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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#6 夢のありか
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#6-11 夢のありか

 動かそうにも体は動いてくれない。それどころか激痛で意識が朦朧として考えすら覚束なくなってきた。


 暗くなる視界の先で、スカンク杉がフレイムの体を持ち上げる。なんだ、何するつもりだ。


 ダメだ。ダメ……だ、もう、



『龍斗さん!!』



「…ァ…?」


 インカムから聞こえる聴き慣れた声に落ちかけた意識が引き戻される。この、声


『ちょ、何してるんです任務ちゅザザザッっ……煌湊です!!龍斗さん聞こえますか!!』


「らいち゛…?」


『そうです!!龍斗さん今blow away solution持ってますよね!?研究中の!!』


「あ゛……?」


『それを使って暴風を起こしてください!!とびっきりの!!』


 え?なに?これ俺に使えって?まだ研究段階の未完成なのに?


 確かに持ってる。持ってるけど。そんなこと言われたって、体が動かないんだ。身体中何度も滅多刺しにされて、毒も回って、無理に決まってる。終わりなんだよ


 インカムの向こうで、ずずっと鼻水を啜る音。来知の泣き叫ぶ声。



『まだ……まだ!まだ終わってない!!自分はまだ、龍斗さんの夢聞いてないです!!』



「!!」


『だから、早くガダガダッザザザッ………こちら狛坂、すみませんオペレーターマイクを取られて!状況は!?』


「……は、はは」


 苦しい呼吸に笑いが漏れた。何してんの来知。そんな任務中にメインオペレーターのマイク取っちゃうとか、SCR追い出されるぞ。そうしたらお前の夢、叶えられないんだぞ



 いや違う



 一か八か夢を掴みに行ったんだ



 グッと体に力を込める。全身から激痛が走る。もう動けないと緊急信号を出す体に鞭打って、フラフラとなんとか立ち上がった。さっきまで絶対無理だって思ってたのに立ち上がれた。足元はおぼつかないし、真っ直ぐ立てないからみっともないけど、



 確かに受け取ったよ、来知の夢。



「あぁん!?まだ生きてんのか」


「ゴボッゲホッッ…わ゛るいげど、ゴポッ…しづごいんでね…!」


「フン、そんな満身創痍で何ができるというのだ?」


「ゴボッゴボッッ!!」


 口から血が流れて出ていく。鈍い青色の皮膚の上に赤が飛び散ってまだら模様になっていく


「毒で碌に動けやしないだろう。そこで死んでおくといい」


「ゲホッっフレイムを、何処に連れていく気だ」


「あぁ!?オ前が知る必要はない!!」


「ザセルの指示か?」


「うるさい!!」


「あ゛っ!?」


 腕に毒の杉の葉が突き刺さる。


「ったく、楽に死ねば良かったものを。今引導を渡してやる」


 フレイムを地面に転がし、こちらへと歩いてくる。


『ストーム!!お前だけでも退避しろ!!』


 全滅を恐れた長官の怒号が飛んでくる。そりゃ、逃げれないこともないかもだけどさ、ここで逃げるやつなんかいないでしょ


『ストーム!!応答しろ!!』


「……俺、は」


「あ?」



「俺は、夢なんかもってねぇの」



 体に刺さった葉を無理やり引き抜く。体に開いた穴から血がどくどくと流れていく。


 ちょっと頭が良くて、実験がうまくて、何となくで研究してた。心を突き動かす熱い何かがなくて、ふわふわとした気分で勉強して、研究して。人の流れる方へと生きてきた。


「だからずっと憧れてきたんだ、夢ってやつに」


 人の瞳に宿る輝きに、ずっと恋焦がれていた。


「何の話だァ?」


『ストーム!!』


「それで光莉ど、ゲホゲホゲホッッ、出会って、初めて夢っていうのが、そういうものなんだって、知って」


 視界が少しずつ黄色くなっていく。舞いあげた花粉が落ちてきている。



 十年前、全部を失った。


 その時、見つけたんだ。



「優也と出会って、初めて見つけたんだ」


「意味わかンねぇよ!」


 横に一薙ぎされる剣を後ろに跳んで避ける。その素早い動きにスカンク杉は驚きありえないと言いたげな顔。


 結局光莉の真似事で終わるだけかもしれないけど。それでも、



 やっと見つけたんだ。




「誰にも譲れない、俺の夢のありかを!!」





 バッと研究中のシリンジを取り出し、ボタンを押して針を出して腕に突き立てる



 Blow away the mutation!



 すると突然背中が熱くなる。特に肩甲骨のあたりが熱を持ち、皮を破るような激痛と何が起こるか分からない本能的な恐怖が頭を支配する。いい。いいんだ。これでいい!そのまま腕を広げ、大きく咆哮した。


「ぅぅううううああああああああああああああああああああああ!!」


「な、何だオ前……!?」


 分かる。全てを知覚する。背中に大きな大きな翼が生えたんだ。肩甲骨の骨が異常に伸び、そこに翼膜が付いているのを知覚できる。感覚としては腕がもう2本できたみたいだ。大きく翼をはためかせればあたりに暴風が巻き起こる。どうやって使えばいいかはわからないけど、飛翔しろ、と心臓がどくりどくり音を鳴らした。


「な、な……!?」


 膝を屈めて一気に伸ばし勢いをつけて空へ飛び上がる


『ストーム!!落ち着いてくださザザガタガダッッ……龍斗さん!!』



 あぁ来知。分かってるよ



『体にどんな影響が出るかわからん止めろ!!』



 来知の夢を悪夢になんてさせやしない



 それに──



 周りの空気を全部吸い切る勢いで息を大きく大きく吸い込む。肺がはち切れそうで、途中気道に詰まっていた血や血栓が肺に入ってゴロゴロと音を鳴らし痛んだ。


 でも躊躇ってなんかいられない。


「やっと見つけたんだ。正体も分からないけれど、焦がれた夢のそのありか」



「なんなんだ、なんなんだよお前!!」



「優也を海美ちゃんを、子供を守り抜いたその先にきっと俺の夢があるんだって!!」



『行けえええええええええ!!!!』



 命かけてでも譲れないんだよ!!



『「──ファイナルドラゴンブレス!!!!」』



 吸い込んだ空気を思いっきり吹き出す!勢いよく吹き出された息は回転し竜巻となって近くの木、建物などを地面ごと抉り取り巻き込んで、あたりは巨大な嵐といくつもの竜巻に襲われる様相となる。


「ガアアアアアアアアアア!?なんだ、何なんだオ前はアアアアアアアアア!?!?」



「お前を殺す、バケモンだよ!!」



 ドゴオオオオオオオオオオオオオオッッ!!


「はっ、はっ……」


 嵐はドラゴンが渦を巻いたような竜巻となってあたり一面を巻き込んだ後、少しずつ落ち着いていく。体にうまく力が入らない。翼を大きく羽ばたかせることもままならなくなり、ゆっくりと降下する。


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