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莉奈との夜会

帰ってきたら、鬼の形相のユイが待っていた。本当に毎日来てくれるんだな。ありがたいけどさ。


「おかえり二人とも。で、学校サボってどこ行ってたの」


一応、リナと出かけてくるとメールだけ送っておいたんだけど。まあそりゃお叱りムードだわな。サボったんだもの。


「ちょっとリナに付き合って動物園にな。まあ、有名人だから、休日には行きづらいだろうしさ」


「学校サボってデートしてたってわけ!?」


「まあまあユイちゃん。私が無理につき合わせちゃったんだから、そんなに怒らないであげたらどうかな」


「……なんでちょっと他人事みたいなのよ。あと、別に私だって怒りたいわけじゃないんだけど」


「もうしないからさ、ユイ。許してくれよ」


「……本当にもうダメだからね?カイトはあんまり頭いいわけじゃないんだし、サボってると後々大変なんだから」


「おう。約束するよ」


「うん。じゃあもういいわ。早くご飯食べましょ?お腹空いたでしょ、二人とも」


「そうだな」


「そうだねー」


……ユイの作った美味い晩飯を食った後、さっそく作曲活動に取り掛かった。


「……うん。いいかもしれない。女の子を見てドキドキしたから恋の歌を作るなんて、小っ恥ずかしいけど。でも、このまま形にしていけば名曲が生まれるぞ」


よし、少し休憩するかとヘッドホンを外し、立ち上がった時。


「うわああああああ」


背後にリナが立っていた。え、うそ。いつの間に立ってたんだよ。でもなんか、いつもと雰囲気が違うな。


「あれ、ごめん。脅かすつもりはなかったんだけど」


「いや、こっちこそ大きな声出して悪かった。で、何か用だったのか。俺の部屋まで来て」


「大したことじゃないよ。ただ、作曲の調子はどうなのかなって。デフロストさんの」


「え?……話してないよな?俺の活動のこと。というかカラオケでのあれはやっぱり……」


「やっぱりそうだったんだね。鎌かけたつもりだったんだけど、全然自分から話してくれないんだもの」


「ん?あ、今のも誘導だったのか。……まあいいや。というかリナ。よく俺のこと知ってたな。日夜テレビで活躍するアイドルに比べたら、俺なんてゴミみたいなもんだと思うんだが」


一瞬テレビでも紹介されたけど、本当一瞬だぞ。


「言ったでしょ、曲が好きだって。私あなたのファンだもの」


「え、まじで言ってる?一応リナって、国民的アイドルの星宮莉奈だったよな。実は」


「……何で一応って言ったの?」


「……すまん」


今の自分の姿、鏡で見てこいよ!とは言えない。リナって睨むとけっこう迫力あるもの。


「もしかして、俺のこと知っててうちに来たのか?」


「私は知らなかったけどね。でも、うちの社長が無駄なことするわけないもの。特に調子を崩してる私に対してね。何か訳があるんだろうなと思って、お風呂に入ってる隙に、カイトくんのパソコンを調べさせてもらったのよ。そしたらビンゴ」


「マジかよ。まあパスワード設定してないもんな」


「流石に不用心すぎるよ?もちろん誰も触りに来ないんだろうけどさ」


「気をつけるわ」


「とにかく、なので、私がカイトくんと会って元気をもらうことを期待してたんじゃないかな。実際ファンとしては、会えるだけで嬉しかったしね」


「でも、俺に会ったって何もしてあげられないぞ?まあ、サインぐらいなら……」


「いらな……あとでもらおうかな。じゃなくて、実はカイトくんにお願いがあってきたの」


「お願い?」


「カイトくんに、私のために曲を作ってほしいの。私が歌うための曲を」


「ええ!?星宮莉奈に歌わせる曲を作るなんて、そんな大役引き受けられないぞ!」


「お願い!無茶を言ってるのはわかってる。でもね、この三日間一緒に過ごして、カイトくんのことを知りすぎちゃったんだ」


「どういう意味?」


「初日はさ、カイトくんの正体を調べて、ただファンとして元気をもらおうかなと思ったよ。でもさ、カイトくん優しいんだもの。グータラな私をただ叱りつけるんじゃなくて、私に合わせてくれたじゃん。そんな人、今までいなかったんだよ。プライベートの私を否定しないでいてくれる人」


「俺だって、ダメなやつだなあとは思ったぞ?」


「でも、私を受けれてくれたでしょ?」


「まあ、な」


「だからさ。私、好きになっちゃったんだ。カイトくんのこと」


「うん……え?……もう一回いいか?」


聞き間違いじゃないよな。ああ、顔が熱い。絶対真っ赤になってる。


「……聞こえたでしょ?」


リナも顔を真っ赤にしてる。多分聞き間違いじゃないな。


「とにかく!あなたと、一緒に何かを成し遂げたいって欲が出ちゃったの!」


「……愛の結晶が欲しい的な?」


どーん


両手でどつかれて、尻餅をついてしまった。リナは珍しい表情をしてる。もっとヘラヘラしてる印象だったのに。そうだ、こんな時は!


「リナ、怒った顔も可愛いよ……ぐえっ!」


倒れ込んだ体制のまま、思いっきりのしかかられてしまった。


「まだ早いんだから、変なこと言って煽らないで。もうちょっと段階を踏ませて」


よくわからないことを言い残して、部屋を出ていってしまった。てか、結構すごいことを話したよな。


「明日からどんな顔して会えばいいんだよ……」


もう寝よう。

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