↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリームライド〜異世界創造、夢の旅〜  作者: 神谷 夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/34

第21話 光と影

第21話 光と影


ガキン――!


激しい金属音が。


ラグニル山に響いた。


バルガの剣を。


ガルドが正面から受け止めている。


刃と刃。


互いの力がぶつかる。


「っ……!」


バルガが。


さらに剣を押し込む。


だが。


ガルドの身体は。


ほとんど動かなかった。


「やめろと言ったはずだ」


低い声。


次の瞬間。


ガルドが。


力任せに剣を弾いた。


バルガの腕が。


大きく外へ流れる。


「くっ!」


ガルドが。


一気に懐へ入る。


剣の柄。


腹へ。


「ぐっ……!」


バルガの身体が折れた。


そのまま。


足を払う。


ドサッ!


背中から。


地面へ叩きつけられた。


その横では。


シドがロウガへ斬りかかっている。


一撃。


二撃。


三撃。


細身の身体から。


速い剣が続く。


だが。


ロウガは。


その全てを受け流していた。


カイの視界。


赤い線が。


シドの剣先から伸びる。


「ロウガ! 下から!」


ロウガの剣が下がる。


ガキッ!


跳ね上がった刃を。


正面から止めた。


「なっ――」


シドの表情が変わる。


ロウガが。


一歩前へ。


肩が。


シドの胸へぶつかった。


「がっ!」


大きくよろめく。


手から。


剣が落ちた。


ロウガの刃が。


首元へ突きつけられる。


「動くな」


残るケイン。


ヴァンと剣を交えていた。


ガキン。


ガキン。


二度。


刃がぶつかる。


三度目。


ケインが振り下ろした剣を。


ヴァンが横から弾く。


剣が。


宙を舞った。


「っ!」


次の瞬間。


腕を取られる。


背中へ。


強く捻り上げられた。


「ぐっ……!」


ケインの膝が。


地面へ落ちた。


それまで響いていた金属音が。


消える。


残ったのは。


川の音。


荒い呼吸。


そして。


地面へ倒れた三人。


レオンが。


剣を構えたまま周囲を見る。


ガルドは。


倒れているバルガへ剣を向けた。


バルガが。


ガルドを睨む。


「……殺せ」


ガルドの眉が動いた。


「そのつもりはない」


「なら」


バルガが。


荒い息のまま言う。


「何のつもりだ」


「聞きたいことがある」


ガルドが。


剣を下ろした。


⸻


三人の武器を取り上げ。


麻袋に使われていた縄で。


両手を縛る。


バルガ。


シド。


ケイン。


三人を。


岩壁の前へ座らせた。


ガルドが。


その正面へ立つ。


「なぜ火晶石を川へ入れた」


バルガは。


俯いたまま。


答えない。


ロウガが。


麻袋を持ち上げる。


中には。


まだ大量の火晶石。


しかも。


細かく砕かれている。


「これだけ用意しておいて」


ロウガが言う。


「屑石を捨てていただけとは、もう言わないだろうな」


バルガの拳が。


ゆっくり握られた。


「……黒炉を守るためだ」


ガルドの表情が変わる。


「何?」


バルガが。


顔を上げた。


「俺たちは」


一度。


言葉が止まる。


「黒炉を守っただけだ」


「子どもを殺してか」


ガルドの声が。


一段低くなった。


バルガの表情が。


固まる。


しばらく。


何も答えなかった。


やがて。


視線を落とす。


「……こんなはずじゃなかったんだ」


ロウガが。


バルガを見る。


「何がだ」


「最初は……」


バルガの拳が。


さらに強く握られる。


「言われた通りにやっていただけだった」


「火晶石を砕いて」


「決められた場所へ沈めろと」


ガルドが聞く。


「誰に」


バルガは。


一度目を閉じた。


「ヴォルグ様だ」


ガルド。


ロウガ。


二人の表情が変わった。


「ヴォルグ族長が?」


「ああ」


バルガが。


苦しそうに息を吐く。


「これで黒炉を守れると……そう言われた」


「どういう意味だ」


バルガは。


すぐには答えなかった。


その横で。


シドも。


ケインも。


俯いている。


「他の四つの集落は」


バルガが口を開く。


「黒炉を切り捨てるつもりだと聞いた」


ガルドの眉が寄る。


「何?」


「何年負け続けたと思っている」


バルガの声が。


少しずつ強くなる。


「武闘会では毎年最下位」


「採掘できる量は減る」


「良い鉱区も取れない」


「他の集落との差は広がるばかりだ」


ロウガは。


黙って聞いている。


「次の武闘会でまた負ければ」


バルガが続ける。


「残された鉱区まで奪われる」


「黒炉は採掘も」


「鍛冶もできなくなる」


「そうなれば」


「集落そのものが終わると」


ガルドが聞く。


「誰がそう決めた」


「五族長会議だ」


一瞬。


ガルドが黙る。


そして。


「そんな話は聞いていない」


バルガの目が。


鋭くなる。


「お前が知らないだけだ」


「少なくとも」


ガルドは。


バルガから目を逸らさない。


「我らの族長から、そのような話を聞いたことはない」


「ヴォルグ様が嘘をついているとでも言うのか!」


バルガが。


縛られた手のまま身体を起こそうとする。


ロウガが。


一歩前へ出た。


バルガの動きが止まる。


「ヴォルグ様は」


バルガが。


歯を食いしばる。


「黒炉を救おうとしている」


「俺たちの集落を」


「家族を」


「守ろうとしているんだ」


ガルドは。


静かに聞いた。


「それで」


バルガを見る。


「子どもたちに症状が出始めても続けたのか」


バルガの目が。


揺れた。


「……最初は」


声が。


少し掠れる。


「火晶石のせいだなんて思わなかった」


「言われた通り」


「決められた日に」


「決められた量を沈めていた」


拳が。


震える。


「そのうち……」


「子どもたちが体調を崩しているって話を聞いた」


誰も。


口を挟まない。


「それでも」


「まだ分からなかった」


バルガの声が。


さらに小さくなる。


「でも」


長い間。


言葉が出なかった。


「……死者が出た」


ガルドの目が。


バルガを捉えたまま動かない。


「その時には」


バルガが。


俯く。


「もう……俺たちも疑ってた」


「自分たちがやっていることが」


「原因なんじゃないかって」


ロウガが。


低い声で聞く。


「だったら」


「なぜ止めなかった」


バルガの顔が。


歪んだ。


「……遅かったんだ」


「遅くなどない」


ガルドが即座に返した。


バルガの肩が。


僅かに震える。


「分かってる」


「そんなこと……分かってるんだ」


顔を上げる。


そこには。


さっきまでの鋭さとは違うものがあった。


「でも」


「俺たちは何か月も続けていた」


「死者まで出た」


「その時になって」


「全部俺たちがやりましたなんて言えるか?」


「言えば」


「俺たちだけじゃない」


「黒炉まで終わる」


ガルドは。


何も答えなかった。


「家族も」


「集落の者も」


「全部巻き込まれる」


バルガが。


苦しそうに息を吐く。


「止めるべきだった」


「分かってる」


「最初の一人が倒れた時でも」


「死者が出た時でも」


「いつだって止められた」


「でも……」


その先は。


続かなかった。


シドが。


隣で顔を伏せている。


ケインも。


唇を噛んだまま。


一言も発しない。


カイは。


三人を見ていた。


川で見つかった時。


剣を抜いた。


逃げようとした。


「誰も帰すな」


とまで言った。


そして。


負ければ。


「殺せ」


今なら。


少しだけ。


その意味が分かった。


自分たちがしてきたことを。


もう。


隠しきれないところまで来ていた。


ガルドが。


ゆっくり息を吐いた。


「ヴォルグには」


「もう一度、直接話を聞く」


バルガが。


顔を上げる。


何か言おうとした。


だが。


カイが先に口を開いた。


「ガルド」


「何だ」


「月白草」


ガルドが。


カイを見る。


「ヴォルグのことも、ちゃんと確かめないといけない」


カイは。


山の上へ目を向ける。


「でも」


頭に浮かんだのは。


リュカ。


震える腕。


起き上がろうとして。


身体を支えられなかった姿。


「今も苦しんでる子がいる」


「先に月白草を取りに行こう」


ガルドは。


少しだけカイを見つめた。


そして。


頷く。


「ああ」


ヴァンへ顔を向ける。


「ヴァン」


「ああ」


「こいつらを族長のところへ連れて行ってくれ」


ヴァンが。


三人を見る。


「川の水を使わないよう、すぐ集落へ伝えてほしい」


「他の集落にもだ」


「分かった」


ガルドは。


バルガを見る。


「逃げるな」


バルガは。


返事をしなかった。


だが。


先ほどまでのように。


ガルドを睨み返すこともなかった。


ヴァンが。


三人を立たせる。


バルガが。


数歩進んでから。


一度だけ振り返った。


その目は。


ガルドではなく。


川へ向いていた。


やがて。


四人の姿が。


山道の向こうへ消えていった。


⸻


残ったのは。


カイ。


ナタリー。


レオン。


リシア。


ガルド。


ロウガ。


六人。


川から離れ。


ラグニル山のさらに上へ向かう。


道と呼べるものは。


ほとんどなくなっていた。


大きな岩。


地面から張り出す太い根。


急な斜面。


カイは。


木の幹を掴みながら身体を引き上げた。


「月白草って」


息を整えながら聞く。


「どんなところに生えてるの?」


ガルドが答える。


「山の上部だ」


ロウガも続ける。


「岩陰で、水気の多い場所を好む」


リシアが。


足元の植物を見ながら進む。


「葉は?」


「白に近い」


「月の光を受けると、わずかに青く見える」


レオンが。


周囲を見回す。


「白い草なら見つけやすそうだけどな」


「見つかればな」


ロウガが返す。


「数が少ない」


「結局そこか……」


カイが。


少し笑う。


さらに。


山を上っていく。


木々は。


少しずつ低くなる。


代わりに。


岩肌が増えてきた。


風も。


下より冷たい。


カイが。


岩の隙間を見る。


緑。


また緑。


その中。


一つだけ。


違う色。


「待って」


全員が止まる。


岩の脇。


白い葉。


細い茎。


根元には。


淡い青色。


カイが近づく。


《鑑定》。


――――――――――


名称:月白草


分類:薬草


状態:良好


部位:根


効能:解毒/毒性物質の排出促進


――――――――――


「月白草だ」


ガルドが。


すぐに近づいてくる。


「間違いないか?」


「うん」


カイが頷く。


「使うのは根だ」


ロウガが。


月白草の前へ膝をついた。


「傷つけないように掘るぞ」


周囲も探す。


少し離れた岩陰に。


もう一株。


さらに。


その先にも。


一株。


もう一株。


全部で。


四株。


レオンが。


集めた月白草を見る。


「これじゃ……足りないよな」


「ああ」


ガルドが。


山の上へ目を向けた。


「病に倒れている者は、リュカだけではない」


カイも。


同じ方向を見る。


「もっと探そう」


「ここに生えてるなら」


「もう少し上にもあるかもしれない」


ガルドが頷く。


「行こう」


六人は。


さらに山を登った。


木々が。


ほとんどなくなっていく。


足元には岩が増え。


風も強くなる。


しばらく進んだ時。


ナタリーが。


突然足を止めた。


「待って」


全員が止まる。


レオンが。


声を落とす。


「何だ?」


ナタリーは。


前方の岩場から目を離さない。


「……いる」


低い。


唸り声。


岩の上。


一つの影が。


ゆっくり姿を現した。


灰黒色の体毛。


地面へ届きそうなほど長い尾。


太い四肢。


岩肌を掴む。


鋭い爪。


狼よりも低く構えた身体。


カイが知っている豹に似ている。


だが。


大きさは。


まるで違った。


さらに。


右の岩壁。


二頭目。


高い岩の上から。


三頭目。


最後に。


一番大きな個体が。


その奥から姿を現した。


四頭。


カイは。


一番近い個体へ意識を向ける。


《鑑定》。


――――――――――


名称:裂岩豹


分類:獣


LEVEL:20


状態:戦闘態勢


特徴:岩場での瞬発力が高く、鋭い爪で獲物を仕留める


弱点:喉元/腹部


――――――――――


「LEVEL20……」


次。


LEVEL21。


その奥。


LEVEL22。


最後。


最も大きな個体。


LEVEL23。


レオンが。


四頭を見た。


「また高いな……」


さらに。


一頭が。


岩から岩へ。


音もなく飛び移る。


レオンの表情が変わった。


「しかも速そうだぞ」


ガルドが。


剣を抜く。


ロウガも。


続けて剣を抜いた。


ガルドが。


LEVEL23の裂岩豹を見る。


「一番大きいのは俺がやる」


ロウガが。


LEVEL22の前へ出た。


「なら、こちらは俺だ」


カイが。


二人を見る。


「一人で?」


「ああ」


ガルドは。


それだけ答えた。


ナタリーが。


弓へ矢をつがえる。


「カイ」


「うん」


残る二頭。


LEVEL20。


LEVEL21。


カイ。


ナタリー。


レオン。


リシア。


四人で相手をする。


裂岩豹たちが。


一斉に動いた。


「来る!」


カイの意識が。


切り替わる。


《予測》。


視界に。


いくつもの線が伸びる。


LEVEL21。


正面から。


レオンへ。


そう見えた。


だが。


赤い線が。


途中で折れる。


右。


「レオン! 右!」


「っ!」


レオンが。


反射的に剣を上げる。


次の瞬間。


裂岩豹の姿が。


目の前から消えた。


岩を蹴り。


右側から。


横向きに飛び込んでくる。


ガキッ!


爪と剣がぶつかった。


「速っ!」


レオンの身体が。


半歩下がる。


裂岩豹は。


着地と同時に。


再び岩へ飛び乗った。


止まらない。


高い場所。


次の岩。


さらに。


その次。


「動き回るぞ!」


レオンが叫ぶ。


カイの視界。


赤い線が。


いくつも伸びる。


右。


左。


上。


そして。


一つ。


レオンの背後へ。


「後ろ!」


レオンが振り返る。


同時に。


リシアが。


矢を放った。


裂岩豹が。


空中で身体を捻る。


矢が。


肩を掠めた。


だが。


その動きで。


着地が僅かにずれる。


「今!」


ナタリーの矢。


前脚。


深く刺さる。


「グァァッ!」


裂岩豹の身体が。


地面へ落ちる。


レオンが。


一気に距離を詰めた。


剣を振る。


裂岩豹が。


横へ飛ぶ。


浅い。


脇腹。


血が走る。


だが。


まだ倒れない。


すぐに。


爪が返ってくる。


レオンが。


剣で受ける。


カイは。


その先を見ていた。


赤い線。


次。


裂岩豹は。


前ではない。


上へ飛ぶ。


「レオン、下がって!」


レオンが。


後ろへ跳ぶ。


同時に。


裂岩豹が。


大きな岩へ飛び乗った。


その岩を蹴る。


真上から。


レオンへ。


カイの視界。


腹部。


空中。


身体が伸びる。


弱点。


「そこ!」


カイが。


弦を離す。


矢が。


裂岩豹の腹へ刺さった。


「グァァッ!」


空中で。


身体が崩れる。


着地できない。


地面へ。


大きく倒れた。


ナタリーが。


すでに次の矢を引いている。


喉元。


一射。


矢が。


深く突き刺さる。


裂岩豹が。


動かなくなった。


LEVEL21。


討伐。


だが。


休む暇はなかった。


LEVEL20の裂岩豹が。


リシアへ向かう。


「リシア!」


カイが叫ぶ。


リシアが。


すぐに横へ跳ぶ。


爪。


服の端を裂く。


着地した裂岩豹が。


身体を低くする。


次。


赤い線。


ナタリー。


「ナタリー!」


「見えてる!」


ナタリーが。


横へ動く。


裂岩豹が。


地面を蹴った。


速い。


だが。


その先。


レオンが回り込む。


「こっちだ!」


裂岩豹が。


空中でレオンへ顔を向ける。


その一瞬。


リシアの矢。


後脚。


命中。


着地が崩れる。


「今!」


レオンが。


剣を振る。


裂岩豹が。


無理やり身体を捻る。


刃は。


背中を浅く斬った。


それでも。


まだ動く。


むしろ。


さらに速く。


カイたちの周囲を回り始める。


岩。


地面。


また岩。


姿が。


一瞬ごとに位置を変える。


カイは。


目で追わない。


《予測》。


いくつもの線。


その中。


一本だけ。


赤い。


「リシア!」


「何だ?」


「そのまま!」


「分かった!」


リシアは。


動かない。


弓を構えたまま。


裂岩豹が。


その姿へ狙いを定める。


低く。


地面を蹴る。


カイには。


見えていた。


リシアへ届く。


その直前。


裂岩豹が。


一度。


身体を沈める場所。


カイは。


まだ何もない地面へ。


矢を放った。


一瞬遅れて。


裂岩豹が。


その場所へ入る。


矢。


喉元。


「グァッ!」


裂岩豹の身体が。


大きく揺れた。


リシアが。


すぐに矢を放つ。


さらに。


ナタリー。


二本。


続けて刺さる。


レオンが。


最後に踏み込んだ。


剣が。


裂岩豹の喉元を斬る。


巨体が。


地面へ崩れた。


残る二頭。


ガルド。


ロウガ。


そちらの戦いは。


全く違っていた。


LEVEL23の裂岩豹が。


岩壁を蹴った。


一瞬で。


ガルドの頭上へ。


巨大な爪。


振り下ろされる。


ガキン――!


ガルドが。


剣一本で受け止めた。


裂岩豹が。


空中から。


そのまま身体ごと押し込む。


だが。


ガルドの身体は。


ほとんど下がらない。


「ふっ!」


力任せに。


剣を押し返す。


裂岩豹の身体が。


空中で外へ流れた。


着地。


その瞬間。


ガルドが。


もう目の前にいる。


剣に。


火が走る。


一閃。


火を纏った刃が。


裂岩豹の胴を斬り裂く。


「グァァァッ!」


巨体が。


大きく後退する。


だが。


まだ倒れない。


岩へ。


飛び乗る。


さらに。


その上。


高い位置から。


一気に飛び降りる。


ガルドは。


裂岩豹を見上げた。


避けない。


爪が届く。


その直前。


身体を。


僅かに横へ。


すれ違う。


そのまま。


剣を振り抜いた。


喉元。


深く。


刃が入る。


裂岩豹の身体が。


勢いのまま地面へ落ちた。


ドサッ――!


LEVEL23。


ガルド一人で。


討伐。


その横。


ロウガも。


LEVEL22の裂岩豹と。


一対一で戦っていた。


裂岩豹が。


正面。


右。


左。


岩場を。


高速で飛び回る。


ロウガは。


追わない。


その場で。


剣を構えている。


裂岩豹が。


背後へ回る。


一気に。


飛びかかった。


ロウガが。


振り返る。


爪。


剣で受ける。


ガキッ!


そのまま。


押し返す。


裂岩豹が。


着地する。


次の瞬間。


ロウガが。


懐へ入った。


「速いだけでは足りん」


剣を。


下から振り上げる。


裂岩豹の腹が。


深く裂ける。


「グァッ!」


裂岩豹が。


身体を捻る。


長い尾が。


横からロウガへ振られる。


ロウガが。


腕で受け。


僅かに下がる。


裂岩豹が。


その隙に。


岩へ飛ぶ。


だが。


次へ移るより。


ロウガの方が早かった。


踏み込む。


剣に。


火が走る。


火を纏った剣が。


真横に振り抜かれた。


喉元。


一閃。


裂岩豹が。


岩の上から。


地面へ落ちる。


ドサッ!


LEVEL22。


ロウガも。


一人で討ち取った。


静かになった。


四頭。


全てが。


地面へ倒れている。


レオンが。


大きく息を吐く。


ガルドとロウガを見る。


「……俺たち四人なんだけど」


ロウガが。


剣についた血を払う。


「鍛錬が足りんな」


「いや、それだけじゃないだろ……」


ナタリーが。


小さく笑った。


その時。


カイの視界に。


青白い文字が浮かんだ。


――――――――――


《LEVEL進行度:82% → 112%》


《LEVEL UP》


神谷 海


Lv.13 → Lv.14


《LEVEL BONUS》


最大HP +5


全ステータス +1


SP +3


《余剰分繰越》


LEVEL進行度:12%


――――――――――


「上がった……」


身体の奥から。


力が広がる。


カイが。


自分の手を握る。


「十四だ」


ナタリーが。


カイを見る。


「上がったのか?」


「うん」


レオンが。


剣を鞘へ戻す。


「また一つ上がったのかよ」


「俺、まだ十四だよ」


「それでも上がるの早いだろ」


カイは。


少しだけ笑った。


表示を閉じる。


今は。


LEVELより。


月白草だ。


⸻


裂岩豹が出てきた岩場。


その奥。


岩壁から。


水が僅かに染み出している。


リシアが。


足を止めた。


「カイ」


「ん?」


リシアが。


岩陰を指差す。


白。


一つ。


二つ。


いや。


もっと。


「……月白草?」


カイが。


急いで近づく。


岩の隙間。


水気の多い場所。


そこに。


月白草が。


まとまって生えていた。


「すごい……」


先ほどの四株とは。


比べものにならない。


ガルドも。


近づいて確認する。


「これなら」


ロウガが頷く。


「ああ」


「病に倒れている者たちへ回せる」


カイは。


胸を撫で下ろした。


「よかった……」


すぐに。


六人で採取を始める。


根を傷つけないように。


土を掘る。


一株。


また一株。


必要な数を。


慎重に集めていく。


その途中。


カイが。


顔を上げた。


少し先。


崖際。


そこにも。


一株。


大きな月白草。


「あそこにもある」


立ち上がる。


「カイ」


ナタリーが。


声をかけた。


「そこ、足場が悪い」


「大丈夫。すぐそこだから」


一歩。


踏み出す。


ミシッ。


「え?」


足元。


岩に。


亀裂が走った。


「カイ!」


地面が。


崩れる。


身体が。


沈んだ。


咄嗟に。


手を伸ばす。


ナタリーも。


手を伸ばしている。


あと。


少し。


指先。


届かない。


「――っ!」


身体が落ちる。


岩肌へ。


肩がぶつかる。


息が詰まる。


さらに。


背中。


脚。


何度も。


岩へ身体を叩きつけながら。


斜面を滑り落ちる。


最後。


強い衝撃。


世界が。


止まった。


「――――」


声が出ない。


息が。


できない。


胸が。


押し潰されたように苦しい。


カイは。


地面に倒れたまま。


口を開く。


空気が。


入ってこない。


身体も。


動かない。


数秒。


それだけなのに。


酷く長く感じた。


「……っ……は……!」


ようやく。


少しだけ。


空気が入る。


「はっ……は……っ」


呼吸。


戻る。


でも。


痛い。


右肩。


脇腹。


左脚。


背中。


身体中が。


痛む。


カイは。


すぐには起き上がらなかった。


呼吸を整えながら。


指を動かす。


動く。


腕。


動く。


脚も。


痛みはある。


だが。


感覚はある。


「……折れては、なさそう」


右手を。


身体へ当てる。


「治癒」


淡い光。


胸。


肩。


脇腹。


身体を包んでいく。


少しずつ。


痛みが和らぐ。


呼吸も。


楽になる。


しばらくして。


カイは。


ゆっくり身体を起こした。


「……っ」


まだ。


痛みは残る。


それでも。


動ける。


岩壁へ手をついて。


立ち上がった。


見上げる。


遥か上。


崖。


「ナタリー!」


声を上げる。


「ガルド!」


返事は。


ない。


風の音。


それだけ。


「ナタリー!」


もう一度。


遠くで。


何か聞こえたような気がした。


だが。


言葉までは分からない。


カイは。


崖を見上げた。


ほとんど。


垂直。


崩れた場所から。


登るのは難しい。


「別の道を探すしかないか……」


弓を確認する。


傷はある。


だが。


壊れてはいない。


カイは。


周囲を見る。


上からは。


見えなかった場所。


山の中へ。


深く裂けるように続く。


細い岩場。


その奥。


「……行ってみるか」


カイは。


歩き始めた。


身体には。


まだ痛みが残る。


それでも。


一歩ずつ。


先へ。


岩。


また岩。


進んでいく。


その時。


「……ん?」


足が止まった。


岩壁。


その一部だけ。


形が違う。


妙に。


平ら。


自然にできた岩には。


見えない。


カイが。


近づく。


表面に付いた。


土。


苔。


手で払う。


その下から。


模様が現れた。


「これ……」


さらに。


土を落とす。


大きな。


石の扉。


山そのものへ。


埋め込まれている。


中央には。


古い紋様。


炎。


それとも。


翼。


カイは。


石の扉を見上げた。


「こんなところに……?」


《鑑定》。


――――――――――


名称:ラグニルの祭壇


状態:封印


開放条件:光属性


――――――――――


カイの目が。


止まった。


「……ラグニルの祭壇?」


龍人族が。


何度も口にしていた。


始祖。


ラグニル様。


その名前が。


目の前にある。


そして。


もう一つ。


「開放条件……光属性」


カイは。


自分の右手を見る。


光属性。


それなら。


自分が持っている。


ゆっくり。


右手を扉へ向ける。


「俺なら……」


掌に。


淡い光が灯る。


その瞬間。


石の扉に刻まれていた紋様。


一つ。


また一つ。


光が。


走り始める。


ゴゴゴゴゴ――。


低い音。


地面が。


僅かに震える。


カイが。


一歩下がる。


長い間。


閉ざされていた石の扉が。


ゆっくりと。


左右へ開いていく。


中から。


冷たい空気が流れ出した。


「……開いた」


扉の向こう。


暗い。


だが。


完全な闇ではない。


壁に刻まれた紋様が。


カイの光に反応するように。


一つずつ。


淡く輝いていく。


カイは。


入口に立ったまま。


奥を見る。


「ラグニル様の……祭壇」


一歩。


中へ入った。


⸻


石造りの通路。


壁。


床。


天井。


どれも。


長い年月を感じさせる。


それなのに。


崩れてはいない。


カイが進むたび。


壁の光が。


先へ。


先へ。


灯っていく。


やがて。


通路が終わった。


広い空間。


その中央。


巨大な龍の像。


翼を広げ。


炎を抱くように。


両腕を前へ差し出している。


「……ラグニル様?」


カイが。


像を見上げる。


その足元。


石の祭壇。


そこに。


一本の剣が。


突き立てられていた。


黒銀の刀身。


柄から刀身へ。


赤。


そして。


白い光のような筋が走っている。


炎の中に。


光が混ざっているような剣。


カイは。


ゆっくり近づいた。


「これ……」


《鑑定》。


――――――――――


名称:光焔剣《ラグナリス》


分類:伝説武器


属性:光/炎


適合属性:光属性/炎属性


固有効果:《浄化》


――――――――――


「こうえんけん……ラグナリス」


カイは。


剣を見つめた。


光。


そして。


炎。


自分が持っているのは。


光属性。


カイは。


ゆっくり。


柄へ手を伸ばした。


指が。


触れる。


その瞬間。


剣が。


強く光った。


「っ!」


だが。


手を弾かれることはない。


むしろ。


ずっとそこにあったものが。


カイを待っていたように。


光が。


手の中へ馴染んでいく。


カイが。


柄を握る。


力を入れる。


その時。


「カイ!」


声。


後ろ。


振り返る。


祭壇の入口。


ナタリー。


その後ろに。


レオン。


リシア。


そして。


ガルド。


ロウガ。


「ナタリー!」


「よかった……!」


ナタリーが。


一気に駆け寄ろうとする。


だが。


その途中。


足が止まった。


ガルドも。


ロウガも。


動かない。


二人の目は。


カイではなく。


その向こう。


巨大な龍の像へ。


向けられていた。


「……まさか」


ガルドが。


小さく呟く。


カイが聞く。


「ガルドたちも、ここを知らないの?」


「ああ」


ガルドの声は。


いつもより低かった。


「こんな場所があるなど……聞いたこともない」


ロウガも。


龍の像を見上げている。


「だが」


ガルドが。


ゆっくり。


剣を地面へ置いた。


そして。


膝をつく。


ロウガも。


同じように。


膝をついた。


「え?」


カイが。


二人を見る。


ガルドが。


深く頭を下げる。


「分かる」


「何が?」


「ラグニル様だ」


その声に。


迷いはなかった。


「姿を見たことなどない」


「だが」


ガルドが。


龍の像を見上げる。


「この気を……間違えるはずがない」


ロウガも。


静かに目を閉じた。


「始祖ラグニル様……」


二人は。


そのまま祈りを捧げる。


しばらく。


誰も声を出さなかった。


カイは。


手に握った剣を見る。


「これ」


ガルドが。


顔を上げる。


「そこにあったのか?」


「うん」


「光焔剣……ラグナリスって出てる」


ガルドの表情が。


変わった。


「ラグナリス……?」


「知ってるの?」


「いや」


ガルドが。


首を横へ振る。


「その名は知らない」


だが。


カイの手。


そして。


剣を見る。


「カイ」


「何?」


「お前は……どうやってここへ入った」


「扉に」


カイが。


入口の方を見る。


「光属性が必要だって出たから」


ガルドの目が。


僅かに見開かれた。


「光……属性?」


「あ」


カイも。


そこで気づいた。


今まで。


ガルドたちには。


話していなかった。


「俺、光属性を持ってる」


沈黙。


ガルド。


ロウガ。


二人が。


カイを見る。


「光を……」


ガルドが。


言葉を失う。


その時。


カイが握っていた。


ラグナリス。


刀身の赤い筋が。


突然。


強く輝いた。


「っ!」


炎。


剣の周囲へ。


赤い炎が。


立ち上る。


「カイ!」


ナタリーが叫ぶ。


だが。


熱くない。


カイの手も。


服も。


何も燃えていない。


炎が。


そのまま。


カイの身体を包む。


そして。


視界に。


文字が浮かんだ。


――――――――――


《新たな属性適性を獲得しました》


《炎属性》


《炎魔法》


《使用条件を満たしていません》


――――――――――


「……炎属性?」


ガルドが。


立ち上がった。


「今……何と言った」


「炎属性を獲得したって」


「炎……」


ロウガも。


珍しく。


はっきりと驚いている。


カイが。


二人を見る。


「火と炎って、何が違うの?」


ガルドは。


すぐには答えなかった。


ラグナリスの炎を。


じっと見つめる。


やがて。


口を開いた。


「我らが使うのは」


ガルドが。


自分の手に。


小さな火を灯す。


「火だ」


赤い火。


いつも見ている。


龍人族の力。


「炎は?」


「俺も」


ガルドが。


火を消した。


「伝承としてしか知らない」


「伝承?」


「ああ」


ガルドが。


龍の像を見る。


「炎は」


「始祖ラグニル様だけが扱ったとされる力だ」


カイが。


ラグナリスを見る。


「ラグニル様だけ……」


「伝わっているのは」


ガルドが続ける。


「炎は、全てを焼き尽くし」


一度。


言葉を切る。


「全てを浄化する」


カイの目が。


剣の表示へ向く。


固有効果。


《浄化》。


同じ言葉。


「じゃあ、この剣の浄化って……」


「分からない」


ガルドは。


首を横へ振った。


「そこから先は、俺にも」


そして。


少し考える。


「大長老なら」


「何か知っているかもしれない」


「大長老……」


「ああ」


ガルドは。


もう一度。


カイを見る。


光属性。


炎属性。


そして。


始祖ラグニル様の祭壇で。


ラグナリスを手にしている。


「……龍人族を救う光」


「え?」


ガルドが。


小さく呟いていた。


「セラ様が言っていた」


巫女。


セラ。


カイも。


その言葉を思い出す。


『新たに現れた地に――』


『龍人族を救う光が現れる』


ガルドは。


ラグナリスを見る。


そして。


カイを見る。


「正直に言えば」


「予言など……俺には分からなかった」


「でも」


ガルドが。


祭壇を見回す。


「俺たちすら知らなかった場所を」


「光で開き」


「ラグニル様の剣を手にした」


さらに。


カイを包んでいた。


僅かな炎を見る。


「そして」


「伝承にしか残っていない炎まで」


ガルドが。


静かに息を吐く。


「偶然とは……思えなくなってきたな」


カイは。


何も答えられなかった。


自分が。


予言の人物なのか。


まだ。


分からない。


でも。


手の中にある剣は。


確かに。


存在している。


光焔剣。


ラグナリス。


その刀身に。


光と炎が。


静かに揺れていた。


ラグニル山の奥深く。


長い間。


誰にも見つからなかった祭壇で。


カイは。


新しい力を。


手にしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。