#20-32 君を救う化け物
「おい全員動くんじゃねぇぞ!!」
同日同時刻──都内某所、病院内コンビニにて
「ほら早くあるだけの金さっさと詰めろや!早くしねぇと殺すぞ!!!」
「ひぃぃいいっ!?」
病院内のコンビニ。レジにに袋をたたきつけて怒鳴る覆面をした黒い服の男が1人。フーッフーッと方が上下する荒いだ呼吸が男の興奮状態を表している。
コンビニにしては広い中、昼時で集まっていた客たちは恐怖の表情で、あるものはそこから動けなくなり、あるものは小さく声を漏らしながら青い顔で逃げていく。
コンビニの外では異常事態に気が付いた病院のスタッフが警察に通報し、警備員はさすまたを手に男を制圧しようとしていた。けれどコンビニの中に残ってしまった一般人が障壁となり、近づくに近づけない。
「おっせぇんだよまだかよ!?」
「ひっ、あっと、その」
「さっさとしろや!殺されてぇのか!?」
強盗犯が乱暴に近くの女性の髪を掴み頭に拳銃を突きつけ、きゃああ!と悲痛な悲鳴が上がる。そのすぐそばにいた顔を真っ赤にした子供がぶつかったはずみにその場に倒れて、ぐったりと動かない。
そこへ、口元に大きな傷のある1人の女性が叫んだ。
「やめて!!」
「あぁ?」
「その人を放してよ!」
「海美ちゃんダメだ、下手に刺激しちゃ」
パンッ!!
「~きゃあっ!?」
「海美ちゃん!?」
強盗は懐に隠していた拳銃を、海美と呼ばれた女性に向けて発砲する。幸い直撃はせず、後ろの棚に並べられたホットドリンクに穴が開き吹き出した。
「うっせぇ!!俺に指図すんなメスが!!」
「あいつ……正気じゃない……!!」
強盗の視線はすぐ近くの女性にもどる。やめて、放してと抵抗する女性を子供の方へと投げ捨てた。子供は熱に浮いた表情、うつろな目をしたままうわ言のようにおかあさんとつぶやく。
それすらもうるさく感じたのか、男は子供の頭に銃口を向けた。
「お前も邪魔なんだよ!!ガキがどけや!!」
「悠人、お願い逃げて!!」
「おかあさん……?」
「貴方だけでもいいから逃げて!!」
「うるっせぇ!!全員死んでしまえ!!!」
強盗の指が拳銃のトリガーにかかり、力を躊躇わないままかけていく。
周囲にいた人間は目をつむった。たった二人、腕を伸ばし守ろうと飛び出した男性と女性────龍斗と海美を除いて。
しかし守るには遠すぎた。至近距離で発砲されるそれから守るには、あまりにも。
パンッと、1発の銃声と一瞬の静寂。
────瞬間、何かがジュウっと焼ける音。
「……え?」
海美はその場で足を止めた。隣にいる龍斗も同じだった。
「……だぁ、れ?」
子供がうつろな目で、強盗と自分の間に割って入った男を見上げた。
特徴的な跳ねた、彩度の低い茶色の横髪が揺れる。
男にしては少し小柄なその体躯も、見上げた少年からは大きく見えたことだろう。
片目ずつ赤と薄茶色に分かれた瞳。振り向いて、少年に優しく微笑んで見せた。
「君を救う、化け物だよ」
明日(というか今日)最終回です。多分。




