#8-4 三つの饅頭の中で
「妹?」
「「うわっ!?」」
「優也って妹いたの?1人っ子って聞いてたけど」
手には涼しげな青のグラデーションがかかったソーダを持ち、浮かれメガネをクイっと上げてこちらを不思議そうに見ている海美がいつの間にか後ろに立っていた。
「1人っ子だよ。妹なんて居ない」
「俺も聞いたことないな。教授からも」
「そうなの?なんだぁ」
「なんだとはなんだ」
海美を座らせ前に頼んで置いたハンバーガーをおけばわぁ美味しそう!!と齧り付く。俺も大きな餃子ドッグを口に頬張った。ネギのいい香りと食べ応えのあるジューシーな肉。
「うわ、うま」
「てか2人とも私のこと待っててくれたの!?先食べても良かったのに!ごめん!」
「いやいや、海美ちゃんがよく言ってるじゃない。1人よりも2人、2人よりも3人で食べた方が美味しいってさ。本当すごい美味しいね」
「〜っうん!サイコー!!」
嬉しさ全開満面の笑みの海美。楽しんでもらってるなら何よりだ。まだまだ冷たい南国味のドリンクで喉を潤して、まだ口をつけていない方の餃子ドッグの端を具を溢さないよう慎重にちぎる。
「海美、これ食う?口つけてない」
「えっいいの!!食べたい!」
「ここ置いとくから、好きに食え」
「やたー!!優也もこれ一口あげる、齧っちゃっていいよ」
はい!と元気よく差し出されたハンバーガーを一口かじる。え、うま!?分厚い肉の旨みとシャキッとした野菜類、それに外はハード、中はふわふわのバンズ!どうせ良いのはキャラクターの見た目だけだと思ったけど、ちゃんとしっかりうまいじゃん!
「うまっ!?何これ!?」
「クオリティーすごくない?これで2400円だよ!?」
「や……すい?のか?」
「全然安い安い!」
「いや、高いよ……」
財閥令嬢の金銭感覚はわからないなぁと苦笑いする龍斗さんに首を傾げていると、あっ、という龍斗さんの声と共に手元にある空になった透明のプラスチックカップに手がぶつかりカタンと倒れている。この浮かれメガネのせいでよく見えていなかったんだろうな。空でよかった〜と龍斗さんはほっと息をつく。
倒れたカップはすぐに戻され、そうだ、と思い出したように龍斗さんがもう一つのプラスチックカップをテーブルの中心に置く。
「2人とも、これ食べる?」
「あ!それビッググリーンメーンズまんじゅう!?」
「有名なのか?」
「うんうん、名物!さっき見たら売り切れてだんだけど、龍斗さん買ってたんだ」
「売り切れてたの?じゃあラッキーだな。3つあるから一個ずつね」
「はーい!ねぇねぇそれぞれ何の味食べるか当てようよ」
「味違うのか?これ」
プラスチックカップの中に入った三つの緑色の饅頭は表面に印刷されたキャラクターの表情こそ違うが大きさは一緒で手のひらサイズだ。
「うん。えーと、なんだったかな。チョコとあと……?」
「まーまー食べてみようよ。俺はこれ」
「じゃあ私はこれ!」
「じゃ残ったやつで。いただきます」
ぱくっと3人同時に頬張る。
……あっ
「っっつ!?」
「あ、私ストロベリーだ!」
「俺はチョコ〜この感じ、アタリは優也かな?」
「辛っ!?何ですかこれ!」
どうせチョコとかカスタードとかだろうと鷹を括って一気に頬張ったせいで口の中から火が出そうなほどの熱さを感じる。なにこれ!?
「期間限定の珍しいフレーバーセットらしくて、チョコとストロベリーと……スパイシーチリペッパーだ!!中身がどれがどれだかわからないから、友達とシェアして出会えたらディスティニー!って販売のスタッフさんが言ってた」
「えぇ、いいなぁディスティニー」
「結構辛いですよこれ」
「あー確かに子供には注意してあげるようにとは書いてあったな。あ、優也……ごめんな……」
「子供じゃない!!今年で21!!」
半ギレで突っ込めば龍斗さんと海美はゲラゲラと笑った。辛さに耐えられないわけじゃないけど、甘い系がくると思って齧り付いただけあって衝撃が強かったんだからな。うまいけどさ!
「あー面白い……って、海美ちゃん。そろそろ見たいショー始まるんじゃない?」
「うわっいけない!早く食べなきゃ!」
「詰まらせんなよ」
「誰かさんとは違って子供じゃないんでね!やばやば、サマーフェスティバル始まる」
食べ物を食べ切り、水分も充分にとってその場を後にする。




