#20-31 待ちわびた目
「お前達、なぜここにいる」
同日同時刻────病室内にて
嵐巻と鮫島がいなくなってから声をかける。
声をかけた二人は一度顔を合わせて、狛坂がぷっと吹き出し、狛華がふふふっと上品に笑った。
なんだ。変な質問をしたつもりはないぞ。今日──最終任務からちょうど1年の今日、見舞いに来るのは私だけだと思っていたが、こいつらも約束してきたのだろうか。
狛坂は照れくさそうに頬を指でかく。
「それはその……実は約束とか何もしてなくて。僕は色々な人が贈ってくれた花束を届けに」
「私はたまたま、今日お見舞いに来たんです。ちょうどあの日から一年ですから」
「そういう長官こそ、どうして?お忙しいでしょう」
「……上司としての責務を果たしに来ただけだ」
ふい、と顔を逸らすと狛坂が笑って、そうですか。とだけこぼした。こいつはいつもいつも、こうして私を笑うことが多い。
本心だ。いくら特異生物といえど、こいつは一応部下にあたる。だから上司として見舞いに来てやっただけ。それだけだ。
眉を寄せた私に勘づいたのか、狛華が話を逸らす。
「責務といえば、先日の記者会見、お二人ともお疲れ様でした」
「あぁ、コトラ事件の真相ね。もうコトラ事件ともよばなくなってるけど。あれのおかげで、優也くんも外で『孤虎優也』を名乗れるんじゃないかな」
「まだ偏見は多い。すぐには難しいかもしれないが、いずれはな」
「ふふっ、それはよかったです。でも、そう言えば元々あの記者会見は予定になかったって聞きましたけど、本当なんですか?」
「そうだね。でも面白くて、信頼できそうな記者がいたもんだから、賭けてみたんだ。良い賭けでしたね、長官?」
「フン」
まだ少しだけ時間がある。アイツら二人が帰ってきたらここを出るか。その間は昔話に華でも咲かせよう。昔、と呼べるほど遠い過去ではないが。
しばらく話し込んでいると、妙に廊下から騒がしい様子がうかがえる。看護師が慌てたように走り、遠くからは人々のどよめきが聞こえた。
「……なんだ?」
「なんですかね。急患とか……にしては、ここが騒がしくなるのはおかしくないですか?」
「なんだろう。僕、見てきます」
「あぁ、頼んだ」
もしここで大きなトラブルがあれば孤虎だけでなく、たくさんの人々が危ないかもしれない。何もないといいんだが……もしも、特異生物が暴れているならば、早急に対応しなければならない。それも、孤虎が守ったあの二人に頼むような形で。
いや、違う。私が出るさ。刀は流石にないが、守って見せる。
狛坂が席を立ち急いで部屋を出ようとする。なんとなく、フレイムに視線を────
「────!?」
「え、」「長官?」
息をのむ。
止まっていた時間が動き出す。
目があった。待ちわびたその────赤い瞳と。




