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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#6 夢のありか
50/112

#6-12 守られるだけじゃないから

「はっ、はっ……」


 嵐はドラゴンが渦を巻いたような竜巻となってあたり一面を巻き込んだ後、少しずつ落ち着いていく。体にうまく力が入らない。翼を大きく羽ばたかせることもままならなくなり、ゆっくりと降下する。


「ゲホゲホゲホッッ……あ、ぁ」


 身体中を滅多刺しにされた時の傷、そして内臓もやられてて流れる血が止まらない。血が圧倒的に足りてない。四肢の痺れも、頭がぐわんぐわん揺れるのもそのせいだ。それに喉の奥、気管支、肺、全部にこびりついていた血がブレスでとれて、無理やり瘡蓋を剥がしたようなもんだからまた口から血が止まらない。


 ズサっとみっともなく地面に転がりながら着地する。気がつけば翼は元にもどって、少しずつ人間の体に戻っていく。体の細胞が変身態を保っていられなくなったんだろう。


 ……優也と海美ちゃん、無事かな。2人はダメージのない変身態だったしこの嵐だけじゃ死ぬまでは行かないけど、もしかして──


「おい」


「っはぁ……!?」


 嘘だろ、まじかよ。


 視線を声の方へ動かせばそこにいるのはスカンク杉。体の至る所に杉ではなくさっきの嵐で巻き上げた瓦礫の破片が突き刺さって出血してるし切り傷も打撲痕も肉が抉れているところもあってボロボロだ。よく見ると足元もフラフラ。でもそうか、コイツも特異生物。俺たちと同じように傷の治りは早いし再生だってする。完全に焼却しない限りは。


「よくも、やってくれたなぁ……このキメラ擬きが。鳥か?トカゲか?ワニにも似てるなぁ……」


「キメラはお互い様でしガハッッ」


「うるさい!うるさいうるさいうるさい!オレはザセル様に生み出された崇高なる存在だ!!オ前如きと一緒にするな!!」


「ゲホゲホゲホッッ、っは、やっぱザセルか」


「ザセル様はこの地球を救う救世主なのだ!!オレはお前を殺し!あの赤いのを献上する!!」


 あの赤いの。フレイムのことか。なんでザセルはフレイムを欲しがってる?


 首を掴まれ持ち上げられる。息が出来ない。


「そうだ!オ前はここで死ねええええええええええええ!!!」


 ギリギリギリギリとそのまま首絞められる。スカンク杉の爪が皮膚に食い込み引っ掻いて血が飛び出る。まずい、人間の体の今、そこは太い血管がある。これ以上血を失えば───


「死ねえええええええええええ!!」



 死、



「ギャアッッ!?」



 首に掛けられていた爪が離れ体は重力に従ってどさっと倒れる。はあっはあっと空気が気管を通る。傷に染みる空気で息ができていると分かる。し、死ぬかと、死んだかと思った。


 視線を上げれば目の前に俺を庇うように赤と黒の虎。フレイムだ。少し離れたところにスカンク杉が転がっている。助けてくれたのか。


「ふれいっゴホゴホッ!」


「いいです。喋らないでください」


「ふ、フハハハハハ!!そっちから来てくれるとは助かるねェ赤いの!!オレはお前をザセル様にけ」



「黙れ」



 その一言でビリビリと空気が震える。顔なんて見なくてもわかる。怒ってる。そう感じる。長い間一緒にいたけどこんなに怒っているのを見るのは初めてだ。そのフレイムが放つ威圧感に、スカンク杉も言葉を押し込まれた


「っ……は、はは、ハハハハハ!!ざ、ザマァネェ!!そいつはオ前を守ってたせいでボロボロだァ!!」


「………」


「オラ!まとめて杉になっちまえ!!」


 そういうとスカンク杉はまたガスを放出しようと、体から伸びる杉を再生しようとしている。ダメだ、守らないと、フレイムを!


 そう体に力を入れても、今度こそ立ち上がれない。立ちあがろうと腕を地面に突っ張っても、力が抜けてどさっと倒れてしまう。ダメだ、ダメだ!フレイム!


「……もう」


 するとフレイムは屈んで俺の額に優しく指先をつけて、そのまま突き返した。ちょうど俺が起き上がれないように。


「もういいです」


「は……?」


 フレイムは立ち上がって振り返り、スカンク杉に向かいあってその表情は見えない。


「もうこれ以上、あんた1人に背負わせたりなんてしない」


「ゆう……や?」



 Burn up the mutation!



 フレイムの体が炎に覆われていく。


「な、なんだあれは!?」


「隙あり!!!」


「ギャッッ!?!?」


 海美ちゃんだ。音から察するに、多分電撃でスカンク杉の再生を妨害し細かく噛み砕いたんだろう。そして、




「──ファイナルフレイムアタック!!」




 再生の隙を与えず、炎を纏った虎がぶつかり大爆発を起こす!!



「ギャァァァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 炎はスカンク杉を飲み込み焼き尽くして、黒煙と熱風を残して消えていく。いつもながらフレイムの炎は相手の塵すら残さない。


『特異生物のシグナル無し。焼却完了です』


 インカムから狛華ちゃんの声。終わったんだ。そう気が抜けるとその場に倒れ込んで本当に動けなくなる。


「龍斗さん!」「龍斗さん!」


 変身を解いて真っ直ぐに2人が駆け寄ってくる。焦る優也と泣きそうな海美ちゃん。あぁ、ごめんね。そんな悲しそうな顔させちゃって。


「何!?何でこんな肌が青いの……!」


「血が足りないんだ。狛坂さん!救急搬送の準備!こっちに柏木先生も連れてきてください!!」


『了解!輸血準備してあるのですぐに向かわせます!』


 俺そんなやばいのか。あ、でも、毒が身体中に周り切る前に血を大量に流したおかげで、毒が全身に周りきらなかったんだ。だからまだ体が動かせた。良かった。


「龍斗さん、龍斗さん!!しっかりして!!」


「龍斗さん!!」


「ゲホッッゲホゲホゲホッッ」


「っ!ダメだ、体勢変えますよ!」


 うつ伏せにしてもらい血が肺から口の方へと流れ、息が少し楽になる。優也がトントンと背中を叩くと気道の傷が塞がっていないのかまだ口から血が溢れた。傷もまだ塞がってないものがあったみたいで、俺を中心に大きく血溜まりが出来始め、暗い中今にも死にそうな自分の顔が映る。あぁ、



 光莉もこんな感じだったのかな



「どうしよう優也、龍斗さん死んじゃう!?」


「死なせない、絶対!!」


 優也が俺の服からいつも優也に使っている麻酔や薬、止血帯、ガーゼや包帯を取り出す。内臓の傷はどうにもならないから、外傷の出血を止めようとしているんだろう。


 手際よくそれを俺の傷や出血の止まらないところに丁寧に巻いていき、薬を飲ませようとする。えちょっと待って。手で優也を制止する。


「ゲホゲホッッ優也、むり、飲めない」


「いつも俺に無理やり飲ませるでしょ!!はい飲んで!!」


「いや俺今モガモガモゴ」


「飲め!!」


 いや待てよ!俺今喉やばいんだって!!


 そんな俺の主張は虚しく水で押し込まれ飲み込まされる。海美ちゃん。こんな時に気を利かせて水とか持ってこなくて良いのよ。でもありがとうね。


 案の定酷くむせる。そりゃ確かに優也に飲ませたことあるけどさぁ、無理やりってよりはだいたい優也が意識ないから仕方なくだからね?大量出血じゃワンショットができないから錠剤飲むしかないのはわかるけど、俺に容赦なさすぎない?てか筋注ならいいって言われてなかった!?


「とりあえず今できることはしました。内臓、特に肺が損傷してるみたいですけど、薬が効いてくるまで持ち堪えてください」


「今のなに?痛み止め?」


「的戸さんが作った細胞の回復を促進する薬。経口だけどかなり即効性があるし、造血幹細胞とか回復すれば血色も良くなるはずだ」


「そうなの!……龍斗さん、大丈夫?」


「…………」


 コクリと頷きニコッと笑って見せた


 ……本当は全然大丈夫じゃないけど。呼吸するたびに突き刺すような痛みがやばいし、てかもう全身痛すぎて今にも意識が飛びそうなんだけど。でもこの2人の前ではかっこいい大人でいたいんだよな、強がってても。


 優也は呆れたように小さくため息をつく。


「龍斗さん。その調子です。そうやって持ち堪えていてください」


「……」


 ありゃりゃ、優也には流石にバレてるか。でも言わない優しさってやつかな。苦笑いでフレイムを見れば、呆れた目でもう一度ため息が漏れていた。


「来た。柏木先生の車だ」


「え?どこ?」


「もうすぐ」


 そうして1分経ったか経たないか。車の音が聞こえてくる。ガチャっと大きな扉が開く音。患者を運ぶための大きな車。隠密性を考えて普通のバンと同じ見た目だけど、中は救急車と同じ作りの車だ。近くに早足で近づいてくる足音。


「柏木先生!」


「優也。状態は?」


「重度のチアノーゼ、内外共に損傷多数で特に肺がやられてます。ワンショットが使えなくてセルヒール1錠500mg、3分前に飲ませてます」


「わかった。あとは任せな」


 青のスクラブに医療用マスク、医療用のゴム手袋を嵌めきびきびした動きで指示を出し、俺をあっという間に車の中へ搬送していく柏木──柏木癒羅カシワギ ユラ──先生。いつも思うけど、本当に60歳か?


「さぁもう行くよ。優也、手を握ってやりな」


「すみません。まだ任務の途中で残ります」


「あぁそうか。それじゃ先に戻るよ。出しな!」


「気をつけて」


 バタン!と扉が閉じられ車が発車する。やっと一区切りだ。テキパキと手を動かしながら柏木先生が話す


「聞いたよ龍斗。随分と無茶するねぇ」


「………ゴホッ」


「喋らんな!全く。自分がどんな状態かわかってるのかね、アホ」


「……………」


 泣きそう。正論だけど。

 すぐ隣で柏木先生はどんどん処置を進めていく。


「で?夢は見つかったのかい」


「……………」


「聞いてたぞ、優也と出会って誰にも譲れない夢のありかを見つけたって。かっこよかったなぁ!」


 こう言われると恥ずかしい。やめて欲しいと顔を顰めるが柏木先生のニヤケを助長させただけだった。


 そこにあるのが俺の夢なのか確証なんてないし、わからないけれど。でも夢のありかはすぐそばにある。誰にも譲れない、かけがえのない宝の地図だ。


 クラクラと視界が暗くなっていく。あーもう、もはや意識を保ってるのがしんどい。少しぐらい寝て休んでも……


 バシンッ!

「いっだっ!?」


「寝ようとしてんじゃないわ!死ぬぞ!!」


 だからって叩くな!!てか死にそうな患者に死ぬぞ何て言うなよ!!恨みを込めて睨むとケラケラと笑う。コイツ……


「でもま、龍斗がこんだけ無茶できるってことは優也を少しは頼り始めたのかね?」


「?」


「昔も今も、優也の癇癪を抑えるのがあんただけど、あんたが夢だどうだ言って無茶できたのは優也が1人でもなんとかなるって信じたからだろう。それとも無意識か?」


「…………」


 あの時、『優也なら何とかするんじゃないか』って思ったのか。俺。いや切羽詰まってただけかもしれないけど、無意識に何とかしてくれるって思ったのかもな


「ちったぁ優也も大人になったもんだ。なぁ龍斗!」


「……そうで痛ぁっ!?!?」


「喋らんな!!!」



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