。やっぱ今日変だよ?カイト」
「え。……そうかな」
「うん。朝もそうだし、今もずっと、何だか上の空じゃん。何かあった?」
「……まあ。……なあユイ」
リナのこと、軽く相談してみようかな。
「なに?」
「……ユイって好きな男いるか?」
「え!?」
急に大きい声を出して立ち止まるユイ。やめて。マジでびっくりしたから。
「何でそんな反応するんだよ。もしかしているのか?」
「え、……えーっと。どうかな」
……何だその反応。本当にいるのか?……あれ、なんかモヤモヤするな。
「何だよ。はっきりしないな」
「……カイトはさ。知りたい?私が好きな人がいるかどうか」
「……ああ。知りたいよ」
「……いるよ。好きな人」
「え。……マジか」
マジかよ。え、マジかよ。……誰だよ。どこのどいつだよ。俺のユイを誑かした野郎は!
「……なあユイ。誰だよ」
「……え?」
「誰のことが好きなんだよ。ユイ」
「え。……そんなの、恥ずかしくて言えるわけないじゃん」
顔を真っ赤に染めるユイ。ああ、なんか息切れしてきた。ユイに好きな奴がいるって聞いただけで、こんなにもしんどくなるなんて、思いもしなかった。
「いいじゃん。教えろよ」
「……そんなに気になるんだ。私の好きな人のこと」
顔を赤くして、なぜかニヤニヤしながらこちらをチラリとみてくるユイ。ふざけんな。俺は今そんな楽しい気分じゃねえ。ニヤニヤしないでくれ。
「ああ、気になる。けど……」
「けど?」
「……ごめん。やっぱ今はいいや。早く行こうぜ」
好きな男の名前を聞いたら、今からでもそいつをぶん殴りに行ってしまいそうだ。
「え?……え?ちょっと、今の流れで聞かないことあるの?ねえちょっと!?」
……そのまま学校に行った。が、ずっと気分は晴れない。ユイが誰か別の男と一緒に生きていく?わけわからん。……とりあえず昼飯誘うか。
「……ユイ。一緒に学食行こうぜ」
「……え?カイト。うちのクラスまで来てどうしたの。学校でわざわざ会いにくるなんて珍しいじゃん」
「いいじゃん。ほら、行こうぜ」
この手も。今は誰のものでもないよな?
「え、え、え。ちょっ。いきなり手を握るなんてどうしたのカイト。やっぱ今日変だよ?」
「そんなことねーよ。可愛い幼馴染と手を繋ぎたいって思うのは当たり前だろ?一緒に飯を食いたいって思うのもさ」
「……やっぱ変だよ。変すぎて……私夢を見てるのかなって」
「何言ってるんだよ」
なぜか俯いたまま、俺に引っ張られるようにして歩くユイ。危ないだろうよ。
「ちゃんと前見てくれよ」
「うん。……カイトだけを見てるね?」
「ん?」
なんかボソッと、変なこと言わなかったか?
……俺はカツ丼。ユイは天ぷらうどんを頼んだ。
「ねえ、カイト。海老天一個あげようか」
「え?マジでか。くれるんならもらうけど」
「うん。じゃあはい。あーん」
「……」
ん?
「ほら。あーんしてよカイト。あーん」
マジで?何で急に?
「ど、どうしたんだよ。なんか変だぞユイ」
「……か、カイトが先に変になったんでしょ。だからおあいこ」
「そんなこと。……あーん」
……美味い。そしてすごく幸せだ。あれ、何を悩んでたんだっけ。
その後も楽しくご飯を食べた。俺のカツも、ユイに食べさせてあげた。照れるユイも可愛かったなあ。
「カイト。今日は手を繋いで帰ろう?」
いつも通りの帰り道。だけど、今日はいつもと違って、ユイと手を繋いでる。たったそれだけの違いなのに、世界が違って見える。俺、こんなにユイのことが好きだったんだなあ。
「ねえ、もっとくっついてもいいでしょ?」
ユイが思いっきり体を寄せてきた。
「じゃあ俺もお返しに」
そっとユイの腰を抱いた。ユイの好きな男なんて知るか。ユイがこれだけ俺を受け入れてくれてるんだ。ゆいは誰にも渡さん!
「もう家か」
「だね……ねえカイト。お夕飯の時間まで、カイトの家で一緒にいていい?」
「ああ。もちろんだ」
今日は何だかすごくいい日だったなあ。そう思って家に入っていった。
「「ただいまー」」
「おかえ……り?……どうしてくっついてるの。二人とも」
あ。朝悩んでたこと、今思い出したわ。
ただの鈍感野郎じゃなくて、結構独占欲強いタイプなんですね。カイトくん。




