#7-10 答え合わせ
『特異生物の反応消えました!任務完了です!』
空から落ちてくるフレイム。え、ちょ、受け止められないけど!?
「ストーム!!上っ!フレイムが!!」
「あ、大丈夫大丈夫。それより避けときな」
ススス……と今いたところから離される。え?何?どういうこと??
ぐんぐんすごい勢いで落ちてくるフレイム。いやいやこれで落ちたら死ぬでしょ!?ストームを見ても普通の顔。なんで!?もう地面が近いのに!咄嗟に目を瞑る。いやちょっと、待っ……!?
トンッ……
「……へ?」
「お疲れ様、フレイム。体は大丈夫?」
「問題ないです。長官、辺りの粘液の処理に入りますが、よろしいですか」
『構わん』
「了解」
そう言って周りの粘液が残るところに行って蒸発させてるフレイム。え?何?何これ?何でみんな普通の顔してんの?普通何でそんな怪我してるんじゃないのって心配するもんじゃ無いの!?
「え、ねぇフレイム骨とか折ってるんじゃないの?あんな高いところから……」
「あぁ、フレイムはおっきいネコみたいなもんだからね。元気なら高いところから落ちても平気なの」
「へぇ……え、いやいやいや!?高さにも限度ってもんがあるでしょ!?ネコとはいえ!」
「それはまぁ、変異故の?」
「えぇ……」
驚く私を初めは俺もびっくりしたけどね、と笑うストーム。あーあ、心配して損した。上がっていた肩が落ちる。何だか心配疲れしちゃったなぁ。
「処理大体終わりました。ほとんど残ってなかったですけど」
「お疲れさま。じゃあ帰ろうか。狛坂、帰りの車手配して」
『こちら狛坂。もう車を向かわせています。あと4分ほどで到着するので変身を解いて置いてください』
「りょーかい」
3人とも変身を解く。あーあ、深く切り裂かれたところ、洋服まで貫通してダメになっちゃった。そう残念がっていると、後ろからふわりと肩に隊服の上着がかかる。振り返るとそこには龍斗さん。そっか、服が破けちゃったから隠してくれてるんだ。切り裂かれたのは上着だけだけど、やっぱ頼りになるなぁ!
「それにしても、海美ちゃん動けるようになったねぇ。さっき見てて感動しちゃった」
「え?そう?そうでしょ!?頑張ったよね!」
「頑張ったね、本当にすごい。俺なんてもう居なくとも、優也と2人でやってけちゃうんじゃない?とか思った!」
「えぇ〜?それは言い過ぎだよ〜」
いつのまにかニコニコと口角が上がっている。うふふ、嬉しいなぁ。頑張って訓練してて良かった!龍斗さんってば褒め上手だなぁ!お小言魔人な優也と違ってすぐに私の欲しい言葉が飛んでくる。
「………」
「優也?どうしたの?」
龍斗さんの心配そうな声に視線を動かすと何か暗い顔で言いたげな、何か堪えるような表情の優也。え?あ!
「私のこと『まだまだですよこんなガキ』、とか言うつもりでしょ!でも今日は私すごい頑張ったんだし無しだからね!」
「龍斗さん」
「無視?」
トン、と優也が龍斗さんの胸を拳で叩く。
「ん?」
「確かに、海美の成長はすごい。すごいですよ。でも……」
え、何か褒められてる。嬉しい。……じゃなくて!え?何事?龍斗さんも戸惑っているのか困り顔だ。それを優也は真剣な面持ちで目を合わせている。
「俺の隣には、アンタが居ないとでしょ」
「え……」
「俺の炎は、龍斗さんの風を受けて更に強くなる。アンタが居ないと困るんです」
「ん……??優也……?」
「だからSCRをやめるだなんて言わないでください!!」
「はい!?」
何事!?
突然のカミングアウトに困惑する龍斗さん。大きく見開いた目がキョロキョロと動いて思い当たる節を探しているみたい。対する優也は珍しくすごい辛そうな顔だ。え?なに?何事これ?ドッキリ?
優也がこんなこと言うのは珍しい。なんか1人で熱くなってるけど、本当にどうしたんだろう。
「龍斗さん辞めちゃうの?」
「いや俺そんなこと言ったことな」 「だって!最近海美と俺を見て!よく考え込んだり寂しそうな顔したり!さっきだって『俺が居なくとも』とか言い始めるし!!」
優也が声を大きく荒げる。こんなに躍起になる優也は初めて見た。まるで子供が癇癪起こしたみたいで、すごく辛そうな表情で涙ぐんでいる様子にギョッとする。あの優也が泣く!?
「ちょ、ちょっと待て優也。俺は別に辞めるとか言ったことないよ」
「確かに背負いすぎるなとは言いましたよ!でも龍斗さんがいないのは違うじゃ無いですか。歳が来ておじさんになっても、あなたは特殊戦闘部に必要なんです!」
「うんナチュラル失礼止めような?」
龍斗さんが言うには優也の勘違い?でも優也の思い詰めた顔は本気だ。何?本当なの!?嘘なの!?
「さっきのは冗談だし辞めようなんて思ったこ」
「じゃあ何で最近様子が変なんですか!今日の朝だって!ずっと深刻そうな顔して!なんで!」
詰め寄る優也に耐えきれなくなったのか、龍斗さんが優也の両肩を掴む。
「〜っそれは海美ちゃんが優也のこと好きなんだって思っただけだって!!」
「え?」
「え」
「……あ」
ヒュゥウウッと冷たい風が吹く。
しばらく静寂が私たちを包む。そろそろ送迎車到着の連絡が来るはずのインカムの向こうもすごい静かだ。誰もが重い沈黙に口を縫い付けられて、口が開かなくなってしまったみたい。
「ごめ、あ、ごめん……」
青ざめた龍斗さんが萎んだ声でなんとか静寂を破り、そのデカい体を縮こませている。
「……海美」
困ったような優也の声。
「…………ぃ」
「え?何て?」
「ないだろ、」
「ナイロン?」
「そんなわけないだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「い゛っっだぁっっ!?」
正面にいた優也を近くの壁に蹴り付ける。あまりの遠慮のなさと優也ですら避けられなかった瞬発力にヒュッと龍斗さんが息をのみ顔を青くした。
「私は優也に!!外の世界を知ってほしいだけ!!バカ!!バカ龍斗さん!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!許して海美ちゃん!!」
遠慮なんて知らない。悲鳴をあげながら校庭を逃げ惑う龍斗さんを全力で追いかけ回す。
「それに優也も!!好きとか、そんなんありえないから!!!バカ!アホ!!!勘違いアホ!!」
「ごめんなさい!?……ん?何で俺は蹴られた……?」
逃げる龍斗さんの腕を掴み、怒りに任せた馬鹿力で優也の方へぶん投げれば体格の大きい龍斗さんを受け止めきれずうげっと潰れたような声を上がった。
「うっさい!!もう2人とも黙って!!」
「「す、すみません!!」」
「バカバカバカバカバカ!バカ!!もう知らない!!」
「ちょ、海美、まっ」
「来んなや横ハネ寝癖ネコ!!」
「遺伝だわ!虎だし!いやそこじゃないわ!!」
頭に血が上る。顔が真っ赤になる。
迎えの車が来るまでの数分間を暴れに暴れ回って、幾度とない本気謝罪と3ヶ月分の朝ごはんと夜ご飯のメニューの決定権をもらって、和解交渉成立。事態は収束しましたとさ。




