#19-17 諦めはつきましたか?
「何か勘違いしていませんか?私のこと」
「あれ、なんか間違えちゃった?俺たち。後学のために聞いてもいいかな?」
「私には『再生』の力があるのです。どれだけ切り刻もうと、焼こうと、意味がないのです」
「そんなのわかってるもん!だから全部全部焼き切っちゃえば、再生もできないでしょ!?」
「まだわかりませんか。私の細胞は別に、この体と大樹のみではありませんよ」
「……まさか」
「ふふ、さすがは優也くん。察しが良くて助かります」
「まさか、日本全土に……!?」
「え!?」「なっ!?」
嫌な予感が背筋を走った。そしてそれはザセルの微笑みによって肯定されてしまう。
「私の細胞はもうどこにでもあるのですよ。植物の中に埋め込んだものがたくさんね。だから今ここで私を殺そうとも無駄ですよ。全国各地に仕込んだ細胞が再び私を再生させる。貴方たちがここで命を懸けても無駄だ、と言っているんです」
「そ、そんなぁ……!!」
「そんなことにも気が付きませんでした?特異生物の被害が都内に集中していたから都内にしかいないとでも思いました?なら残念でしたね。ほら、これで諦めがついたでしょう」
「諦め?悪いけど、そんなん知らねぇよ!!」
Blow away the mutation!
「龍斗さん、まっ────」
「全国各地にいるなら順番に焼き尽くすだけだ!」
翼をはためかせ満月の輝く夜空を翔る。待て、何か嫌な予感が!
俺の嫌な予感を差し置き、龍斗さんは周囲の空気を飲み込み体内で強く圧力をかけて放った。
「ファイナルドラゴ────」
「あぁやかましいやかましい。先ほどの竜巻も喧しったらありはしない。少し黙っていてください」
「────っ!!?」
「龍斗さんっ!?」
突如、大樹が身じろいだ。
身じろいだ?そんなわけない。ただの木だぞ?
最悪な俺の思考は目の前で現実となる。大樹は腕を振りぬくように太い木の枝を横へ薙ぎ払った。
その衝撃に龍斗さんの体は吹っ飛ばされる。空中で体勢をと問える合間に先端が鋭くとがった何十本の枝が龍斗さんの体を貫く。さらに目にもとまらぬ速さで振りぬかれた枝と同時に、何かが跳んだ。
跳んだ球体、あれって、
「そういえばご紹介が遅くなりましたね。オルガー、オルガネル、オルガンに続きまして、新しい使徒であるオリジンさんです。どうぞよろしく」
「お前ぇぇええっ!!」
「海美っ!?」
「よくも!よくも!!」
「よくも、なんですか?」
「うああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「海美落ち着け!」
素早く両拳をぶつけ、そのたびに鮫の頭部に変化し噛みつきザセルの肉が散っていく。しかしその拳を触手のようにうねる枝にからめとられ、身動きの取れなくなった体の中心にザセルの蹴りがもろに入る。地面に転がったところをつかみ上げられ、首を絞め上げられる。
助けに入ろうとした途端、オリジンのしなる枝が目の前の大地を削った。邪魔くさい、どけ!海美が、海美が!!
「カハッ……!?」
「このうるさい口も閉じましょうか。私は落ち着いて優也くんと話したいので」
「ぐぅ、こ、のぉおおおおおおおおおおっ!!」
「まぁ諦めの悪いこと。そうやってずるずる引きずる女性はモテませんことよ?」
海美は負けじと鮫の頭部に変形した拳を振り上げる。それをチャンスと言わんばかりにニヤっと笑い、その大きく開かれた口の中へ何かを投げ込む。
ドガァアンッ!!
「~~~~~~~~~~~~~~っっ!?」
「あらあら、鮫さんは悪食ですこと。さっきそこで拾った爆弾もお食べになるのね」
「手、が、」
「腕だけじゃまだおなか一杯にはならないでしょ?ほら、まだまだたんとお食べなさいな!」
ザセルが素早く海美の口の中へさらに何かを詰め込んでいく。突然のことに抵抗もできず、そのまま
ドガアアァァアアアアアアンッッ!!
「噛みつく相手はよく考えなさい?鮫ガール」
「海美ぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!!」
「あらあら、でも貴方は噛みつく側より噛みつかれる方が似合ってよ」
力をなくし、その場に体は倒れこむ。さらに追い打ちをかけるように生えたオルガーが海美の体に噛みつき、肉がえぐれ次々に鮮血が散った。
やめろ、
やめろやめろやめろ!!
やめろ!!!
オリジンの枝を焼き、足に力を込めて一気に海美の元へ跳躍する。腕を横へ一凪ぎすればオルガーどもはその場で萎れ塵すら残さず消えていった。
でも、
「海美、」
「あら……頭、ついてますか?その子」
「起きろ、海美」
「あはははは。あはは。さてさて、話しましょう?優也くん」
「っ!!?」
オリジンの腕に吹っ飛ばされて地面を夢るように転がっていく。受け身はとった。けど、
上を見上げる。これを?この動く大樹を、殺せるのか?
俺ひとりで?
一瞬、硬直したように体が動かなくなる。その隙をつくように蔦が俺の体をからめとり、オリジンの根が俺を殴りつける。熱を込めて焼き払う。けどまた再生されて、動きを止められ、オリジンの強力な一撃をもろに食らってしまう。その繰り返し。
無理だ。
いつの間にか体は人間の姿へと戻ってしまっていた。Burst upを使う暇なんてなかった。
地面に仰向けに転がされる。あたりにはうようよとオルガー、オルガネル、オルガンが生えて俺を取り囲んだ。そこにザセルが優雅に歩き、俺を見下ろす。
「さぁ、諦めはつきましたか?優也くん」




