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ドリームライド〜異世界創造、夢の旅〜  作者: 神谷 夢


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第14話 秘密

第14話 秘密


制服に着替え、


カイは部屋を出た。


階段を降りると、


朝食のいい香りが漂ってくる。


リビングでは、


匠がコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。


キッチンから、


母親が皿を運んでくる。


「おはよう」


「おはよう」


「おう」


カイは椅子へ座る。


テーブルには、


焼いたパンと卵。


「今日、部活?」


匠が聞く。


「ある」


「帰りは?」


「いつもくらい」


「了解」


カイは、


パンを一口かじった。


グランドグリズリー。


倒れたディルク。


血を流すナタリー。


「カイ」


「ん?」


「それ、俺の」


見ると、


匠の皿からパンを取っていた。


「あ」


「朝から何してんだよ」


「ごめん」


「寝ぼけてるの?」


母親が笑う。


「寝てるよ」


「じゃあ起きて」


「起きてるって」


匠も笑う。


カイは、


自分の皿へ手を伸ばした。


⸻


学校。


教室へ入る。


「カイ、おはよ」


「おはよう」


声を返しながら、


席へ向かう。


鞄を置いたところで、


肩を叩かれた。


「カイ」


悠斗。


「何?」


「今日ボーッとしてね?」


「してない」


「してる」


「朝だから」


「毎日朝だろ」


「うるさい」


悠斗が笑う。


「今日のミニゲーム、負けんなよ」


「そっちがな」


「昨日シュート外した奴が言う?」


「一本だけだろ」


「一本が大事なんだよ」


「はいはい」


「カイ」


隣から、


美緒の声。


「ん?」


「宿題やった?」


「やった」


「ほんと?」


カイは鞄を開く。


ノートを取り出し、


机の上へ置いた。


「ほら」


「珍しい」


「毎回やってるだろ」


「提出するの忘れるじゃん」


「それは別」


「同じでしょ」


悠斗が横から覗く。


「俺、数学やってない」


「知らない」


美緒が即答する。


「見せて」


「嫌」


「カイ」


「もっと嫌」


「冷たくない?」


チャイムが鳴った。


先生が、


教室へ入ってくる。


「席つけー」


悠斗が慌てて戻る。


「あとで見せて!」


「無理」


「聞こえてるぞ、悠斗」


教室から笑い声が上がった。


⸻


一時間目が終わる。


「カイ、ここ答え何?」


後ろの席から、


佐伯蓮がノートを持って顔を出した。


同じクラスの野球部で、


短く刈った黒髪に、日に焼けた肌。


カイとは普段からよく話す仲だ。


「三じゃない?」


「やっぱ三だよな」


「俺、五にした」


悠斗が横から入ってくる。


「何で五になるんだよ」


「途中までは合ってた」


「途中までじゃダメでしょ」


美緒が笑う。


「朝から数学見せてって言ってた理由分かった」


「うるさい」


蓮が、


悠斗のノートを見る。


「ここで符号逆になってる」


「マジ?」


「それで五」


「俺、惜しくない?」


「全然」


「ひど」


次の授業の先生が入ってくる。


「ほら、席戻れ」


「はーい」


悠斗が、


自分の席へ戻っていった。


⸻


午前の授業が終わる。


チャイムが鳴った途端、


教室のあちこちで椅子が動く。


「腹減った」


悠斗が、


前の席を反対向きにして座った。


カイも弁当を取り出す。


隣では、


美緒が弁当箱を開けていた。


「カイ」


「何?」


「唐揚げ一個ちょうだい」


「何くれる?」


「卵焼き」


「一個?」


「一個」


「釣り合わない」


「じゃあ二個」


「成立」


美緒が、


カイの弁当へ卵焼きを二つ入れる。


代わりに、


唐揚げを一つ取った。


悠斗が、


二人を見る。


「俺にも唐揚げ」


「自分の食べろよ」


「今日魚なんだよ」


「魚食べなよ」


「肉がいい」


「知らない」


蓮が、


斜め後ろから声をかける。


「俺の唐揚げやるよ」


「マジ?」


「卵焼きと交換」


「結局交換じゃん」


「当たり前だろ」


悠斗が、


弁当を持って蓮の方へ移る。


「一個でいい?」


「二個」


「お前もかよ」


「嫌ならなし」


「分かった分かった」


悠斗が卵焼きを渡し、


唐揚げを受け取る。


「うま」


「俺のじゃなくて母ちゃんのだけどな」


「じゃあ明日も頼む」


「自分の母ちゃんに頼めよ」


カイと美緒も、


弁当を食べ進める。


「今日の英語、


当てられそうじゃない?」


美緒が言う。


「何で?」


「先生、前から順番に当ててたじゃん」


カイが、


前の席を見る。


「……次、俺じゃん」


「ちゃんと予習した?」


「してない」


「終わったね」


「美緒は?」


「した」


「見せて」


「嫌」


「悠斗と同じこと言ってる?」


「今気づいた?」


二人が笑う。


しばらくして。


カイは、


最後の唐揚げを口へ入れた。


美緒も、


弁当箱の蓋を閉じる。


悠斗は、


空になった弁当箱を机へ置いた。


「食ったー」


「早いな」


蓮が言う。


「もう食い終わってるだろ」


「俺はお前より早かった」


「じゃあ言うなよ」


悠斗と蓮が、


後ろで話している。


美緒が、


カイの方を向いた。


「そういえば」


「ん?」


「昨日、何かあった?」


カイが、


美緒を見る。


「何で?」


「今日なんか変」


「悠斗にも言われた」


「じゃあ変なんじゃん」


「二人が失礼なだけ」


「また、あの夢?」


カイの表情が、


一瞬止まる。


「……何でそう思うの?」


「なんとなく」


「違うよ」


「怪しい」


「何が」


「今の間」


「気のせい」


美緒が、


じっとカイを見る。


キーンコーン――。


チャイムが鳴った。


「あ」


美緒が、


前を向く。


「またあとで聞く」


「まだ聞くの?」


「聞く」


「しつこ」


「知ってる」


⸻


放課後。


グラウンド。


「カイ!」


ボールが来る。


受ける。


相手が寄ってくる。


肩。


重心。


足。


⸻


《予測 Lv.3》


⸻


青い線が、


いくつも浮かぶ。


その中。


一本だけ、


赤い線。


相手が右足を出す。


身体を寄せる。


そのまま、


左へ切り返す。


一連の動きが、


赤い線で繋がっている。


カイは、


相手が踏み込む前にボールをずらした。


一歩。


相手が追う。


赤い線の通り。


カイは、


もう一度逆へ切り返した。


「うわっ!」


相手の身体が流れる。


カイは、


そのまま抜けた。


悠斗が、


手を上げる。


「来い!」


パス。


悠斗が受ける。


そのままシュート。


ボールは、


ゴールの外へ抜けた。


「あー!」


カイが笑う。


「また外したじゃん」


「今のはパスが悪い!」


「どこが」


近くにいた部員が、


悠斗の肩を叩く。


「完全にお前だろ」


「味方いねえ!」


「もう一本!」


コーチの声。


全員が、


再び走り出した。


⸻


練習が終わる。


着替えを済ませ、


カイは校舎を出た。


校門の近く。


「カイ」


美緒だった。


「まだいたの?」


「委員会」


「そっか」


悠斗も、


少し遅れて校舎から出てくる。


「じゃあな!」


「また明日」


「カイ、明日はちゃんとパスしろよ!」


「まず決めろよ!」


「うるせえ!」


悠斗は、


別の道へ走っていった。


カイが、


美緒を見る。


「同じ方向だし、


一緒に帰る?」


「うん」


二人で歩き出す。


「で?」


美緒が言った。


「何?」


「昼の続き」


「まだ覚えてたの?」


「忘れないでしょ」


「しつこいな」


「昨日何かあった?」


「……色々」


「色々って何」


「色々は色々」


「絶対言う気ないじゃん」


「まあね」


「最悪」


美緒が、


少し頬を膨らませる。


そのまま歩く。


「今日の英語、


危なかったね」


美緒が笑う。


「ギリだった」


「先生、


完全にカイ狙ってたじゃん」


「あれ絶対わざとだろ」


「予習してないの、


バレてたんじゃない?」


「それはある」


「ちゃんとやりなよ」


「美緒の見せてもらう」


「嫌」


「昼も言ってたな、それ」


「自分でやってください」


「じゃあ今度教えてよ」


「それならいいよ」


「ほんと?」


「ちゃんと聞くならね」


「聞く聞く」


「絶対聞かないやつ」


カイが笑う。


美緒も笑った。


自転車が、


二人の横を通り過ぎる。


少し先では、


小学生が友達同士で笑いながら走っている。


犬を連れた老人が、


ゆっくり歩いている。


カイは、


その景色を見る。


「……平和だな」


「急にどうしたの?」


「別に」


「今日ほんと変」


「またそれ?」


美緒が笑う。


少し先。


ランドセルを背負った男の子が、


走っている。


足が、


段差に引っかかった。


ドサッ。


「うわぁぁぁん!」


カイと美緒が、


駆け寄る。


「大丈夫?」


美緒がしゃがむ。


膝を擦りむき、


血が滲んでいる。


カイも、


その横へしゃがんだ。


昨日覚えた、


《治癒》。


こっちでも、


使えるのかな。


カイは、


周囲を見る。


通りには、


ほとんど人がいない。


少し離れたところから、


女性がこちらへ走ってくる。


まだ距離はある。


「いたい……」


男の子が、


泣きながら膝を押さえる。


カイは、


もう一度傷を見る。


「……試してみるか」


膝へ、


そっと手をかざす。


「治癒」


淡い白い光が、


手のひらに灯った。


カイの目が、


わずかに見開く。


光が、


男の子の膝を包む。


滲んでいた血が止まり、


擦れた皮膚が、


ゆっくり塞がっていく。


「いたくない……」


男の子が、


自分の膝を見る。


カイも、


手のひらを見る。


「……使えた」


「カイ」


美緒の声。


振り向く。


美緒が、


カイの手を見ていた。


「今の……何?」


その時。


「大丈夫!?」


女性が、


駆け寄ってきた。


カイは、


すぐに手を下ろす。


「転んじゃって」


美緒が言う。


母親が、


男の子の膝を見る。


「怪我は?」


「もう平気!」


男の子が、


自分の膝を見せる。


「……?」


母親は、


少し首を傾げる。


「本当に痛くない?」


「うん!」


「よかった……」


男の子の頭を撫でる。


「もう走っちゃダメよ」


「はーい」


「ありがとうございました」


母親が頭を下げ、


二人は歩いていった。


⸻


《現実世界で魔法の使用に成功しました》


《DP +15》


《LEVEL進行度:15% → 22%》


《負傷者の治療に成功しました》


《DP +10》


《LEVEL進行度:22% → 27%》


《現実世界での魔法使用を確認しました》


《DP +10》


《LEVEL進行度:27% → 31%》


⸻


「カイ」


美緒が、


まだこちらを見ている。


「……今の何?」


カイは、


少し黙った。


「光ってたよね」


「……うん」


「前に言ってたやつ」


美緒が、


カイを見る。


「夢の中に、


別の世界があるって」


「あれ、


本当だったの?」


「……うん」


「本当に?」


「うん」


「夢じゃないの?」


「最初は、


夢だと思ってた」


「じゃあ今は?」


「分かんない」


「分かんないって……」


二人は、


ゆっくり歩き出す。


「寝たら、


そこに行くんだよ」


「毎日?」


「ほぼ」


「朝になったら、


こっちに戻るの?」


「うん」


「行かないって、


選べないの?」


「今のところは」


「じゃあ、


今日も行くの?」


「多分」


美緒が、


少し黙る。


「怖くないの?」


カイは、


前を見た。


「怖いよ」


昨日の森。


グランドグリズリー。


倒れたディルク。


「昨日なんて、


本当に死ぬかと思った」


「そんなに?」


「三メートルくらいある、


熊みたいなモンスターがいてさ」


「三メートル……」


「みんなで戦った」


「みんなって?」


「向こうで知り合った人たち」


「人もいるの?」


「いる」


「どんな人?」


「エルフ」


美緒が、


カイを見る。


「……エルフ?」


「うん」


「本当に?」


「本当に」


「耳長い?」


「長い」


「魔法も使う?」


「使う」


美緒は、


さっきの男の子が歩いていった方を見る。


「まだ信じられないけど……」


「うん」


「今の見たら、


嘘って言う方が無理かも」


カイは、


小さく息を吐いた。


「俺も、


ずっとよく分かってない」


「カイが行きたくて、


行ってるわけじゃないんだよね?」


「うん」


「寝たら勝手に?」


「そう」


少し歩く。


カイが、


口を開いた。


「でもさ」


「うん」


「怖いことばっかでもないんだよ」


「最初は、


何もない荒野だった」


「何も?」


「うん。


見渡しても、


ずっと何もなくて」


カイは、


歩きながら続ける。


「それが今は、


すごい広い森になってる」


「へえ……」


「大きな川も流れてるし、


草原もある」


カイは、


空を見る。


「夜は、


星がすごい」


「星?」


「明かりがほとんどないからさ」


「空いっぱいに、


星が見えるんだよ」


「そんなに?」


「うん」


「現実じゃ、


見たことないくらい」


「いいな」


「自然も、


めちゃくちゃ綺麗だよ」


「さっきまで、


死にそうだった話してたのに」


「それはそれ」


「何それ」


カイも笑う。


「危ないし、


行きたくて行ってるわけじゃないけど」


少し間を置く。


「次は何が起きるんだろうって、


思ってる自分もいる」


「楽しみ?」


「……ちょっとだけ」


「ちょっとだけ?」


「多分」


美緒が笑う。


すぐに、


カイを見る。


「カイ」


「ん?」


「危ないことは、


あんまりしないでほしいな」


「昨日みたいに、


死ぬかもしれないとか……」


声が、


少し小さくなる。


「嫌だよ」


カイは、


美緒を見る。


「……うん」


「行かないって選べないなら、


無茶しないで」


少し黙って、


頷く。


「分かった」


二人は、


また歩く。


しばらくして。


美緒が、


小さく笑った。


「でも……」


「何?」


「私も見てみたいな」


「何を?」


「その世界」


カイが、


美緒を見る。


「星空とか、


森とか、


川とか」


少し考えて。


「エルフも」


「やっぱりそこ気になるんだ」


「気になるでしょ」


「まあね」


「いつか、


見れたらいいな」


「どうやったら行けるかも、


分かんないけどね」


「じゃあ、


分かったら教えて」


「分かったらね」


分かれ道。


美緒が手を上げる。


「じゃあまた明日」


「また明日」


数歩。


美緒が振り返る。


「カイ」


「何?」


「明日の唐揚げ、


忘れないでね」


「まだ言ってんの?」


美緒は笑って、


そのまま歩いていった。


⸻


家に着く頃には、


外は暗くなっていた。


「ただいま」


「おかえり」


キッチンから、


母親の声が返ってくる。


リビングへ入ると、


匠がテーブルの上に、


一枚の紙を広げていた。


「カイ、ちょっといい?」


「何?」


鞄を置き、


テーブルへ近づく。


「朝、帰り聞いてたのこれ」


学校から配られた、


進路希望調査。


「これ、


今日見せようと思って」


「まだ先じゃない?」


「提出は先だけど、


一回考えとけって」


「分かった」


「ご飯できたよ」


母親が、


料理を運んでくる。


匠が、


紙を端へ寄せた。


三人で、


テーブルを囲む。


「今日の部活どうだった?」


母親が聞く。


「悠斗がシュート外した」


匠が笑う。


「それ部活の感想か?」


「今日一番面白かった」


「悠斗くん可哀想」


「本人も笑ってたからいいの」


「学校は?」


「英語当てられた」


「答えられたの?」


「ギリ」


匠が、


箸を止める。


「勉強しろ」


「美緒に教えてもらう」


母親が笑う。


「美緒ちゃんに迷惑かけないの」


「教えてくれるって」


「ならちゃんと聞きなさいよ」


「分かってる」


食事を終える。


カイは、


食器を重ねた。


「置いといていいよ」


母親が言う。


「洗うよ」


「じゃあお願い」


カイは、


皿を流しへ運んだ。


⸻


風呂を上がり、


部屋へ戻る。


カイは、


ベッドへ腰を下ろした。


美緒との帰り道が、


頭に浮かぶ。


ドリームワールド。


ナタリーたち。


昨日の戦い。


怖かったことも。


綺麗だった景色も。


今まで、


誰にも話したことがなかった。


「……なんか、


楽になったな」


カイは、


小さく息を吐いた。


『私も見てみたいな』


美緒の言葉が、


頭に浮かぶ。


「……見せられたらな」


少し笑って、


ベッドへ横になる。


目を閉じた。


⸻


鳥の声。


風。


葉が揺れる音。


カイは、


目を開けた。


小屋。


外へ出る。


少し離れた場所。


地面に、


細い亀裂が走っている。


倒れた木もある。


カイは、


集落へ向かった。


森を進む。


木の枝に止まっていた鳥が、


一斉に飛び立つ。


茂みの奥。


小さな獣が、


こちらを見て逃げていった。


方角を確かめながら、


歩く。


やがて。


木々の間から、


集落が見えてきた。


⸻


《移動・探索を行いました》


《DP +10》


《LEVEL進行度:31% → 33%》


⸻


集落へ入る。


「カイ」


ナタリーだった。


「ナタリー」


その後ろには、


レオン。


リシア。


ディルク。


「カイ」


ディルクが、


こちらへ歩いてくる。


「大丈夫?」


「ああ」


ディルクが、


脇腹へ手を当てる。


「もう何ともない」


「よかった」


ディルクが、


まっすぐカイを見る。


「助かった」


「……うん」


「本当に、


ありがとう」


「間に合ってよかったよ」


ナタリーが、


二人の横へ来る。


「カイ。


昨日のこと、


長老に話した」


「昨日のこと?」


「お前が光属性を得たことに対してだ」


カイが、


自分の手を見る。


「それで?」


「長老がお前と話したいそうだ」


「分かった」


ナタリーについて、


集落の奥へ向かう。


⸻


長老の家。


中へ入ると、


長老が待っていた。


ナタリーとともに、


カイは長老の前へ座る。


「光魔法を得たそうだな」


「うん」


長老は、


カイをまっすぐ見た。


「その力で、


ディルクを救ってくれたと聞いた」


「うん」


長老は、


静かに頭を下げる。


「仲間を救ってくれたこと、


長老として礼を言う」


「間に合ってよかったよ」


長老は頷く。


「それと、


その光についてお前に見せたいものがある」


立ち上がり、


部屋の奥へ向かう。


しばらくして、


一枚の古びた絵を持って戻ってきた。


テーブルの上へ広げる。


そこには、


一人のエルフが描かれていた。


長い髪。


白い衣。


その身を包む、


淡い光。


カイが、


絵を覗き込む。


「この人は?」


「エリシア様」


長老が答える。


「我らエルフの始祖――


《創生のエルフ》だ」


「創生のエルフ?」


「ああ」


長老が、


絵へ手を添える。


「この世界に最初に生を受けた、


最初のエルフだ」


カイは、


絵の中のエリシア様を見る。


「それで、


光属性を?」


「そうだ」


「エリシア様は、


我らの記録に残る中で、


光属性を持っていた唯一の方でもある」


「他にはいなかったの?」


「少なくとも、


記録には残っていない」


「じゃあ、


長老も光魔法を見たことない?」


「ない」


隣で、


ナタリーも絵を見つめる。


長老は、


絵の下に残された古い文字へ指を添えた。


「エリシア様と光について、


今も残されている言葉がある」


カイも、


その文字へ目を向ける。


長老が、


ゆっくりと読み上げた。


⸻


『光は傷を癒やし、穢れを祓い、禍を遠ざける。』


『その加護を受けし者、内なる力を呼び覚まし、己が限界を越えん。』


『光は分かたれてなお失われず、受けし者の内に新たな灯を宿す。』


『灯は灯を呼び、やがて大いなる輝きとなる。』


⸻


静けさが戻る。


カイは、


もう一度その言葉を目で追った。


「……これが、


残ってる全部?」


「ああ」


長老は、


絵の中のエリシア様へ目を向ける。


「これが、


エリシア様と光について残された言葉のすべてだ」


カイは、


自分の手を見る。


そして、


スキルを開いた。


⸻


《光魔法 Lv.1》


⸻


表示されるのは、


それだけ。


伝承に残された光。


自分が得た、


《光魔法》。


カイは、


しばらくその文字を見つめた。


「……試してみようかな」


長老が頷く。


「お前が得た力だ。


感じるままに使ってみるといい」


カイは、


表示を閉じた。


もう一度、


絵へ目を向ける。


白い光に包まれた、


《創生のエルフ》エリシア様。


その姿を、


しばらく見つめていた。


⸻


《光属性に関する知識を獲得しました》


《DP +15》


《LEVEL進行度:33% → 39%》


⸻



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