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第十話「社会人、ゴツいキャラを使っている人と出会う」

 オンラインゲームをやっていると、たまに「なぜそのキャラを作ったんだろう」と思う人を見かけます。


 性能重視なのか、趣味なのか、それともロールプレイなのか。


 本人に聞いてみないと分からないことも多いのですが、そういう人たちを眺めているのもMMOの楽しみの一つかもしれません。


 今回はそんなお話です。

 その日も、仕事が終わったのは遅かった。


 帰宅して、軽く食事を済ませる。


 風呂に入って、気が付けば日付が変わる少し前だった。


 PCを立ち上げ、GEワールドへログインする。


 いつもの中層ロビーに自キャラのグレイが表示される。


 ネオンに照らされた巨大都市空間には、今日も多くのプレイヤーがいた。


 装備を見せ合っている人。


 マーケット前で雑談している人。


 壁際でエモートを繰り返している人。


 相変わらず賑やかだった。


 そして、その中に見慣れた青いフード姿を見つける。


『こんばんは』


『あ、グレイさん』


 アンナだった。


 いつもの上層AI教団のシスター服。


 青いフード付きの軽装コートに、腰には小型デバイス。


 武器は背中に固定された上下二連ショットガン。


 軽装寄りだが、見慣れた装備だった。


『今日もいるんだ、こんな遅い時間なのに』


『それグレイさんに言われたくない』


 少しだけ笑う。


 そんなやり取りをしながら、ミッションカウンターの方へ歩こうとした時だった。


『……あ』


 アンナが小さく声を漏らす。


『どうしたの?』


『いや、あれ』


 視線の先を見る。


 少し離れた場所に、妙に目立つプレイヤーがいた。


 長い黒髪。


 露出の多い女性型アバター。


 ただし、普通ではない。


 片腕が巨大な触手状の異形肢になっている。


 下半身も半分ほど変異していて、脚部は生物的な外殻に覆われていた。


 例えるなら巨大なタコの足にセクシーな美女の上半身が乗っている。


 その背中には、異常なサイズの重火器。


 大型ミサイルランチャーと、機銃を合体させたような武器を背負っていた。


挿絵(By みてみん)


『下層型のキャラだね』


『珍しいね……』


 アンナが少し引いた声で言う。


 GEワールドのプレイヤーは、大きく三種類に分かれている。


 上層。


 中層。


 下層。


 上層キャラはナノマシン技術を使うスマート型。


 アンナみたいな、いわゆる魔法使いのようなタイプだ。


 中層はインプラント主体。


 グレイのように、身体へ外部装置を接続するサイボーグ型。


 そしてあのキャラのような下層。


 異形化による身体改造型。


 見た目はかなり人間離れする代わりに、純粋な身体能力が異常に高い。


 特に重量武器の扱いに長けていた。


『LL武器だよね、あれ』


『たぶんね』


 LLサイズの銃火器。


 通常プレイヤーでは扱えない超重量武器カテゴリ。


 中層でも腕力強化能力を極端に積めば持てなくはない。


 ただ、その場合ほとんど他の能力を積めなくなる。


 だから普通はやらない。


 下層型だけが、現実的に扱える武器だった。


『強いのはわかるんだけどさ』


 アンナが少し困ったように言う。


『あの見た目でロビー歩くの、結構勇気いるよね』


『まあね』


 実際、下層型は性能は高い。


 ただ、あそこまで異形化すると、かなり目立つ。


 街を歩いているだけで視線を集めるタイプだった。


『でも、このゲームそういうの隠せないしね』


『あー』


 アンナが頷く。


 GEワールドには、見た目だけ自由に変更する機能がほとんどない。


 防具は、そのまま見た目へ反映される。


 だから性能を追求すると、自然と格好も変わる。


『他のゲームだと、そういうのあるよね』


『見た目だけ変えるやつ』


『いわゆる見た目装備と言われてるやつね』


『ホントは重装甲の防具なのに、コスだけ好きなのに変えるとか』


『まあ、あったね』


 GEワールドでは、それがほぼ存在しない。


 だから装備を見ると、大体どういう戦い方をする人なのかわかる。


『アンナもそれ、初期シスター服じゃないの?』


『違うし』


 即答だった。


 てっきり上層の教団キャラで開始したときに配布される尼僧コスかと思ったが違うのか。


『ちゃんと上位版あるから』


『ユーザーの要望で追加されたんだよね』


『へぇ』


『昔はほんとに弱いの使っていたんだからね?』


 少しだけ笑う。


 どうやら人気装備だったらしく、あとから高性能版が追加されたらしい。


『じゃあ見た目だけ勢じゃないんだ』


『失礼だなぁ』


 アンナが少し不満そうに言う。


『でも、前いたじゃん』


『ほら、ネコミミの人』


『あー……』


 以前、一緒にミッションへ行ったロールプレイ勢のプレイヤー。


 ネコミミ。


 フリフリのメイド服。


 語尾に「にゃん☆彡」を付ける人。


 あまりにも見た目がネタ寄りだったので印象に残っている。


『あの人はホントに防御力なかったよね』


『防具は一切何も付けてなかったね』


『しかも、一発も当たってなかったし』


『上手かったよね』


 アンナが少し遠い目をする。


『なんか、GEワールドって変な人多くない?』


『オンラインゲームってそんなものじゃない?』


 そう返しながら、下層型のプレイヤーを見る。


 当人は特に周囲を気にする様子もなく、普通にマーケットを眺めていた。


 たぶん、あの人にとってはこれが普通なのだろう。


 強さを求めた結果、今の姿になった。


 いや、もしかしたらあの見た目が好きなのかもしれない。


『まあ、いろんな人いるよね』


 アンナがぽつりと言う。


『いるね』


 短く返す。


 ロビーには今日も色んなプレイヤーがいる。


 性能を重視する人。


 見た目を重視する人。


 ロールプレイを楽しむ人。


 戦闘を極める人。


 ただ雑談している人。


 同じゲームを遊んでいても、見ているものは結構違う。


『じゃ、行こっか』


『うん』


 ミッションカウンターへ向かう。


 背後では、巨大なLL武器の駆動音が低く響いていた。

 第十話でした。


 今回はMMOのキャラクリと見た目装備のお話でした。


 オンラインゲームを長く遊んでいると、「なぜその見た目にしたのか分からない人」と結構出会います。


 性能重視なのか、趣味なのか、ロールプレイなのか。


 本人に聞いてみると意外な理由だったりもします。


 逆に、見た目だけでその人の遊び方が何となく分かるゲームもありますよね。


 GEワールドはそういう方向のゲームとして考えています。


 次回も、もう少しMMOらしいお話になる予定です。


 それではまた次回。

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