#19-23 まだ終わってない
遥か彼方の上空で大きな大きな爆発が起こる。インカムはもうあてにならない。ただ映し出された画面の向こうの景色は遠いもので、何が起きたのか、決着はわからないままだ。
同日同時刻────SCR本部司令部にて
SCR司令部、全員がその画面を凝視していた。誰も何も言わない。固唾をのんで訪れる未来を見守っている。
狛坂は瞬きも忘れてしまったように固まり、充血した目で画面を見つめ続けていた。狛華は反対に、祈るように固く手を組んで目をぎゅっとつむっている。
息ができない。呼吸の仕方がわからない。
誰もなにも言わない。
終わったのか。10年以上続いた、この悪夢が。
終わらせることができたのか、私たちは。
晴らすことはできただろうか、残された想いを。
静寂が続く。
信じろ。
信じろ。
信じろ、あの戦士たちを!
「あっ」
声を上げたのは狛坂だった。共通画面から目を放し、素早い動きで画面を拡大解析する。ボケた画面はすぐに鮮明になり、そこに映るのは。
「これ、は……!」
白銀の大きな翼と体躯。細く長い尾を風に揺らし、跳ねる火花を輝かせ、光の軌跡をその空に残していく。それは先ほどどこからともなくフレイムが呼び起こした、伝説の霊鳥。
「鳳凰……!!」
「て、こと、は」
司令部の隊員たちが感極まった表情で見つめ合い、私の言葉を待っている。
ここにフレイムの鳳凰が戻り、オリジンの姿もザセルの姿もない。狛華が手早く解析した画面にザセルの反応も見られない。つまり、
「勝利だ。我々SCRの完全勝利だ!!」
「わぁあああああああああああああああああああああああっ!!!」
「よっしゃああああああああああああああああああ!!」
「やった、やったやったっやったぁ、やったぁああああああああああああああっ!!!」
歓声が沸き上がる。司令部だけではない。他の部もそれぞれの場所で喜びを分かち合っている。そうだ。勝った。やっと、やっとこの長い戦いに終止符を打った!
「や……った、んだ」
「やりましたよ狛坂さん!!やったんです!!」
「ほん、とうに?本当に、終わったの?」
「解析結果、完全にザセルの反応が消失しました!我々の勝利です!!」
「本当に……!?」
そのまま狛坂はその場に崩れおち、腕で濡れた目元を何度もこする。その隣で、駆け寄った狛華が背中をさすりながら、彼女もまた涙を流していた。その光景にジワリと胸の中に何かがあふれてくる。しかし、
「静まれ!!!」
司令部内に響き渡る声で叫べば、ぴたりと歓声は止んだ。
「まだだ。まだ、まだ任務は終わっていない!」
「「「「 !! 」」」」
「私が奴らに課した任務は『生きて帰ること』だ。まだ終わりじゃない!!気を緩めるな!!」
鳳凰がそこにいるのはザセルに完全勝利した証だ。しかし、鳳凰の姿があっても、奴らの姿がなければ任務はまだ完了していない。
その意図が伝わったのか、全員がはっとしたような表情を経て、すぐに全員がデスクにつく。狛坂と狛華も一瞬見つめ合い、うなずいてすぐに補佐デスクへと戻った。
「鳳凰の追跡は!」
「しています。研究所近くの森林に接近。…………っ!鳳凰の旋回する下に特殊戦闘部の三体発見!」
「輸送車を回せ。ポイントγが近い」
「報告です!護送していた橘光莉が行方不明だと!」
「なに?」
「隊員たちが目を一瞬放した瞬間姿をくらませたそうです」
「……なんだ。まだ何か……それよりも三人のバイタル!」
「ばいた…………!!これ、は、」
「早く報告しろ!」
「追跡完了!!ドローン追えます!!」
「画面出せ!」
中央の画面にドローン映像が流れる。そこは研究所の近くにある森林だった。巨大な鳳凰は姿を縮め、森の中の空き地、ギャップの上をくるくると旋回している。その下にはいつのまにか倒れている三人の姿があった。
中央にいるのはフレイム。その両隣にストームとスパークがいる。三人とも膝をついたりしゃがみこんでいるが、全員意識がある。場所もポイントγから遠くない!
「インカムは」
「融解したようです」
「ミューシスは」
「かろうじて生きてバイタルだけは出ます!」
「ドローン音声は」
「出せます!こちらからの応答も可能です!」
「私と補佐二人のマイクにつなげ」
「了解」
ざざっというノイズ音の後、外の音が聞こえてくる。
『りゅうと、さん。うみ、』




