#20-22 最後の博打の景品
「お前も左手を出せ。外してやる」
「なっ……」
龍斗さんのミューシスも同じ操作をして同じように外れる。こんな風に外れるんだ。いつもは鎮静中にミューシスを外してメンテナンスとかするから、外れるところを実際に見るのは初めてだ。
手首にはミューシスのせいで日焼けの跡が残っている。え、これ、外しちゃっていいの?
同じ感想を抱いたのか、顔をしかめて龍斗さんが長官に尋ねる。
「いいんですか。ザセルが死のうと俺たちが特異生物であることに変わりはないじゃないですか」
「そうですよ。管理と監視のために、つける必要があるんじゃ…………?」
「あぁ。それはそうだ。もちろんお前たちに監視はつく。だが、それはもう意味がなくなった。だから外しただけだ」
「……意味がない?緊急安全装置の役割を考えたら、必須な気がしますけどね。特にあんたにとっては」
あぁ、いつもの調子だ。龍斗さん、長官に対して印象が良くないのか結構煽るみたいな感じになるんだよなぁ。
そんな龍斗さんの態度に長官はフン、と鼻を鳴らしたあと、龍斗さんの胸のあたりを指さす。
「お前たちの心臓に仕掛けたものが壊れた。ミューシスに信号を送っても一切反応しない。だから緊急安全装置として別の機械を用意するように柏木医師と的戸に依頼してある」
「あぁ。とんでもない無茶難題さ。だって、命を奪わない程度で動きを止めるほどの威力はある、小さな体内式の機械を用意しろなんてね。体に一切の負担の無いように設計するのは大変だが、今的戸が海外で面白い技術を学んできているところだよ。煌湊と一緒にね」
体に一切負担の無い、監視のための機械?
なんでそんな大変なこと…………壊れちゃったなら、また新しくつければいいんじゃないの?まぁ、当事者である私が言う話じゃないけど。
うまく話が理解できない。もしかして私だけ??
「えっと、話が見えてこないんですけど……」
「要するに、緊急安全装置でお前たちの命を奪うまではしなくとも、管理ができるような新装置を作る。その間は監視のみで済ませてやる、というわけだ」
緊急安全装置で、私たちの命は奪わない。動きを止める程度にとどめる。
それって、何があっても私たちを殺さないってこと?
「なんでそんな面倒なこと。にっくき特異生物は全部殺すんじゃなかったんですか?」
「あぁもちろん。元より最終任務後、特異生物の絶滅を確認次第、すぐに殺すつもりだったさ。しかし、最終任務の直前に、賭けにのった。そして、そいつはその賭けに勝った。故に、」
長官は目を細めて、優也に視線をやる。
『もし任務を成功させたら、その後は二人に普通の日常を送らせる』という景品を、与えたまでだ」




