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第五話「社会人、その組み合わせじゃないとダメと言われてもよくわからない」

今回のお話は、いわゆる「職差別」……に近いようで、ちょっと違う話です。


最近のゲームって、装備やスキルの組み合わせで強さが大きく変わることがありますよね。

その中で「これ一択」と言われる空気、見たことがある人も多いのではないでしょうか。


そんな雰囲気を、グレイさん視点でゆるく眺める回です。

気軽に読んでいただければと思います。

 その日は、少しだけ帰りが早かった。


 まだ二十二時を少し回ったくらいで、時間に余裕がある。

 こういう日は、もう一回くらい多めに回れるかもしれない。


 軽く食事を済ませて、PCの前に座る。

 電源を入れて、いつものようにログインする。


 街に入ると、珍しくギルドチャットが少しだけ賑やかだった。


『新しいスキルもう触った?』

『あれ強いよね』


 そんなやり取りが流れている。


 今日のアプデで実装された新能力の話だろう。

 まだ詳しくは触れていなかったが、強いという話はSNSで何度か見かけていた。


 私は軽くスクロールして、そのままマッチング画面を開く。


 ふと、固定PTの募集欄が目に入った。


『新スキル+〇〇ライフル限定』

『それ以外NG』


 似たような文面がいくつか並んでいる。


 少しだけ考えてから、私は何も気にせず通常のマッチングを選んだ。


 数秒でパーティが成立する。


 いつも通り、知らない誰かとの短いミッションだ。


 開始直後、チャットが流れる。


『その装備で来たの?』


 誰に向けたものかは、すぐに分かった。

 同じパーティの一人が、新しいスキルと例のライフルを装備している。


『今それ一択でしょ』

『火力全然違うよ』


 少しだけ強い言い方だった。


 もう一人は特に反応せず、準備だけを進めている。


 私は何も打たなかった。


 戦闘が始まる。


 最初の敵が出現し、いつも通りに処理していく。


 例の装備を使っているプレイヤーは、確かに強かった。

 敵が溶けるのが早い。


 新スキルの内容はこうだ。敵を撃つと爆発して、周辺の敵にも弾丸が飛ぶ。


 そして〇〇ライフルの効果は、弾が当たると爆発して、少し高いダメージを与える。


 能力の爆発もライフルの効果で強化されるらしく、拡散した後の弾丸が起こす爆発は、さらにダメージが上がっている。


 スキルの回転も良く、攻撃の間に無駄がない。

 

 その動き、仕様なのかバグなのかはよく分からなかったけど。

 

 とりあえず強いことだけは確かだった。


『ほら、全然違うでしょ』


 そうチャットが流れる。


 言いたいことは分かる。


 実際、強いのは間違いない。


 少し遅れて、もう一人のプレイヤーが短く返す。


『まあ、強いですね』


 それだけだった。


 否定もしないし、特に乗るわけでもない。


 そのくらいの距離感が、ちょうどいい気もした。


 戦闘はそのまま進んでいく。


 確かに火力は高い。

 敵の処理は早く、テンポも悪くない。


 ただ、それ以外の三人が特別遅れているわけでもなかった。


 少し時間がかかるかどうか、その程度の差だ。


 中盤の少し硬い敵が出る。


 新スキルのプレイヤーが先に仕掛け、HPを大きく削る。

 残りを他の三人で処理する。


 連携としては問題ない。


 むしろ安定している。


『やっぱこれじゃないとね』


 またチャットが流れる。


 少しだけ間が空く。


 誰も何も返さない。


 私はその様子を見ながら、ぼんやりと考える。


 確かに強い。

 効率もいい。


 でも、それじゃないとダメかと言われると、そうでもない気がした。


 ふと、前にやっていたゲームのことを思い出す。


 特定の職じゃないとダメだと言われていた時期があった。


 ボスをダウン一回で倒せないなら来るな。そんなことを言う人もいた。


挿絵(By みてみん)


 結局、別の職でも倒せることは多かったが、

 今と同じような空気は、たしかに存在していた。


 視線を戻す。


 目の前の戦闘は、特に問題なく進んでいる。


 誰も倒れていないし、遅れているわけでもない。


 ただ、少しだけ速いだけだ。


 ボス戦に入る。


 いつも通りの動きで、各自が位置を取る。


 新スキルのプレイヤーが大きく削り、

 残りを全員で詰めていく。


 結果として、戦闘は安定して終わった。


 リザルト画面が表示される。


『おつかれ』


 誰かが打つ。


 それに続いて、いくつかの「おつかれ」が流れる。


 さっきの話題は、それ以上続かなかった。


 ロビーに戻る。


 短いミッションだった。


 効率は良かったし、特に問題もなかった。


 それで十分だと思う。


 椅子に体を預けて、少しだけ息をつく。


 さっきのプレイヤーの言葉を思い返す。


 強いのは間違いない。


 でも、それじゃないとダメというわけでもない。


「……まあ、そういうものか」


 小さく呟く。


 楽なやり方があれば、そちらに寄るのも分かる。


 それがそのまま基準になることも、たぶん珍しくない。


 マウスに手を戻し、ログアウトボタンにカーソルを合わせる。


 画面が切り替わる。


 部屋の静けさが、ゆっくりと戻ってきた。


 何が正しいかは分からない。


 ただ、ゲームは問題なく進んでいた。


 それで十分だと、私は思っている。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「ビルド差別」みたいなお話でした。

職そのものではなく、特定の装備や組み合わせだけが正解扱いされるあの空気ですね。


実際、強いのは間違いないんですが、

「それじゃないとダメか?」と言われると、ちょっと違う気もする……という。


このあたりの感覚は、プレイしているゲームや環境によっても変わると思いますが、

なんとなく共感してもらえる部分があれば嬉しいです。


次回は少し雰囲気を変えて、また別の“あるある”に触れていく予定です。

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