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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#20 change my future
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350/363

#20-15 絶対に守る

 

 ガサガサッッ

「ヴーーーーー……」



「────え?」



 聞き覚えのある音に振り向く。これは、この声は。


 振り返った先には、植物が人間の体を形取ったような化け物。四肢の先端は鋭く、顔らしきところには目がない。ただ、牙の除く口があるのみの顔。


 見間違えじゃない。でもそんなことあるわけない。


「オルガー……!?なんで……!?」


 それも1体や2体じゃない。森林の奥にはさらに多くのオルガーがいる。30いかないぐらいだろうが、どうして生きている。


 ザセルの細胞は完全に自死させたはずだ。ならこれはザセルの細胞が組み込まれていないものなのか?それこそ、突然変異によってザセルの細胞が支配していないような。


 俺たちも元はザセルの細胞が組み込まれていたが、突然変異によってその支配を逃れている。ありえない話じゃない。


 立ち上がって、変身シリンジを──



 ドサッ

「っ……」



 ──無理だ。こんな体じゃ、戦うなんて。


 その場に倒れる。動けない。シリンジを持つ手が震える。本能が拒絶している。ダメだ。もうこれ以上変身すれば本当に体がもたない。そう直感する。


「ヴーーーーー……」


「っ、!」


 眼前まで迫ったオルガーに庇った腕を切り裂かれ、鮮血がはねて近くの木に飛び散った。衝撃で後ろに転げてしまう。


 ぽた、ぽた、とオルガーの触手から血が滴る。今までなんとも思ってなかったはずのそれが、今では最大の恐怖を煽った。


「やめろ、」


「ヴーーーーー……」


 オルガーの顔向こうを向く。

 その刃が次に振り下ろされるのは、俺じゃなく2人のどちらか。意識のない2人が抵抗できるわけがない。


「やめろ!!」


 嫌な予感を振り払うように跳躍し、オルガーを体当たりでふっとばした。


 こいつら、いつものオルガーよりも軽い。それに動きも緩慢だ。拳に熱を込めて転がったそれを殴りつければ簡単に燃え上がり、塵も残さず消えていく。


 よし、大丈夫。動ける。次────



「あ…………」



 次って、いつまで?



 森の奥から俺たちの周囲を囲むようにいるオルガーを、あとどれぐらい倒せば終わる?


 強く握りしめた拳が震える。

 息が上がる。




 俺はあとどれくらい、1人で?




 片膝が地面に落ちる。ダメだ。余計なことを考えるな。やれ。やるんだよ!!

 思考とは裏腹に、体は全くと言っていいほど動かない。ダメだ。絶望してる場合か!


 体の震えは止まらない。それでも地面から少しずつ片膝をはなす。いかなきゃ、やらなきゃ、俺が!俺が!!



「わっ!?」



 突然後ろにひかれて、思わず尻餅をついた。なんだ、今いきなり服の袖を掴まれて、


「!」


 引っ張ってきたのは、2人の手。


 眠ったままだ。深い寝息と上下に動く腹部。閉じられた目はそのまま。


 だけど俺を1人で行かせないとでもいいたげに、それぞれの手は俺の服の袖を強く掴んで離さなかった。


「……はは、」


 思わず笑いがこぼれた。


 なんだよ、それ。

 敵がそこまできてるんだぞ。戦わなきゃ、3人ここで共倒れなんだぞ。



『いくらでも一緒に泣いてやる』


『泣き疲れたら一緒に笑おう?』



 今朝の記憶がフラッシュバックする。あぁ、そうだ。そうだよ。


 スゥーっと深く息を吸う。


 龍斗さんと海美には、もう返せないぐらいいっぱい素敵なものをもらった。


 知らない世界のことを教えてくれた。


 まだ見ぬ夢のありかを教えてくれた。


 俺1人じゃここまで来られなかった。俺の望む未来へ2人が連れてきてくれた。一度その手を酷く振り払ってしまった俺でも、2人は諦めずに掴んで引っ張って、間違えたなら容赦なくぶん殴って、3人で正しく歩かせてくれた。


 なら、


 俺は2人を、2人が望む未来へ連れていきたい


「……はは、」


 そう。理屈ではこういう理由。




 ───でも、心の中ではもっと単純。


「俺、あんたらのこと大好きだな」




 ずっと前からわかってたはずなのに、今更心の中でストンと落ちた。


 そばで眠る2人みて、クスッと笑いがこぼれた。2人の手をゆっくりと払って、ゆっくりと立ち上がる。足はガクガクと震えっぱなしで、視界は霞み、呼吸するたびに喉が焼け切れそうだ。


『3人で一つでいること』


 ごめん。約束をやぶる。

 俺は1人で戦う。けど、


 ギッと目の前を睨みつけて身体中に冷めていた熱を籠らせる。周囲の気温が上がっていく。



 絶対に守る。3人で切り開いた未来を。



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