#7.5-3 とくべつな秘密
「何だこれ」
「「わ!?」」「きゃっ!」
びっくりした!!
足音もなくいつのまにか私の隣に立ち、ギョッと私のもつ紙袋を覗き込んできた、優也だ。
外から帰ってから着替えたのか、隊服じゃなくていつもの室内の黒い半袖と裾野広い黒のズボンの私服だ。
「優也。おかえり」
「ただいま。何これ」
「え?あ、研究部からのプレゼントで……」
「簡易顕微鏡セットです!実際の実験で使ってる顕微鏡とは違いますけど、でもそれなりの精度で対象を観察できるんです!しかもそんなに操作も難しくないし、どこでもつかえるので、いつでもどこでもご自分の細胞が見たくなったら是非是非使ってください!」
「…………うん。気になったら、見るかも」
しどろもどろに返答する。さすがは変人揃いの研究部。ねぇこれ渡そうって提案したの誰?的戸さん?煌湊さん?ダメだ。どっちもワンチャンある。てか何で渡そうと思ったの?その頭の中で何がどうしたらこうなるの。百歩譲って顕微鏡はおいといて、自分の細胞が見たくなる時なんてある?え、これ常識なの?私の知らない常識なの?
困惑が極まる私を優也が苦笑いでフォローしてくれる
「研究部らしいですね」
「えぇ。これで海美さんも一歩研究者へ近づきましたね!」
「……遠慮したいなぁ」
「それじゃ、自分はここで。パーティー楽しんでください!」
「あ」
そう言い残して笑顔で煌湊さんは去っていく。パーティー?何の……
あ、そうか。
口角が上がるのを抑えられないまま優也を見るとやられた、といいたげな額に手を当てて困った顔。私の視線に気付きながらもこっちを見ないその意地が最大のネタバレだ。
「ね、優也」
「なんだ」
「今日外出て帰ってきてから、何してたの?」
「………」
「優也さん。これお荷物です」
優也が荷物を受け取り、狛華さんは楽しんでくださいと苦笑いでその場を後にする。えぇ何?知らなかったの私だけ?
優也が半ば強引に私の持っていた荷物をひったくる。狛華さんが持ってくれてた分もあるし、結構な重さだろう。それでも無言で持ってくれるあたり協力の申し出は拒否されそうだ。
「いくぞ」
「はーい!」
「無駄に元気だな」
「なんせ今日仕事も訓練もなかったからね」
「……だろうな」
「何でだろうなーー今日何の日だろうなーー」
「うるせぇ!!」
優也の隣でダル絡みしながら10分ちょっと。特殊戦闘部隊であり特異生物である私たちの居住区域に到着する。
居住区域は奥のつきあたりの階段までまっすぐな廊下があって、1番手前の右手側に共有スペース、その奥の左手側に優也の部屋、間を開けて龍斗さんの部屋。つきあたりの階段を登った先に私の部屋。
優也の部屋で立ち止まる。ほほーんだから入ってほしくなかったわけね。優也は荷物を置いて、扉横にあるコードを入れて鍵をあける。さ、入ろ
「海美、後ろ向け」
「え?なんで?」
「いいから」
ぐるっと扉に背を向けるように肩を回される。扉を開ける音、荷物を部屋に入れる音。美味しそうな匂いがちょっとだけ鼻を掠める。見えない背中の向こうで何が起こっているんだろう。
「ね、優也まだ?」
「まーだ」
優也がそう言った瞬間、突然視界が真っ暗になる。え、なになに!?指で目元を触れると細長い黒の布だ。いつも外に出る時につける目隠しと同じ。何か楽しくなってきた!なになになに!
「なにっ!?何これ〜!!」
「おい暴れるな」
「ふふーん怖いな〜何されるんだろ〜!?」
「入ってからのお楽しみ」
ガチャと扉が開き誘導にしたがってゆっくり中に入っていく。ふわっと香る美味しいご飯の匂い。こんなの見なくてもわかるよ絶対美味しいじゃん!!
トスっと優しくソファに降ろされる。せーの、という龍斗さんの小声と共に目隠しが外され視界が真っ暗闇から一気に明るくなる。パチパチと瞬きをすると徐々にちゃんと見えてきて──




