幼馴染は決意する
「うーん。いまいち今日は乗らないなあ。前回の発表からだいぶ日も空いてきたし、そろそろ新作を発表したいんだけどなあ」
夕飯を食べたあと、自室で仕事をしていた。でも、ダメだな。今日は朝から気疲れしたし、もう休もう。それにしても。
「せっかくアイドルと、しかもあの星宮莉奈との同棲生活!……と思ったんだけどなあ」
出前の夕飯が届いたあと、部屋に呼びにいった時もひどかった。いくら声をかけても、ドアを叩いても反応がなかったので、そっとドアを開けて覗いてみたら、ベッドの上でヘッドホンをして、ポテチを貪りながらゲームをしていた。およそ国民的アイドルの休日の姿としては、考えられないものだ。
「まあ、勝手に幻想を抱かれても困るんだろうけどな。契約しちゃったし、とりあえず面倒見てやるか」
期待してたほど美味しい展開にはならなそうで残念だが、仕方ない。とりあえず寝よう。
……翌朝。
普段料理なんかしないが、作ってくれる人間がいないので、朝食も自分で作るしかなかった。リナもいるし最低限は用意しないとな、とネットで作り方を調べながら、どうにか目玉焼きと味噌汁を作った。
コンコン
「おーい。起きてるかー。朝飯用意できたんだけど」
……全然出てこない。もう一度声をかけてみようか。そう思った時。
ガチャ
「はいは〜い。おはよ〜。ごめんね。ちょっとクエストの途中だったんだよね」
リナが現れたのだが、なんとジャージの着こなしがゆるゆるで、ブラが見えてしまっている。かわいい刺繍の、ピンクのやつだ。そこはなんとなくイメージ通りだなあ。指摘すべきかな。
「……おはよう。ゲームもいいけど、とりあえずご飯を食べようか」
「は〜い」
まあ役得だからね。本人気にしてなさそうだし。
……ダイニングまで来た。
「わ〜美味しそう。カイトくん、料理上手だね」
「ありがとう。調べながら雰囲気で作ったものだから、味は保証しないけどね」
「大丈夫大丈夫。では、いただきまーす。……うん。美味しいよ。ちゃんとお味噌汁してる。目玉焼きも」
「そう?……うん。思ったよりちゃんと作れててよかった」
あれ、なんかいいかも。今のリナの見た目はだらしないけど、女の子とのこういう朝の会話って楽しい。なんだか胸踊る気分。もっとリナにいろいろ作ってあげたいかも。
ガチャ
「リナ。今日の晩のリクエストある?あんまり難しいのは無理だけど、せっかくだしチャレンジしてみるよ」
「うーん。そうだなあ。私お肉が大好きなんだよねー。だから……」
「おはよーカイト!ちょっと早いけど、迎えに来ちゃ……だれよその子!」
「ユイ!?」
リナとの会話に夢中で、家に入ってきたことに気づかなかった。
「私?昨日からカイトくんと一緒に住むことになった、星宮莉奈って言います。よろしくねー」
「一緒って、どどど同棲!?」
どーいうことよ!?と妙に興奮した様子で聞いてくるユイを落ち着かせながら、事情を説明した。
「……事情はとりあえず理解したけど、やっぱり同棲っておかしくない?もうウブなネンネじゃないんだよ?」
「まあ、決まったことだししょうがないじゃん」
割と楽しいかもしれないし。
「しょうがないって……ねえ、リナさんも……な!あなたそんなだらしない格好して!」
ユイがさっとリナのジャージのファスナーをあげる。もったいない。
「……」
気づいていたわよね?と鋭い視線を送られる。どうしたの?と首を傾けておこう。
「あとリナさん?いくらなんでも男子の前でジャージはダメです!気を抜きすぎ。髪もボサボサだし」
「あははー。まあ、今はオフだしね。いつも周りの人に色々やってもらってたからさ」
「なっ、周りの人って」
「あ!そうだ。カイトくんに色々お願いしようかな。私の身の回りのお世話してくれるって話だもんね。服とか髪とかもついでじゃん?」
「全然ついでじゃないと思うぞ……」
「ダメに決まってるでしょ!それじゃ本末転倒じゃない。というかカイト、そろそろ時間だから、行きましょ」
「ああ。そうだな」
「じゃあリナさん。ちゃんとカイトが帰るまでに髪と服をなんとかしておいてね?」
「はーい。二人とも気をつけてね〜。あとユイちゃん。リナって呼び捨てでいいよ。同い年だしね」
リナに見送られ、家を出た。
「ねえカイト。まさかリナが美人だからって、あのまま家に置いておくつもりじゃないわよね」
「一応契約だしさ。しかないだろ?別に美人だからじゃないさ」
野郎だったら話は別だが。
「……私が入って行った時も、デレデレしながらリナと話してたじゃない」
「デレデレはしてねーよ。平常運転だったよ」
「……嘘」
なんだか妙に突っかかってくるな。生理かな。
「……体調悪くないか?」
「……え?なに突然。大丈夫だけど。ありがとう」
そう言ったあと、少し何かを考え込んでいる様子だったユイは、突然こう告げた。
「……決めた。明日から、私が朝ごはんとお夕飯を作りに行ってあげるから」
「え?なんでだよ」
「いいでしょ。今までだって何度も作ってあげたじゃない。そんな遠慮するような仲じゃないでしょ?」
「別に遠慮してるわけじゃなくて……」
「いいから!もう決定事項なの!ほら、いそご?」
なし崩し的に決定事項にされてしまった。ユイの料理は美味いから嬉しいけど。
今時のヒロインを知らないから、どうしても平成のツンデレ幼馴染っぽくなってしまう。




