押し売られアイドル
休日の朝。気持ちよく目覚めた俺は、いつもどおり顔を洗い、いつもどおり歯を磨いた。あとはいつもどおり飯を食って、ゲームでもするか。そう思っていたのに……
「借金が返しきれないので、海外へ逃げます。行き先は教えられません。一人で頑張って生きていってね♡」
ダイニングのテーブルに残されいたメモが、俺の気持ちをどん底に叩き落とした。
「……ふざけんなよおおおおおお!?」
どうしよう。ああどうしよう。借金ってなんだよ。いくらなんだよ。
「ていうか、この家はどうなるんだ?まさか住む家がなくなるなんてことはないよな?」
とにかく島根の爺さんにでも連絡を……そう思っていた時、チャイムが鳴った。
ピンポーン
「誰だよ、こんな朝っぱらに。悪いけど今それどころじゃないんだよ」
ピンポーンピンポーン
割としつこいな。早く帰ってくれよ。
ピンポーン……ピピピピピピンポーピピピピピピンポーン
うるさくて敵わない。もうさっと相手して、とっとと帰ってもらうか。
ガチャ
「……はい。どちらさまでしょうか?」
「おほん。君が、神崎海斗くんで間違い無いかね」
「……?そうですけど、どちらさまでしょうか」
ピッチピチの白いスーツを着た、妙に体格のいい中年の男が立っていた。変に威圧感があるな、このおっさん。
「うむ。両親から借金については聞いたかね」
「……どうして、うちの事情についてご存知なんですか」
え、変態の富豪に売られた?まさか。そんなまさかね。
「あまり時間がないのでね。説明は後で聞いてくれ。要点だけ話そう。一つ。君には、これからうちのアイドルと同居し、彼女の世話をしてもらう。二つ。その代わりに、君の両親の残した借金は、私が肩代わりしよう」
「……アイドル?……はいいとして、借金を肩代わりしてくれるって言うのは本当ですか?」
「本当だ。ここにハンコを押してくれ。実印だぞ」
……朝から訳のわからないことが起こりすぎてて、もうよくわからなくなってきた。まあ、とりあえずハンコを押しておけばいいよな。
「……はい。これでいいんですよね?」
「うむ。君の借金は、確かに引き受けた。では、私はこれで失礼する」
「えっ。今言ってたアイドルがどうこうって言うのは?」
スーツの男は、こちらの言葉には答えない。代わりに、家の前に止めてあった車のドアを開けたかと思うと、こう言った。
「莉奈くん、降りたまえ。話はついた。今日からここが君の家だ」
はーい。そんな返事が聞こえたかと思うと、ガチャっと後ろのドアが開き、女の子が出てきた。めちゃくちゃ可愛い子だ。そしてそのまま玄関まで歩いてきて、こう告げた。
「どうもー。私、星宮莉奈っていいまーす。一応、アイドルやってます。よろしくね?カイトくん」
星宮莉奈?まさか、あの星宮莉奈か?アイドルなんて興味ない俺でも知ってるぞ!?
「よ、よろしくお願いします……」
「あはは〜。そんなに硬くならないでも平気だよ。ほら、肩の力抜いて、ね?私もゆるゆるでいくからさ。気軽にリナって呼んでみて?」
「……リナ……さん」
「ふふ。呼び捨てでいいよ」
「……リナ」
「うん。じゃあ早速だけど、お邪魔してもいいかな」
「ああ、もちろん。あ、よかったら荷物運ぶの手伝うよ?」
「ううん。大丈夫だよー。どうせ荷物ってこれだけだし」
そう言って見せたのは、小さめの旅行鞄一つ。あとから運び込むつもりなのかな?
「そっか。じゃあとりあえずうちの中を案内するよ」
「うん。お願いしまーす」
……そうして家の中を案内したあと、話し合いをし、母さんの部屋を使ってもらうことになった。
とりあえず昼飯にしようと言うことになり、スパゲティを茹でたので、部屋までリナを呼びにいった。のだが……
コンコン
「リナー。飯ができたから食おうぜ」
「うーん?ああ、は〜い」
なんだかさっきまでと違って、すごく気の抜けるような声で返事が返ってくる。そして。
ガチャ
「はいは〜い。おまた〜。じゃあ食べに行こうか〜」
出てきたリナは、まさかの全身ジャージ姿。片手にゲーム機を携えている。さっきまで綺麗に整えられていた髪も、なぜかこの短時間でぐちゃぐちゃに。可愛い国民的アイドルとの、嬉し恥ずかしな同棲生活が始まると思ってたんだけど……もしかしてリナって実はダメ人間?
ざっくり最後までの構成は作ってあります。内容濃い目で、1週間もあれば完結すると思います。




