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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#20 change my future
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359/369

#20-24 生きている限り



「それはできない」



「えっ……!?」


「この対価に、こいつは自分の身を差し出した。こいつがもし回復すれば、有事における対特異生物の兵器となることを約束した。要は変身する可能性があるんだ。だからこいつのミューシスを外すことはない」


「待てよ。任務の成功が対価のはずだ」


「私もそう問うた。だが、こいつは自ら望んだんだ」


 優也が、自ら望んだ?兵器になることを?

 そんなわけない。どうせ脅したりしたんだ。だから優也はうなずくしかできなかったんだ。


 長官を強く睨みつける。すると長いキレ目を細めて、はぁと一つため息をついた。


「まだわからないか」


「何がですか」


「孤虎優也がなぜ自ら兵器になることを望んだのか、だ。私は脅しなどしていない。ザセルの焼却任務の成功は対価として充分だったからな。だが、追加であいつは変身するためのこの装置を残すことを望んだ」


「……っ!」


「え、なに、龍斗さんわかったの?」


「もしかして」


 口元を抑えて、ありえないとでも言いたげに目を見開く。



「俺たちを守るため……?」



「っ……!」


「もし、もし万が一特異生物がこれからも現れた場合、出動要請がかかるのは俺たちだ。日常に戻ってもなお要請があれば、それは完全に日常に戻ったわけじゃなくなる。それを防ぐために、自分だけは変身装置を残しておけば、俺と海美ちゃんに要請が来ることはない」


「そんな」


「前に孤虎優也は言っていたな。『焼却任務は自分だけでできる』と。それが実現して、願ったりかなったりだろう」


「そんな……!!」


「そんなの許せるわけないだろ。優也のミューシスも外せ」


「断る」


「外せ!」


「お前はこいつの優しさを踏みにじるのか?」


「っ!」


「よく考えろ。生かされたものとして何ができるのか。こいつが……孤虎優也が何を望むのかを」


「それは……」


 優也が望むのは、私たちが穏やかに過ごせる未来。

 私たちが、それを拒むなんて、できないよ。


「私も忙しいんだ。ここで失礼する。柏木医師、」


「……あいよ」


「あとは、頼んだ」


 長官は部屋を後にする。表情は陰って見えなかった。


 長官と優也の約束を反芻する。『任務を成功させたら、その後は二人に普通の日常を送らせる』こと。そのために自分は犠牲になってもいいって。それじゃ、そんなんじゃ、


「優也は……っ、ひっく、もどれ、ひっ、戻れてない……じゃん……」


「……」


「バカ。バカ優也。ばかばかばか!ばか!!なんで自分だけ犠牲になろうとするんだよ、死ぬ気なら一緒に死んでって、あの時言ったじゃん!!なんで一人になろうとするんだよ!!」


「海美ちゃん」




「一人は怖いんじゃなかったの、ねぇ、ねぇ!!ねぇぇええっ!!」




 激情のまま、眠る優也の胸倉をつかんで上下に揺らす。なんで、どうして。どうしようもない現実やあまりにも無力な自分への怒りは、優也への怒りに置き換わった。


 どうして。どうしてなんだよ!


 私を見て驚きつつ、慌てて柏木先生が止めに入る。


「海美!やめな!!」


「むかつく!!むかつくむかつく!!なに一人でかっこつけてんの、バカじゃないの!?」


「海美!!優也の生命維持には厳密な管理が必要なんだ!!やめなさい!!」


「うっ………っ、ひっく、グスッ、うぅ……!!」


 ほとんど羽交い絞めの状態で無理やりはがされた。ごめんなさい、と小さくつぶやく。

 わかってる。どうしようもないなんて、けどこの苦しさだってどうしようもないんだよ。わがままだけどさ、そんなことわかってるけどさ!


 床にうずくまって目を腕でこする。柏木先生が近くにあったティッシュを手渡してくれた。礼をして、鼻をかむ。


 うずくまった床はすごく冷たかった。そうだ。柏木先生はベストを尽くしてくれている。きっとここに優也を連れてくるのも、機械を用意するのも大変だっただろうに。


「ごめんなさい、柏木先生」


「……いいんだよ。若いうちは、そういう感情を大事にしなさんな。でも、優也のためを思うならここでは暴れないどいてくれ」


「はい……」


「いいこだ。もし優也が起きたら、二人で景気よく殴りつけるといいさ。なぁ、龍斗」


 顔を上げると、龍斗さんが優也の服の乱れを直していた。そのまま手は優也の頭に置かれて、ゆっくりと上下する。


 悲しそうで、でも少しだけ微笑んでいるようなそんな表情。


「そうですね。起きたらちゃんと言わないと。一人になろうとする癖も、俺たちが治してやるから。ずっと一緒にいて、一人でいることが違和感になるぐらい、体に叩き込んでやる」


「ははは!いいねぇ。面白い。海美ももちろんやるだろ?」


「……うん!待つよ、私」


 立ち上がって、龍斗さんの隣で優也の手を握る。

 あったかい。生きている証拠だ。


 そう。そうだよ。なんでこんな大切なこと忘れてたんだ。


 私を見る龍斗さんと柏木先生に、ニコッとできる限りいつものように笑って見せた。


「生きていれば、負けはないもんね」


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