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第十一話「社会人、攻略サイトを見ない人と出会う」

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は「攻略サイトを見る派・見ない派」のお話です。


効率よく遊ぶのも楽しいですし、何も知らずに飛び込むのもまた楽しい。


オンラインゲームには、色々な遊び方があるんだろうなと思いながら書いてみました。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 その日も、仕事を終えてGEワールドへログインした。


 いつものようにロビーへ降り立つ。


 見慣れた景色。


 見慣れた人たち。


 そして。


『こんばんは』


『あ、グレイさん』


 やっぱりアンナがいた。


『今日もいるんだ』


『それ、最近毎回言ってない?』


『気のせい』


『絶対気のせいじゃない』


 少しだけ笑う。


 どうやら今日も暇らしい。


『なんか行く?』


『行く』


 話は早かった。


 そのまま二人パーティで通常ミッションへマッチング申請する。


 しばらく待つと、自動マッチングが成立した。


 四人パーティ。


 グレイ。


 アンナ。


 見覚えのないプレイヤーが二人。


 そのままフィールドへ転送される。


 ミッションは中規模施設の制圧任務だった。


 敵を倒しながら奥へ進む。


 特に問題なく進んでいたのだが。


 ピー!


 扉のスイッチを押しても開かない。


『あれ?』


 少し前を歩いていたプレイヤーが立ち止まった。


 名前はリク。


 もう一人のプレイヤーが振り返る。


『どうした?』


 ピー!


『これ、どうやるんだろ』


『え?』


 足を止める。


 そこには制御端末があった。


 四か所のスイッチを順番に起動しないと先へ進めないタイプのギミックだ。


 それほど難しいものではない。


 ただ、初見だと少し迷う。


『もしかして初見?』


 野良プレイヤーが聞く。


『うん』


『えっ』


 一瞬だけ空気が止まる。


『攻略サイト見てないの?』


『見てないよ』


『えっ、今どき?』


 少しだけ呆れた声だった。


 リクは特に気にした様子もない。


『初めてやるミッションだし』


『いや、普通やる前に調べない?』


『そうかな』


 少しだけ空気が険悪になる。


『私は見るかな。面倒なギミックがないかチェックするくらいだけど』


 アンナが言った。


『だって手間取るでしょ?』


『まあ、それは分かる』


 リクは普通に頷く。


『でも、見ない方が面白くない?』


『え?』


 今度はアンナが聞き返した。


『だって遊ぶ前から内容を知ってたら、驚きがなくない?』


『何が起きるか』


『どこに何があるか』


『いま、冒険をしていること。それが楽しいんだよ』


 少しだけ沈黙が流れる。


 正直、言いたいことは分かる。


 でも効率は悪い。


 野良プレイヤーとアンナが顔を見合わせた。


 たぶんアンナもそう思っている。


『いや、でもさ……』


『いや、それはちょっと分かるかも』


 そこで口を挟む。


『え?』


 アンナが振り返った。


『昔は攻略サイトなんてなかったし』


『みんな手探りだったから』


『隠し通路とか、壁を調べながら歩いていたし』


『ボスの弱点とかも、あれこれ自分で試してた』


『自分たちで試行錯誤してた。あれは確かに楽しかったよ』


 今なら攻略サイトを見ることもある。


 社会人になってからは特にそうだ。


 限られた時間で遊ぶことが増えた。


 でも。


『知らない方が面白かったのは確かかな』


 リクは少し驚いた顔をした。


 今まで肯定されたことなんて、なかったのかもしれない。


『そうなんだよね』


『初めて見る景色って、一回しかないからさ』


 その言葉で少し空気が変わった。


『でも時間かかるじゃん』


 野良プレイヤーが言う。


『それも含めて好きなんだよ』


『うーん』


『私は無理かも』


 アンナが正直に言う。


『絶対調べる』


『それも分かる』


 リクは笑う。


『別にどっちが正しいとかじゃないし』


 最終的に今回はリクが初めてということで、彼を先頭に自由に進めてもらうことになった。


 どうしても分からなかったら、ヘルプすることにした。


 リクは何度か失敗した。


 でも、そのたびに。


『あー、そういうことか』


 楽しそうだった。


 ボスを難なく倒し、ミッションが終了する。


『ありがとうございました』


 リクがチャットを打つ。


『楽しかった』


『おつかれ』


『おつー』


『おつかれ』


 施設の出口でリクは振り返る。


 そこで最後に言った。


『失敗するのもゲームだから。


 それが楽しいと思うんだよ』


挿絵(By みてみん)


 そう言ってミッションを抜けていった。


 しばらく沈黙が流れる。


『私はやっぱり調べるかな』


 アンナが言う。


『だと思った』


『だって時間もったいないし』


『うん』


 少しだけ間が空く。


『でも』


『初めて見る景色は一回しかないっていうのは』


『ちょっと分かるかも』


 少しだけ笑った。


『でしょ』


 ロビーでは今日も多くのプレイヤーが行き交っている。


 効率を求める人。


 自分で探したい人。


 攻略サイトを見る人。


 見ない人。


 同じゲームを遊んでいても、楽しみ方はそれぞれ違う。


 それもまた、オンラインゲームの面白さなのかもしれなかった。


第十一話を読んでいただきありがとうございました。


昔は攻略サイトなんてほとんどなく、友達と「あそこに隠し通路があった」「このボスは炎が効くかもしれない」と試行錯誤しながら遊んでいました。


もちろん今は時間も限られているので、自分も普通に攻略サイトを見ることがあります。


でも、初めて見る景色は一回しかない。


その一回を大事にしたいという遊び方も、オンラインゲームの魅力の一つなのかもしれません。


次回もまた、社会人ゲーマーの日常を書いていこうと思います。

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