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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#7.5 幕間 うみの星
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#7.5-2 うれしい誤算

「海美ちゃん」


「あ、狛華さん!」


 午後5時半すぎ。優也がいないから訓練もできず、やることもなくて本部の中をぶらついていた。けれど途中色々な人からどうしたの?他の2人は?なんて聞かれては1人なのを心配される。私そんな子供じゃないんだけど!と、やって来たのは小休憩室。


 ここは私たち特殊戦闘部隊がよく入り浸っていることもあって人が来ない。お昼の後眠くなってここでお昼寝をして、起きて勉強して、飽きて今に至る。


「ちょうどよかった!勉強飽きちゃってさ〜」


「わぁ凄い!勉強されてたんですね。今お時間大丈夫でしたか?」


「うん全然!」


「良ければ私の部屋に来ませんか?ちょっと渡したいものがあって」


「え!いいの!?」


「長官に許可は貰ってます。いきましょうか」


 SCRの人たちは全員この本部からつながる一般居住区域に住み込みで働いている。その一般居住区域は安全面から私たち特異生物は入ることを禁じられている。


 でも許可とったならいいよね!まだ優也と龍斗さんは帰ってこないし!


 狛華さんのあとをついていく。何だろう渡したいものって。ワクワクしながら歩くとすれ違う人達に微笑まれてしまった。うぐ、だって楽しみなんだもん。


「こちらです」


「お邪魔しまーす!」


 中に入るともうわかる。甘いけどさっぱりしたいい香り。部屋の中は几帳面に整理整頓されたとてもおしゃれな部屋。い、イメージ通りすぎる!


「綺麗……」


「クッションあるのでそれ使って適当に座っちゃってください。何飲みますか?緑茶か紅茶か、コーヒーか、あと甘いのだったらキャラメルマキアートとかありますね」


「きゃ!?キャラメルマキアートで!」


 何!?何で自室にそんなおしゃれな飲み物があるの!?


 言われた丸いクッションを腕に抱えて椅子に座る。それ座布団みたいにして大丈夫ですよとか言われたけど無理だよそんなの!!こんなおしゃれなのに失礼すぎじゃない!?


「お待たせしました。どうぞ」


「あ、ありがとうございます……」


 白のシンプルなマグカップを受け取り、一口飲むとちょうどいい温度のミルクの風味がキャラメルの甘味と混ざり合い、甘い香りがふわっと鼻を抜けていく。うわぁ美味しい。こういうの久しぶりだなぁ。


「美味しい、ありがとう狛華さん!」


「お口にあって何よりです。これ、簡単なものですけど」


 狛華さんはキッチンから小さな網籠を持ってくる。中を見ると小さなクッキーとかだ。柄のないシンプルなクッキーからボックスクッキーまである。うわー嬉しい!


「昨日作ったんです。きっとお飲み物に合うかと」


「え!?手作り!?」


 いただきます!と一口。甘すぎずバターの風味とほのかに紅茶の香り。え、やば、うま!?


「美味しい……!すごい!」


「良かった、久しぶりだったので緊張しちゃいました。これ、たくさんあるので良ければ後で持っていってください」


「いいの?ありがとう!……優也とも食べるね」


 狙ってニヤリと笑うとぶわっと狛華さんの顔が赤くなる。いや待って推しに自分の手作りを食べさせるわけにはそれはちょっと推す身としてはどうなんですか、とか急に早口で喋り始めたけど一旦無視。恋愛的な意味で好きってわけじゃないのはわかるけどね。こうやってたまーに遊んじゃう。


「優也なんて仏頂面のお小言野郎なのに、なーんでそんないいかね」


「いえ、あの瞳の奥に秘めた強い決意、たまに出る笑顔のギャップ、ぶっきらぼうに見せて底のない優しさ!ツンデレ萌え萌えすぎませんか!?」


「え、あ、うん......」


「推しはすごいです。いつ見ても1番に輝いていて、目に焼き付けば消えることはない。まさに一番星で一等星……」


「……うん。そうだったね」


 手を胸の前で組んでうっとりするような表情。あー自分の世界入っちゃった。優也の話になると大体こんな感じなんだよね。


 いつ戻ってくるかなぁとキャラメルマキアートを一口飲んでクッキーをつまむと、はっとしたように狛華さんは戻ってきた。あれ?早かったな。


「あそうだ、渡したいもの持って来ますね」


「え?これじゃなくて?」


「いえ、違くて。ちょっと待っててくださいね」


 すると狛華さんはベッドの下の収納を開けて何かを取り出す。落ち着いた緋色の紙袋にベロアリボンが可愛く付けられている……プレゼント袋?



「お誕生日おめでとうございます。海美ちゃん」



「え……」


「18歳のお誕生日だとお聞きしました。もうすっかり大人ですね」


「う、うそ」


 忘れてた。かんっぜんに忘れてた!


 口を手で覆う。自分が信じられない!


 毎年毎年、家では誕生日近くになるとお父さんに欲しいものとか聞かれるからそれで思い出したり、学校で6月生まれの友達が祝われるのをみてソワソワしたりするから忘れたことないけど、SCRに来てからそんなことなくて。というかまさかそんなことないだろってどこかで諦めてて。でも、


「ありがとう〜〜!!狛華さん大好き!!」


「ふふ、さ、プレゼント見てみてください」


 受け取った紙袋を丁寧に開く。中には欲しかったブランドのリップとマキシマイザーがセットでおしゃれなポーチに入れられている。自分じゃなかなか買えないやつ!うわ〜嬉しい!


「すごいすごいすごい!全部欲しかったやつ!え何で分かったの?」


「海美ちゃんが外でよく見てたお店とかを中心に好きそうなブランドの流行りを買ってみたんです。喜んでいただけて嬉しいです」


「そんな……!ありがとう、ありがと狛華さん!すっごい嬉しい!!」


「それと、これが狛坂さんから、これが長官からになります」


「え!?」


 狛華さんはさらにプレゼント袋を取り出して渡してくれる。狛坂さんは有名な高級チョコレートの箱、なんと長官からはサマジマ財閥が直営しているお店の1番人気のプリンだ!


「うわなんか、すごい嬉しい」


 長官までくれるなんて、と胸がいっぱいになる。


「皆さん悩んでましたよ、どれなら喜んでくれるかなって。そういえば研究開発部の煌湊さんも用意してるって聞きました。受け取られました?」


「まだもらってない。会いにいこうかな」


「それとこれ、司令部全体からと法務部全体から。こっちは医療部から、あとその他有志から…」


「はい!?」


 どんどん積み上げられていく大きめのお菓子の詰め合わせやタオルセットなど。なになになに!?何でこんなに!?


 目を白黒させて驚く私を狛華さんは笑う。


「みんなまだ若いのに明るく頑張る海美ちゃんの姿を見て、きっと応援したいんですよ」


「は、はぁ……?」


 私が?そんなにすごいことしてるかな。いやしてるけどさ、色々と。そんなのみんな一緒じゃん。何でこんなに!?嬉しい!


「あとはみんな可愛がりたいのかも」


「私を?」


「可愛い娘みたいなそんな感じですかね。ここにいる人の年齢層的に」


「はぁ……」


 これ、持って帰れるかな。積み重なった箱達を眺めて心配になる。そうだ、優也とか呼べば持ってくれるかも。時計を見ると午後6時前だ。流石に外からはもう帰って来てるはずだし、そう思ってインカムに手を当てて呼び出す。


「優也〜ねぇ聞こえる?」


『……ザザッ…なんだよ』


「今どこ?ちょっと来て欲しいんだけど」


『急用か?』


「荷物が多くて運べないから手伝ってほしい」


『今動けない。ちょっと待ってろ』


「うん!じゃあ食堂にいるから迎えに来て〜」


『了解』


 通信が途切れる。流石に狛華さんの部屋まで来てもらうのは申し訳ないし、何も考えずに食堂とか言っちゃったけどここからどうやって運ぼうか。


「食堂までですよね。私手伝いますよ」


「え、いいの?ごめんね」


「いえいえ。バースデーガールなんですから、是非持たせてください」


 そう言って大きな紙袋を取り出してプレゼントの箱を入れていく。出してくれたキャラメルマキアートを飲み切って、大きな紙袋にまとめると3つ分。私が軽い一つ、狛華さんが重い二つを持ってくれる。


「狛華さん。飲み物ごちそうさまでした」


「いえいえ。さ、行きましょうか」


 部屋を出て食堂に向かう。この一般居住区域は食堂に近いし、そんなにかからないはずだ。


 …かからないんだけど、


「鮫島さん誕生日なんだって?これあげる」


「技術部の白瀬さん!ありがとうございます」


「海美ちゃーん誕生日おめでとう!雑でごめんだけどこれあげる!」


「医療部の片箔さん!ありがとう〜!」


 右から左からかかる声。さっきからこんな調子でキリがない。


 実はSCRに来た頃、龍斗さんか優也がいないとめちゃくちゃ広いこの本部じゃ迷子になってしまっていた。その結果色々な人に道を聞いては雑談で仲良くなって、それが各部署で広がって、ここでもいい意味で有名人になったわけで。


「海美ちゃん、すごいね……」


 食堂に着いたころ、手に下げた紙袋は四つに増えていた。あまりの量に苦笑いしてしまうが、全部心があったまるプレゼントだ。


「すごい量。こんなたくさんの人に祝ってもらって、それに私が《鮫島》だからじゃなくて、《海美》だからってくれて」


 今までは、そりゃもちろん友達とかは善意でくれるけど中には鮫島財閥の娘の私に取り入ろうとか、そういうのも当たり前にあって。


 でもここにいる人たちにとっては私は《鮫島財閥のご令嬢》じゃなくて、《鮫島海美》であって、《鮫島海美》を見てくれている。それがどれだけ嬉しいか。


「そうですね。1番はきっと海美ちゃんの人柄の良さですね」


「ううん、そんなことない。でも嬉しい。ありがとう狛華さん!」


「あの!海美さん!」


 聞き覚えのある声に振り返ると特徴的な赤髪をぴょんぴょんと跳ねさせながら息を荒げた煌湊さんが走って来た。手には大きなビニール袋を持っていて、中に入っているものが重いのか手持ち部分がだいぶ伸びている。


「これ、研究部からです!」


「わぁっ!わざわざありがとうござ……います」


 嬉しさで歓声をあげたはいいものの、受け取った紙袋の中を一目覗いて口角がピクピクと痙攣する。え、何、これ。



「何だこれ」



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