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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#19 彼岸の未来
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#19-19 諦めない化け物

 

「……死にたく……ない」


「ほう?」


「……俺、アンタの仲間になる。から、殺さないでくれ……」


「……?これはまた、急ですね」


 ゆらりゆらりとおぼつかない足取りをしているように見せる。目の前の状況に絶望してもう生きる気もなような……まぁ、実際もう生きる気はないんだけど。それで、ザセルに命乞いをする。もちろん、ただの演技だけど。


 これでできる限り近づいて、隙を見てザセルに飛びついて『融合』して自爆する。

 これしかない。これが、俺にできる最後のカード、託された切り札だ。


 未来を変える。これが俺が俺に課した最後の任務。

 こいつの言う未来なんて、誰も幸せにならないから。


 そこに俺の姿がなくたっていい。そんなものはもう諦めだ。それよりも、


 あの日幸せを奪われた全ての人たちへ。

 SCRのみんなへ。



 龍斗さんへ、海美へ。



 俺がここで全て終わらせるから。

 どうか、どこであっても幸せで。



「無理だ……俺1人じゃ、何もできない」


「あら、やっとお気づきで?」


「し、死ぬのが、怖くて」


「そうでしょうそうでしょう。私もあなたという存在を失うのは惜しいですよ」


 服から残りのナイフや応急セット取り出し、床に落とす。意思表示にちょうどいい。死に行く俺にはもういらないものだ。


 一歩近づく。警戒されている。当然だけど。

 一歩近づく。何かしてくるか?避けないと。


 一歩、また一歩。


「しかし、なんだかこうも突然素直になられてしまうと怖いですね。というか、私は貴方に苛立ってあるのですよ。まずはその謝罪からでは?」


「……あぁ、なんでもしてやる。今ここで土下座でもしようか?」


「あはは!それは一興ですねぇ!ならその場で跪きなさい。頭をたれて、一生の服従を誓うといい!」


 その場に膝をつく。まだだ。ゆっくりゆっくり動け。

 上機嫌になったザセルがスキップで近づいてくる。興味に惹かれて警戒が薄まった。あと少し、少しだ。


 片手を地面につく。頭から垂れた血が地面を赤く彩った。


 頭を緩慢な動きで下げ始める。耳だけは正確にザセルのいる場所を追って。


 ザセルはもうオルガー達の群れは抜かしている。もうすぐそこにいる。


 今だ。



「そんなバレバレの罠、私が気が付かないとでも?」



「っ!!」


 顔を上げたその正面、鼻先がふれそうなその距離で、悪魔は笑った。

 その後ろには幾本もの蔓が触手のようにしなり、鋭利にとがった先端を俺に向けている。


 間に合わない。

 ガードも、こいつを取り込むのも。


 瞬間、風を切る音がした。やられる!

 目をつむった。体をこわばらせた。体を貫かれる衝撃に耐えようとして、顔だけ横に大きくそむけた。


「……?」


 けれど、いつになってもその衝撃は訪れない。


 恐る恐る目を開く。


「え……?」




「何諦めてんの。まだまだいけるだろ!?なぁ────相棒!!」




 目の前に悪魔はいない。

 蔓もない。


 その代わりに現れたのは大きな背中。風をまとって、蔓と悪魔を吹き飛ばして俺をかばうように前に立ちふさがっている。


 ぼたぼたと首からは血があふれだしている。腹には太い木の枝が突き刺さったままだ。片腕を失くしても、振り向いたその笑みには覚えがある。いつも俺に向けてくれる、その優しい微笑みは。



「そうだよ!!何一人でかっこつけようとしちゃってんの!?」



「!?」



 火花が弾けた。


 途端、周囲にひしめいていたオルガーが感電したように痙攣し、その場に崩れ落ちていった。目の前の出来事に目を白黒とさせている俺の目の前に、不敵に笑う女が現れる。


 顔の半分は焼きただれているというのに、残されたもう半分の大きな瞳からは光が全く失われていない。それどころか、いつも以上に輝いてみせた。体のいたるところが食いちぎられ、立っているのもやっとなはずなのに、なんでそんなに堂々と。


「龍斗さん、海美」


「大丈夫か、優也」


「ごめんごめん。遅くなっちゃった!」


「もう大丈夫だ。ほら、立てるか?」


 差し出された手を取って立ち上がる。


「なん、で、どうして、」


「いやマジで焦ったよなぁ。首切られるとは!」


「私も頭爆発されたときはびっくりしちゃったよ~~!ま、こうして何とかしたんだけど!」


「死んだんじゃ、俺、一人で、」


 少しずつ震え始める体。さっきまで平気だったのに。一人でもなんとか戦えてたのに。

 なんで。なんで震えが止まらない。


 それを見た二人は目を合わせ、数秒見つめ合った後、ふふっと笑った。


「そりゃ、私たち共犯だし?」


「それに優也が一番知ってるだろ?特異生物は心臓が止まらない限りは死なない。だから首が切られたことに体が気づいて心臓が止まる前に、首ひっつけた」


「なっ……!?」


「そうそう。特異生物の弱点は心臓が止まることだからね。私も爆破された瞬間にスーパーセルヒールつかったの。ギリギリの賭けだったけど、間に合った!」


「さすがシャークガール。賭けごとも強いとは」


「えへへ。そっちこそ首引っ付けるって何事??」


「あはは」


「いや、そんなことあるわけ」


「あるある!俺たち人間じゃないんだし。そういうこともあるよ」


 けらけら笑っている。ある、のか。こうして二人がいることが何よりの証明ではあるんだけど。でも本当に?俺の幻覚じゃないよな?


 振るえる体をいなすように、海美が俺の背中に優しく手を置き、ゆっくりさする。

 龍斗さんは俺の頭にポン、と手を置いた。


「約束したじゃん。ずっと一緒だって」


「ごめんな一人にして。怖かったよな」


「っ────」



 そうか。2人は、俺を1人にしないために。




「しつけぇなぁゴミどもが!!!いい加減死ねや!!!」



 遠くにふっとばされたザセルが苛立ちのまま叫んだ。その背後には大量のオルガーをぞろぞろと引き連れ、さらにその後ろでは巨大な体躯を揺らし、一歩踏み出すたびに台地が揺れるオリジンが低い唸り声をあげている。


 その様子を見た龍斗さんはすげぇなぁなんて呑気に声を漏らし、海美は多いな~と感心していた。いやいや感心している場合か。

 息を吐いて、二人は一瞬視線を交わらせる。ほんの一瞬。だけど何かを確認したのか、龍斗さんは微笑み、海美は大きくうなずいた。


「な、なんだよ」


「ねぇ、優也。こうして死の淵から戻ってきた私たちなんだけど、正直もう動けないっていうか」


「多分もう数分経たずに死ぬんだよね。俺出血量やばいし、セルヒールも間に合わない」


「……え?」


「私も出血やばくて、それ以上に呼吸がもうむりだなーって感じ。だからさ」




「俺たちのことを、取り込んでくれないか?」

「私たちのこと、取り込んでほしいなって!」



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